ダートを含むあらゆる道を走破しながら“冒険”できるバイクというのが本来のコンセプトだが、近年は舗装路での快適なツアラー性能を重視した車種が多め。アップライトなライディングポジションと優れた積載性で、ロングツーリングやキャンプツーリングにも最適だ。
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司/田宮徹/宮田健一)
ベンチマーク=BMW GSシリーズに国内メーカーが対抗する
欧州や日本での根強いブームが続くアドベンチャーカテゴリーは、’80年から続くBMWのGSシリーズがベンチマークとなってきた。日本においてもGSは高い人気を誇り、そのトップシリーズとなるR1250GS/アドベンチャーが’21年の新車販売台数では国内メーカーモデルを圧倒した。
ただし、このR1250GSと完全に対抗する国内メーカー製モデルというのは、ホンダのCRF1100Lアフリカツインシリーズのみ。それ以外の車種は、前後17インチホイールの採用で完全にオンロード重視の設計だったり、ヤマハ テネレ700のようにオフロードを強く意識した設計だったり、あるいはミドルクラスエンジンで扱いやすさを高めた設計とするなど、同じアドベンチャーカテゴリーでも狙う方向性が少しずつ異なっている。
アップライトなライディングポジションと優れた積載性、大柄なボディがもたらすタフな雰囲気は、本格的なツーリングマシンとしての資質にあふれ、人気となっているキャンプツーリングとの相性も抜群。基本的にはロードスポーツ系と比べれば“脚長”なので、巡航時の乗り心地は快適な傾向にある。
ホンダCRF1100Lアフリカツインシリーズ:スポーツタイプと旅仕様を2種類の変速機で展開
前後21/18インチスポークホイールを採用し、本格的なダート走行まで視野に入れながら開発されたシリーズで、水冷並列2気筒エンジンをスチール製フレームに積む。’20モデルで排気量が84cc拡大されて「CRF1100L」に。’22モデルで熟成を受け、デイタイムランニングライトの新採用やパワーユニットの熟成が図られた。幅広い路面での優れた運動性能も重視したSTDと、18→24L容量への燃料タンク拡大やLEDコーナリングランプ搭載などで旅性能を高め、さらにショーワ製前後セミアクティブサスペンションを加えた「アドベンチャースポーツES」の2種になった。いずれの仕様も、マニュアルクラッチとDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が選べる。なお、限定脚長バージョン<s>の受注期間は終了した。
カワサキ ヴェルシス1000SE:4気筒ロードツアラー
Z1000用がベースの水冷並列4気筒エンジンを採用。アルミ製フレームで前後輪17インチ径を履く、オンロード完全重視のツーリングアドベンチャーだ。日本向けは、前後セミアクティブサスペンションを搭載した上級仕様のSEのみ。ショーワのスカイフックテクノロジーを採用し、6軸IMUと連動させることで、路面からの入力を瞬時に処理してライダーに余計なピッチングやショックなどが伝わらないよう制御する。
スズキVストローム1050/XT:直線的デザインも特徴
水冷90度Vツインエンジンをアルミ製フレームに搭載。’20モデルで大幅刷新を受け、排気量維持も車名が1000→1050になった。STDは前後19/17インチキャストホイールを採用。XTはスポークホイールを履くのに加え、6軸IMUの搭載と電子制御の高度化、各部のガード類やセンタースタンドの標準装備化など、価格差以上の大幅なグレードアップが図られている。
ヤマハ トレーサー9GT:前後17インチホイールのオンロードアドベンチャー
MT-09が開発ベースのオンロードツアラー。’21年型でMT-09と同時刷新され、水冷並列3気筒エンジンは排気量が845→888ccに拡大。MT-09の新作メインフレーム(CFアルミダイキャスト製)に専用チューニングを施し、専用のリヤフレームおよび伸長されたアルミボックス構造のスイングアームと組み合わせる。前後ホイールは17インチ径で、鋳造でありながら鍛造に匹敵する強度と靭性のバランスを達成したスピンフォージド技術がMT同様に使われる。電子制御も磨かれ、6軸IMUの情報を各種制御に活用。日本では、コーナリングライトなども標準装備した上級版のGTのみ販売されている。
ホンダVFR800X:’22年10月までに生産終了
オンロードツアラーのVFR800Fをベースに、前後輪は17インチ径のまま、外装類専用化とアップハンドル化、前後サスペンションのストローク伸長などを施しながら設計されたロードアドベンチャー。回転数に応じてバルブ駆動数が2⇔4に切り替わる水冷V4エンジンを、アルミ製フレームに搭載。2レベル+オフのトラクションコントロール/手動5段階調整式スクリーン/DC12V電源ソケットを装備する。’22年10月までに生産終了する。
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