
かつてクォータークラスといえば、メーカーの技術と情熱がぶつかり合うセグメント。しかし現代の市場はどこか、落ち着いてこなれた印象も漂う。そこへ「2台の黒船」が上陸した。モルビデリ「C252V」とベンダ「ナポレオンボブ250」だ。過剰なまでのデザイン性と官能的なVツインエンジンを、75万円前後という驚きの価格で提示する輸入車2台。JAIAの場で試乗してみた。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:石橋 寛/モルビデリ/ベンダ
クォータークラスの既視感を打ち破る2台の黒船
かつて日本の250cc──いわゆる「クォータークラス」は、メーカーの技術と狂気がぶつかり合う群雄割拠のセグメントだったはず。しかし、「効率」もより重視しなければならないのが現代の市場。どれも優秀で扱いやすいものの、最大公約数的なモデルの枠に収まっているように、筆者には感じられていた。たとえばベテランライダーの目からすると、乗る前から走りの味が見えてしまうような、既視感のようなものがあったというのは、言い過ぎだろうか。
そこへ、突如として2台の「黒船」が上陸した。イタリアの名を冠するモルビデリ「C252V」と、中国ベンダ(BENDA)の「ナポレオンボブ250」である。日本のメーカーが久しく忘れてしまった「過剰なまでのデザイン性」が、その小さな車体に詰め込まれており、試乗の前の初見で早くも胸がざわついた。
全長2230mmという250クラスとは信じがたい車格。それでいて、車重200kgというのはなかなかのアドバンテージに違いない。
ハンドルの位置やサイズについても見た目ほどのクセはない。体形を選ぶようなこともないが、バーエンドミラーの視認性は慣れが必要。
共通の心臓。Vツインが紡ぐゆとり
2台の核となるのは、現代では希少となった249cc水冷SOHC4バルブV型2気筒エンジンだ。また、C252Vは駆動方式にベルトドライブを採用。これだけでも、既存のパラツイン勢とは一線を画す「趣味の乗り物」としてのこだわりが伝わるってくるかのように思えた。
モルビデリC252Vの全長は2230mm。400ccクラスを凌駕する巨躯(きょく)だ。クラシカルなクルーザースタイルは端正で、どこか品格を醸し出す。左右の2本出しマフラーから吐き出されるのは、Vツイン特有 of 歯切れのいい低音。スロットルを開ければ低回転から小気味よいパルス感が伝わり、高回転に向けて乾いた排気音とともに伸びていく。
操作系は軽快で、ロングホイールベースがもたらす直進安定性も高い。まるで大陸のハイウェイを巡航しているかのようなゆとり。それは、かつて我々が憧れたクルーザーの美学そのものといっても過言ではあるまい。
26ps/9000rpm、25Nm/5500rpmとパワーは十分で、Vツイン独特のパルス感あふれるフィーリングも期待以上に良好だった。
ナポレオンボブと違い、ベルトドライブを採用しているC252V。チェーンに比べてメンテナンスが楽、そして急激なトルク変動に強いというのがメリット。
全長×全幅×全高:2230×865×1090mm。
既成概念への反逆。ナポレオンボブ250という彫刻
同じエンジンを積みながら、まったく異なるデザインの狂気を突きつけてくるのがナポレオンボブ250だ。ひとり乗りに割り切られたショートテールに、ロー&ロングのボバースタイル。何より目を引くのは、フロントサスペンションの独自リンク機構だ。かつてのガーターフォークをアルミニウム合金のメカニズムとして再解釈した造形は、インダストリアルアートの領域にある。
跨ると、690mmの低シート高によるタイトなコクピット感が体を包む。走り出せば、低重心がもたらすディメンションによって、ストリートを滑るような疾走感が味わえる。実用性や積載性を切り捨てた潔い割り切りが、バイク本来の純粋な楽しさを与えてくれる。乗れば、アウターやヘルメット選びにまでこだわりたくなり、そのアウトローな個性の抗いがたい魅力を味わうことになるだろう。
中国の杭州サターンパワーテクノロジーがベンダというブランドを冠して作ったのがナポレオンボブ250。国産では到底お目にかかれないスタイルだ。
国産モデルにはない官能性と、その価格
モルビデリC252Vのトラディショナルな品格か、ナポレオンボブ250のアヴァンギャルドか。どちらを選んでも、現代の国産250ccモデルとはまた違った、濃密な体験が手に入るだろう。カタログの数字を競うのではなく、乗り手の五感を刺激し、ガレージにある姿で酒が呑めるか。そうした「官能性」において、この2台は際立っている。
国内の正規輸入元「プロト(PLOT)」が提示した価格も、この嬉しい動揺を後押しする。モルビデリC252Vが75万9000円、ナポレオンボブ250が74万8000円(いずれも税込)。手の込んだVツインメカニズムとこのデザインを備えた輸入車が75万円前後で手に入るのは、ひとつの魅力と言っていい。
ナポレオンボブ250。C252Vと同じく26ps/9000rpm、25Nm/5500rpmを発揮する249cc Vツインエンジン。外から見える造形にもチープなところは見当たらない。
全長×全幅×全高:2333×838×1038mm。
審美眼に応え、バイク熱を再び灯す”劇薬”か
体力的にもリッターバイクの重さが億劫になり、ダウンサイジングを考えるベテランは多い。しかし、単に楽だからという理由で退屈なモデルに乗り換えるのは寂しいもの。
この2台は、冷めかけた大人のバイク熱を再び呼び覚ます、ある種の”劇薬”に違いない。手軽なクォータークラスでありながら、ライフスタイルを刺激的に塗り替えてくれる。服を着替えるように、自らの生き方に合った1台を選ぶ。そんな豊かで贅沢な時間が、ここから始まるはずだ。
モルビデリC252V、走りのイメージ。
モルビデリC252V、走りのイメージ。
モルビデリC252V、走りのイメージ。
ナポレオンボブ250、走りのイメージ。
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