日本国内での人気低下と環境規制強化のダブルパンチで、10年以上も閑散としている400ccクラス。しかしながら’21年は、ホンダGB350/Sの新登場とヤマハSR400の生産終了が大きな話題となった。本記事では251〜400cc小型二輪クラスのうち、スポーツツーリング&ネイキッドモデルを紹介する。
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司/田宮徹/宮田健一)
日本独自のクラスだったが近年は海外との共通化も
普通二輪免許(かつては中免)で乗れる最大クラスであることから、日本独自の排気量帯として発展してきた400ccクラスは、バイク生産のグローバル化が進む一方で日本の市場が縮小したことから、日本のためだけにこのクラスの新型が開発されることがほとんどないという状態が続いている。
とはいえ、完全に見放されたわけでもない。ホンダとカワサキは、このクラスの排気量枠いっぱいとなるエンジンを搭載した車種を販売。ホンダの2気筒は海外の500版をダウンサイジングしたものだが、カワサキは北米やタイなどでも同排気量の2気筒車を展開中だ。また、欧米やアジアでは300cc前後の排気量が定着していて、ヤマハはそこに導入している320cc仕様を日本でもラインアップ。ホンダのGB350/Sもそうだが、海外向けモデルとの共通化も画策されている。
わずかな排気量差でも、やはり250ccと比べて走行性能に余裕が生まれるのがこのクラス。しかもGBのように、国内メーカーの現行モデルでは唯一無二の存在となるモデルもある。いま一度、400ccクラスを見直してみてはいかがだろう?
ホンダCBR400R:アグレッシブなルックスとフレンドリーな走行性能
軽さや剛性に加えて適度なしなやかさも求めた鋼管ダイヤモンド型フレームに、スムーズな加速特性も追求した180度クランクの水冷パラレルツインエンジンを搭載。本格的なスーパースポーツの外観と、幅広いユーザー層が扱いやすさを感じられるフレンドリーな走行性能を融合したフルカウルスポーツだ。’19年3月には、外観刷新/分担加圧式リヤサスペンション新採用/パワーユニットの改良などを施した。そして’22年1月にも再び熟成を受け、フロントフォークが倒立型のショーワ製SFF-BPに換装され、前ブレーキのダブルディスク化とラジアルマウントキャリパーの新採用/デザイン変更による前後ホイールの軽量化/スイングアームの剛性最適化などが施される。ハザードランプを高速点滅させて急ブレーキを後続車に伝えるエマージェンシーストップシグナルを搭載する。
ヤマハYZF-R3:71ccの差が余裕を生む320cc仕様
軽二輪クラスとなるYZF-R25の兄弟車で、ボアが拡大された320cc仕様のエンジンは、わずか71ccの排気量差ながら最高出力で7ps、最大トルクで0.7kg-mも力強い。一方で車重は同数値だ。サイズは同じながらYZF-R3は前後タイヤがラジアルで、ステップヒールガード部の肉抜き加工は省かれているが、それ以外の車体設計はYZF-R3とYZF-R25で共通。アルミ鋳造製ハンドルクラウンには、モトGPマシンを思わせる肉抜き加工が施されている。欧州ではすでに、ユーロ5適合の’22年型が発表済みだ。
カワサキ ニンジャ400/KRT:250と共通の車体に48psエンジン
フルモデルチェンジを受けた’18年型からは、同時刷新された250と基本部が共通化された車体となり、大幅な軽量コンパクト化を達成。エンジンも新作されてパワーアップを果たし、運動性能が向上した。タイヤは250がバイアスタイプなのに対してラジアルを履き、後輪はワンサイズ太い。フレームは鋼管トレリス構造で、エンジン後部に結合したプレートにスイングアームピボットシャフトを貫通させる設計により、クロスメンバーを使わず剛性を確保しながら軽量化につなげている。
ヤマハMT-03:先進性のある精悍なフロントフェイス
YZF-R3をバーハンドルネイキッド化したモデル。ロー&ハイビームを担う超小型のLEDモノアイヘッドライトと、その上部に配置されたツインポジションランプで、個性的なフェイスを確立している。エンジンやフレームはYZF-R3と完全に同一。YZF-R3はウインカーがハロゲンタイプだが、MT-03は灯火類がフルLEDとなる。なお欧州では、ユーロ5適合化が施された’22年モデルがすでに発表されている。
カワサキZ400:余裕ある馬力を備えた俊敏カウルレスモデル
ニンジャ400をストリートファイターに仕様変更したモデルで、400ccクラスの上限となる排気量を持つエンジンや鋼管製のフレームは、いずれもニンジャと共通だ。Zの特性に合わせて、リヤサスリンク比とサスセッティングを最適化。キャスターは24.7→24.5度とわずかながら立つ。ビキニカウル付きヘッドライトや外装類は、ニンジャ400と250の関係性と同じく、Z250と共通化されている。
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アーカイブ〈’21後期〉251〜400cc小型二輪スポーツツーリング&ネイキッド
’21シーズン、日本で話題を集めたニューモデルと言えば、4月に発売開始されたホンダGB350。7月中旬には派生モデルとなるGB350Sも登場した。一方、ヤマハのSR400は’21年で生産終了。ネオクラシック系をきっかけに、400ccクラスに再び注目が集まるか!?
●まとめ:ヤングマシン編集部
250ccよりも余裕があり、”適度感”に優れるが…
日本独自の排気量帯ということもあり、近年は苦戦が続いている400ccクラス。グローバル化が進んだ現在、日本だけのためにこのクラスの新型が開発されることはかなり少ない。
とはいえ、メーカーはこのクラスを完全に見捨てたわけではない。例えばホンダは、日本向けに400ccクラスの排気量枠一杯となるエンジンを複数設計。カワサキは北米でも400ccを展開し、ヤマハは海外の320cc仕様をそのまま導入することで、このクラスの車種空洞化を避けている。
一番のネックとなっているのは、250ccクラスと異なり車検の必要がある点。普通二輪免許ユーザーは車検の必要がない250ccを選びがちだし、逆に「どうせ車検が必要なら大型クラスを…」と考えられがちだ。
しかし400ccクラスにも、適度なパワーで操る楽しさを味わいやすいなど、この排気量帯ならではの魅力がある。このコロナ禍で、密を避けて遊べるバイクが見直され、新たなライダーも次々に誕生している。400ccは最初の1台として最適なクラスでもあり、GB350の人気も後押しとなって、再注目される可能性は十分にある。
日本車大型クルーザークラスの最新潮流
- GB350はすでにほぼ完売。兄弟車GB350Sも登場
- SR400の最終仕様も即完売
- ニンジャ400&Z400の’22カラーがお目見え
251〜400cc小型二輪スポーツツーリング
251〜400cc小型二輪ネイキッド
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