懐古系モデルが人気を集める一方で、オートバイのスタンダードスタイルであるネイキッドクラスは、電脳時代をストレートに反映した近未来デザインを続々と採用。’22も最新鋭となったMT-10を皮切りにサイバーな進化を続ける。
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司/田宮徹/宮田健一)
大型ヘリテイジカテゴリー:電脳時代に合わせた先進デザインが増えてきた
むき出しのエンジンにアップライトなハンドルポジション、公道ユースに合わせた出力特性やハンドリングと、オートバイの基本スタイルとなるのがネイキッドクラスだ。最近はネオレトロ系やヘリテイジ系と呼ばれる懐かしデザインの一派が隆盛を誇って、もはや独立カテゴリーとなったのに対し、ここで紹介する時代の最新技術をストレートに反映したスポーティなネイキッド群は、ユーロ5化に伴う電脳進化も相まって続々と近未来風味のデザインへと移行している。
’21年はスズキのGSX‐S1000がウイングレットをシルエットに採り入れたメカメカしい姿となったのに加え、ヤマハのMT-09/07もモデルチェンジをするなど、メインどころの顔ぶれに大きな変化があった。ネイキッドでは唯一無二のスーパーチャージャーモデルであるカワサキZ H2は電制サスペンションを装備したSEを追加している。
’22年はMTシリーズ最高峰のMT-10がついにモデルチェンジし、Z900にはオーリンズサスペンションの「SE」が登場。さらにホンダは”ホーネット”ブランドを並列2気筒の新機軸として復活させるのではないかと噂されている。今後の動向に注目したい。
ヤマハ MT-10/SP:R1ネイキッドがよりアグレッシブに
YZF-R1のネイキッド版「MT-10」が’22でフルモデルチェンジ。ユーロ5対応として現行R1ベースとなり、最高出力5.5ps/最大トルク0.1kg-mのパワーアップを果たすとともに電子制御面が大幅に進化した。ライドバイワイヤーやこれまで省略されていた6軸IMUを採用して、バンク角対応型トラクションコントロール/ヤマハ初の可変速度リミッター/上下方向両対応のクイックシフターといった装備も新たに獲得。メーターもカラーTFTディスプレイとなった。車体面ではロングになった新スイングアームや、顔が小ぶりとなった新デザインを採用。MT最高峰にふさわしい風格と走りを手に入れた。欧州での発売はSTDが’22年2月、上級版となるSPが’22年中頃の予定。日本では’22年秋以降となる見込みだ。SPはアップデートされた電子制御の前後オーリンズサスペンションのほかアンダーカバーを追加装備している。
カワサキ Z H2/SE:唯一無二のスーパーチャージドネイキッド
バランス型スーパーチャージャーを装備した唯一無二のモンスターネイキッドが「Z H2」だ。最高出力は200ps。左前方のみに設けられた吸気ダクトのアシンメトリーデザインが、アグレッシブな個性を引き立たせている。IMUを搭載した電脳装備はトラクションコントロール/パワーモード/コーナリングABS/ローンチコントロールを高度に制御。その他にもクイックシフター/クルーズコントロール/スマホ接続機能などを装備する。上級版の「SE」はショーワのスカイフックテクノロジーをベースとした電制サスとブレンボの最上級キャリパーStylemaを採用。国内’22モデルはSTDが新色のグレー×ブラック、SEがグリーンの継続色だ。
スズキ GSX-S1000:サイバー顔になった快速スポーツネイキッド
歴代GSX-R1000の中でも評価が高い’05年型ベースの直列4気筒エンジンと、排気量やスタイルに見合わぬ軽快なハンドリングで根強いファンを集めていたGSX-S1000が、’21でモデルチェンジ。エンジン/フレーム/足まわりは先代から熟成したものを使いつつも、電子制御スロットルによる大幅電脳化とエッジが効いてウイングも備えた新デザインで、まったく新しいイメージへと生まれ変わった。しかしスポーティで軽快な走りのキャラクターは不変で、パワーモードの導入によりライダーレベルもビギナーまでカバー範囲を拡大。さらに多くの人がスポーツライディングを楽しめるマシンとなった。特徴的な縦2連のLEDモノフォーカスヘッドライトはスズキ2輪車では初の採用だ。
カワサキ Z1000:モデルチェンジはまだだ
ニンジャ1000SX系の1043ccエンジンを採用し、アグレッシブな”Sugomi”デザインで車体をまとめたパワフルネイキッド。現行モデルの登場は’17年とちょっと昔のためトラクションコントロールやクイックシフターなど電脳装備は未搭載。ユーロ5にも未対応だ。そのためそろそろモデルチェンジ時期だが、’22は3年ぶりのカラー変更のみで発売となった。
ホンダ CB1000R:ネオカフェスポーツの長兄
旧CBR1000RRベースのパワフル直列4気筒エンジンを専用設計のスチールバックボーンフレームに搭載したネオカフェ風味のスポーツネイキッドで、1000~125まで展開するCB-Rシリーズのフラッグシップとなる。メリハリの効いたマッシブなボディラインに片持ちスイングアームが組み合わされ、シリーズ最高峰らしい風格が与えられているのが魅力だ。’21のモデルチェンジで、馬蹄形の新型LEDヘッドライト/ラジエターシュラウド/エアクリーナーカバー/シートレールまわりなどに変更を受けて、よりモダンなデザインとなった。同時にスマートフォンと連携してハンドルスイッチやヘッドセットを通じた音声でアプリ操作を行えるボイスコントロールシステムを採用。ユーロ5準拠の国内新排出ガス規制にも適合した。
カワサキ Z900シリーズ:上級版SE&50周年記念車も追加
Z1000のエンジンを948ccにボアダウンし、軽量な鋼管トレリスフレームの車体に搭載した俊足ネイキッド。その基本コンポーネンツは、外装イメージを変えることでネオレトロのZ900RSにも転用されている。電子装備面ではトラクションコントロールやパワーセレクトを連動して制御する統合型ライディングモードを備え、カラーTFTパネルのメーターにはZ900RSにないスマートフォンとの接続機能「カワサキライデオロジー」も標準で搭載されている。’22国内モデルは仕様そのまま、爽やかなイメージのホワイト×グレーにカラーチェンジ。さらにオーリンズ製リヤサスペンションとブレンボ製M4.32ブレーキキャリパー&ラジアルポンプマスターシリンダーを装備した上級版の「SE」、Zシリーズの50周年を記念した特別仕様車「Z900 50thアニバーサリー」もラインナップされた。
ヤマハ MT-09/SP:排気量アップ+電脳進化で3気筒ワールドが拡大
’21年モデルで歴代初となるエンジン/フレーム/足まわりに至るまでのフルモデルチェンジを実施。並列3気筒エンジンは排気量を拡大して888ccとなり、全域でパワーアップを果たした。6軸IMUと電子制御スロットルの新採用で、電脳装備もトラクションコントロール/スライド/ウイリー/ブレーキをトータルでコントロールできるようになるなど大幅に進化。新作フレームはヘッドパイプ位置を下げたほか剛性を最適化し、ハンドリングと汎用性の向上が目指されている。1灯のバイファンクションLEDヘッドライトにY字状のポジションランプを組み合わせた顔つきも実に印象的だ。上級版となる「SP」はフロントにKYB製、リヤにオーリンズ製のスペシャルサスペンションを装備するほか、クルーズコントロールも追加。
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アーカイブ〈’21後期〉大型ネイキッド(751cc〜)
ユーロ5対応とともに電脳進化が進む大型ネイキッドクラス。’21年はGSX-S1000がフォルムも未来を先取したかのようなサイバーな雰囲気になって新生。MT-09&07兄弟もモノアイのニューフェイスで国内登場した。迎え撃つ既存モデルも熟成にて勝負を挑む。
スズキとヤマハの新作ネイキッド対決に注目
フルカウルを持たず、むきだしのエンジンが存在を主張するネイキッドクラスは、どんな時代でも”バイクらしさ”を表現する王道のスタイル。アップライトなポジションは街中での取り回しも抜群だ。
そんなネイキッドだが、近年は往年の名車をオマージュした懐古的デザインのネオクラシックやヘリテイジと呼ばれるモデルが独立したカテゴリーに成長して確立。そのためか、先進的な電脳装備やスポーツ性能をセールスポイントとするネイキッドモデルは、逆に積極的に大胆なフォルムを取る傾向になっている。
そんな先進ネイキッドの最新トピックは、電脳時代にふさわしいメカメカしいフォルムで電撃発表されたスズキの新型GSX‐S1000だろう。大理石調の表面処理など演出面も新しい。ヤマハMT‐09&07兄弟もモノフォーカスのヘッドライトでこれまたサイバーな出で立ちに。好評のスーパーチャージャーネイキッド・カワサキZ H2は電子制御サスペンション装備の上級版SEを投入してクラスの限界を突破する。ホンダCB1000Rもボイスコントロール採用という独自の試み。いずれもアツい進化が進んでいる。
日本車大型ネイキッドクラスの最新潮流
- GSX-S1000がマイナーチェンジ
- 新型MT-09&07が発売
- 好調Z H2に上級版SEが追加
- CB1000Rがアップデート
- Z900&650が’22新色披露
- ネオクラジャンルが確立し、先進ネイキッドは大胆なフォルムに
日本車大型ネイキッドクラス ラインナップ(751cc〜)
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