
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:パパコーポレーション
“機械遺産”のコンディションをどう維持するか
電気自動車や電動バイクの普及が進めば進むほど、旧車や絶版車ムーブメントは一段と熱くなりそうだ。内燃機関に対する注目度が高まるのと同時に、ユーザー自身は“機械遺産のオーナー”として、コンディション維持に努めなけらばならない状況が強まる。
とくに、人気モデルのオーナーはこれまで以上に他人の目が気になってしまうことだろう。コンディション良く愛車を走らせるオーナーは、数多くの内燃機関ファンから賞賛の声を寄せられることに。まさかそんな時代が来るはずが…と思っているバイクファンは数多いはずだ。
しかし、そんな現実が迫りつつある。我々にとって大切なことは、愛車および内燃機関のコンディションを維持継続するため、日頃からメンテナンスやケアを忘れずに行っていくことだろう。
里帰り逆輸入車の中で、とりわけ大人気なのが、カワサキが誇る初代空冷Z系エンジンを搭載したシリーズモデルである。今回のメンテナンス車両であるKZ900LTDは、丸Zや角Zなど、人気モデル用外装パーツやカラーリングに変更され、特徴的なアメリカンスタイルのまま走らせるユーザーなど極めて少なかった。
しかし時代は変わり、“ノーマル至上主義”の現在では、生産工場を出荷された当時のオリジナルスタイルで旧車を楽しむファンが圧倒的に増えている。
そんな時代の移り変わりとともに、バイクの評価はルックス重視から内燃機関のコンディション重視に変わりつつある。「オーバーホールすれば良いのでは…」との声もあるが、モデルによってはエンジン部品の供給が滞っていて、コンディション維持すら難しい現実に迫られているケースもある。
コロナ禍以降はとくにその傾向が強く、エンジンに限らず、愛車のコンディション維持が今後は大きな課題となりそうだ。
そんなエンジンコンディションの維持に欠かせないのがオイル交換である。良質なエンジンオイルをチョイスするのは当然だが、高性能添加剤を併用することで、コンディション維持のレベルを高めることもできる。
エンジン内部では、さまざまな金属部品同士が擦れ合い、エンジンパワーが生み出されている。この擦れ合い部分で重要な役割を果たしているのが、潤滑油=エンジンオイルだ。
擦れ合っている金属部品を顕微鏡レベルで凝視すると、目視ではピカピカに輝いて見える金属表面でも、じつは連続的な擦れ合いによって、ただれた状況になっていることが多い。
今回使用した高性能添加剤「スーパーゾイル」は、摩擦熱に反応することで金属化合物を形成する。
その金属化合物が、ただれた金属表面を埋めるように慣らすことで、金属同士の摺動を滑らかにする特性を持っているのだ。このスーパーゾイル効果によって、稼働中のエンジンノイズが低減するが、これは金属同士の擦れ合いが滑らかになった証だ。滑らかになることで金属摩耗が減り、エンジン部品の寿命を永くする効果を併せ持っている。
高性能エンジンオイルにあらかじめスーパーゾイル成分を添加配合したのが100%化学合成オイルのシンセティックゾイルである。ここでは、同オイルを利用し、カワサキKZ900LTDのエンジンオイル交換を実践した。
また、スーパーゾイル成分を配合したスプレーオイルのスーパーゾイルスプレーをクラッチワイヤーに注入し、操作性を高めた。さらにドライブチェーンの潤滑性を高めるために、スーパーゾイルチェーンルーブを利用。
チェーンルーブを吹き付ける時には、タイヤのトレッド面にオイルが付着しないように、ドライブチェーン周囲を古新聞で養生すると作業性が良い。
【シンセティックゾイル 10W-40 油膜+金属表面再生(100%化学合成オイル) 】スーパーゾイル成分を高度な技術で配合し、優れた油膜特性と浸透性、さらには金属表面再生効果によって、より一層高いエンジン保護性能を発揮する4サイクルエンジン用100%シンセティック(100%化学合成) オイル。低温域から高温域まで、幅広いレンジをカバーする潤滑性能を誇り、2輪車はもちろん4輪車でも高性能を発揮。オイル粘度は10W-40を採用している。高温になりがちな空冷エンジンにも適している。●価格:4730円(1000ml)/1万8480円(4000ml)
シンセティックゾイルでKZ900LTDのオイル交換
カワサキ初代空冷Z系4気筒エンジンを搭載したKZ900LTD。シンセティックゾイルでオイル交換を実施。3番エキゾーストパイプを取り外すとオイルフィルターを外せるのがKZ900LTDの特徴だ。
USカワサキ生産のKZ900LTDはジャーディン社製マフラーを標準装備。ドレンボルトとオイルフィルターは、3番エキゾーストパイプを取り外すことでアクセスする設計だ。
アルミガスケットではなくOリングをパッキンとした初代シリーズのドレンボルト。オイル交換時には新品Oリングに交換し、ドレンボルトは締め付け過ぎに要注意。
オイル管理が良いため鉄粉混じりのスラッジは皆無だった。Oリングパッキンなので、締め付け過ぎに要注意。
1976年式初代空冷4気筒系エンジンのオイルフィルターには、フィルター室用のドレンボルトがある。まずはフィルター室内の滞留エンジンオイルをドレンから抜き取る。
エンジンオイルを抜き取り、フィルター室内の残留オイルを抜き取ったとしても、オイルフィルターカバーの取り外し時にはオイルが流れ出てしまう。トレイを敷くと良い。
シンセティックゾイルをオイルジョッキに移してからエンジン内に注入する。4サイクル用スーパーゾイルを利用する際にも、ジョッキを利用してエンジンオイルと混ぜよう。
車体を直立にして前後タイヤを接地させた状態で、エンジン注入量をレベル窓で確認する。まずはフルレベルまでエンジンオイルを注入した。入れすぎ/少なすぎに要注意。
エンジン始動し、しばらくアイドリングさせてから低回転域でブリッピング。アイドリングが安定したらエンジン停止し、再度エンジンオイルのレベル(注入量)を確認しよう。レベル窓がないエンジンはディップスティックで確認する。
エンジン始動によってオイルがエンジン内を巡り、エンジン停止後に1分ほど待ち、下がったレベル分だけエンジンオイルを追加注入する。この作業が重要なのだ。
その他のスーパーゾイルシリーズ
【スーパーゾイル スプレー】 スーパーゾイル成分を配合したスプレー式のオイルがスーパーゾイルスプレー。使いやすさが好評で、エンジンの組み立て時には、摺動部への吹き付けや、即座に潤滑したい箇所へスプレーするなど、組み立てオイルとしても利用しやすく大変便利。各部の潤滑を向上させるだけではなく、パーツの延命にも貢献する。ツーリング時に携帯することで、万が一のオイル切れや2サイクルエンジンのダキツキトラブルの対処にも最善を尽くせる。●価格:1078円(80ml)/2420円(280ml)
クラッチワイヤー作動性の維持や改善のため、ケーブルインジェクターを利用してケーブル内の汚れをパーツクリーナーで洗浄する。その後、スーパーゾイルスプレーを注入して潤滑性を高めた。クラッチレバーの握りが軽くなった。
【スーパーゾイル チェーンルーブ 金属表面再生剤剤配合スプレーグリース 220ml】 シールチェーン/ノンシールチェーンに限らず、ドライブチェーン用潤滑スプレーとして開発されたスーパーゾイルチェーンルーブ。汚れているドライブチェーンは、洗浄後に塗布することでより高い効果を発揮する。ドライブチェーンに限らずさまざまな個所にも利用することができ、ブレーキレバーやクラッチレバーなどは、ピボット部分のガタや摩耗を防止するためのグリースとして高い効果を発揮する。●価格:2200円
ドライブチェーンのケアも定期的に行い、汚れが激しい時には洗浄後に作業進行しよう。古新聞で周囲を養生してから左右リンク部/ギヤとの噛み合わせ部に吹き付けよう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認 シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしてい[…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
車種別専用パーツのラインナップも豊富なキジマ バイクメーカーが開発するニューモデルは、ビギナーからベテランに至る幅広いニーズに応えるべく仕様を決定しているが、それでもすべてのライダーの希望を叶えられる[…]
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむホンダのモンキー&ゴリラ シフトアップ製88ccキットを組み込み、ノーマルキャブのままでセッティング変更せずに普通に走ることができた、6ボルト仕様の初期型黄色ゴリ[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
ヤフオクで入手したバイクのフレーム。ネジ穴に折れたボルトが詰まってた!? ヤフーオークションでとあるバイクのフレームを買ったところから話が始まります。 フレーム曲がりや大きな傷もなく、塗装面も小傷があ[…]
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認 シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしてい[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」。 今回は2気筒とは思えないほどスムースなエンジンが魅力のフルカウルス[…]
エンジンオイルにとって過酷な時期 オイル交換のタイミングって、地味に悩みますよね。「走行距離3000km~5000kmで交換が目安」とか「半年ごとに交換を!」なんて、よく聞くけれど、あくまでそれは“目[…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]
最新の関連記事(オイル/ケミカル)
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認 シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしてい[…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]
収納しやすく持ち運びやすいカード型くもり止めスプレー これからの時期、急に雨に降られて走行する際にシールドが曇りやすくなる。雨の中でシールドが曇ると余計に視界がなくなり、安全運転を阻害する要因となりか[…]
論より証拠! 試して実感、その効果!! 1947年カリフォルニア州ロングビーチで創業し、これまでにカーシャンプーやワックスをはじめ、さまざまなカー用品を手がけてきた「シュアラスター」。幅広いラインアッ[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
人気記事ランキング(全体)
“次”が存在するのは確実! それが何かが問題だ 2018年に発売されたモンキー125以来、スーパーカブC125、CT125ハンターカブ、そしてダックス125と、立て続けにスマッシュヒットを飛ばしている[…]
特別な店舗のオープンに向けた特別な1台 関西/中部エリアで6店舗を運営するモトラッドミツオカグループ。新装オープンした堺店は、国内のBMW Motorradの正規ディーラーの中でも最新の内装と設備が自[…]
脇を冷やすことで全身を効率的にクールダウン 夏場にリュックを背負ってバイクで走っていると、背中や脇の蒸れが不快なものだ。そんな悩みを抱えるライダーにこそ、「ワキひえ~る」は、目立たず、効率的に全身をク[…]
欧州ヤマハとUSヤマハの連携で生まれたカスタムビルドのXSR900 GP ウェイン・レイニーがバイクでサーキットを走った! 往年のレースファンなら、それがどれほど特別なことか理解できるだろう。 199[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
最新の投稿記事(全体)
初の対米輸出車にして初の4ストビッグバイク 1966年から発売が始まったW1シリーズは、近年ではカワサキの歴史を語るうえで欠かせない名車と言われている。それはたしかにそうなのだが、W1シリーズの開発経[…]
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
常識を塗り替えた最強の空冷Z いまやレーサーやスーパースポーツ車はもちろん、スポーツネイキッドでもメジャーなアルミフレーム。しかしその源流は、いちコンストラクターが作ったマシンにあった…。 モリワキエ[…]
40年の歴史を誇るナナハン・スーパースポーツと、兄弟車のR600 1985年当時、ナナハンと呼ばれていた750ccクラスに油冷エンジン搭載のGSX-R750でレーサーレプリカの概念を持ち込んだのがスズ[…]
ニーズに応じて使いやすい4種のUSB電源 もはやスマホやナビ、ドラレコなど、電子機器が手放せない時代。バイクに乗る上で電源の確保は、ツーリングの快適性を大きく左右する要素となっている。2020年代の新[…]
- 1
- 2