
カワサキGPZ900Rのために、中古で手に入れたカスタムホイール。程度の良さげな品をバラバラで購入したので、前後の色がチグハグに。そこで本記事では、カーベック(愛知県)にてパウダーコーティングによる塗装を施してもらった。せっかくなので、カスタム色が色濃く演出できるキャンディレッドで美しく塗装。生まれ変わった足まわりにオーナーも至極ご満悦だ。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:カーベック
傷に強く足まわりの塗装に最適な“パウダーコーティング”でフィニッシュ!!
塗装作業を依頼したカーベックは、業務用超強力剥離剤槽で塗装を剥離する。最初からサンドブラストを使うより、大半の塗膜が数分で剥がれる剥離剤の方が効率が良いのだ。
剥離剤で取り切れず残った塗膜やハブの小さな部品は、サンドブラストで下地処理を行う。カーベック製業務用サンドブラスターは、研磨材の効率が良く、キャビネット内もクリーンで作業性が良い。
事前に剥離剤を使うと、サンドブラストの時間を圧倒的に短縮できる。パウダーコーティングだけで仕上げるなら、次に溶剤系のハイブリッドプライマーを施工するが、今回はキャンディカラーにするためにひと手間をかけることにした。
バイクオーナーからの「キャンディカラーで仕上げたい」という希望で、下地としてバレル研磨でポリッシュすることに。シルバーメタリックのパウダーの上にキャンディパウダーを載せる2コートも可能。
ヘッドに取り付けた素材を回転させながら三次元研磨するMURAMASAも、カーベックのオリジナル製品だ。メディア槽を交換して、粗研磨と仕上げ研磨を行う。
鍛造&切削ホイールはバレル研磨の効果が顕著で、二種類のメディアで合計30分程度研磨すると、左のような鏡面仕上げになる(右は研磨前)。これで下地のシルバー塗装が不要となる。
鏡面仕上げのホイールに下地が透ける透明系のパウダーコーティングを行う場合、有色系のプライマーやサフェーサーは使えない。そこで化成処理によって塗装の密着性を高める。
カーベックのマジックウォーターは、目には見えない化学的なアンカーを形成し、塗料を密着させる。数分間スプレーまたは浸け置きして、水を弾かなくなったら化成被膜は完成。
オーナーが希望した色はカーベックのキャンディファーストレッド。溶剤塗料と違い、パウダーコーティングの粉体塗料はキャンディ色でも透明度はなく、ツヤ消しレッドのよう。
コロナ静電ガンで粉体塗料に静電気を与えて、アースをつないだ部品に向けて吹き付けることで電気的にまとわりつくのがパウダーコーティング。微粒粉が舞いながら付着する。
擦った下敷きに髪の毛が吸い寄せられるように、静電気を帯びた粉体塗料は金属に吸い寄せられる。静電ガンが塗装面に正対していなくても、意思があるかのように付着する。
カーベックの山田さんが持っているのは、コンプレッサーのエアで掃除機のように吸うバキュームガン。パウダーコーティングの粉体塗料は乾燥器で加熱硬化するまでは粉状なので、塗装部分以外は吸い取ることができる。耐熱マスキングテープでマスキングしても良いが、バキュームガンで吸い取る方が時間と資材の節約になることも多い。
塗料に触れないように注意しながら乾燥器に運び、190℃で20分以上焼き付ける。静電気を使い高温で焼付けを行うため、パウダーコーティングは樹脂や絶縁体には使えない。
ツヤなしレッドから一変、数十分後には透明感のあるキャンディレッドが完成。下地がバレル研磨による鏡面仕上げのため、華やかで上質な光沢が印象的で、カスタム効果は絶大。
フロントホイールはオークションで購入して20年、リヤは8年前に購入。そのまま前後のカラーリングが異なるまま所有。ベアリングはこれまで未交換とのことなので、クッシュドライブダンパーも合わせてこれを機会に新品に交換した。
ブレーキローターが付くセンターハブは差し色でブラックのパウダーコーティングで仕上げてもらった。下地研磨をバレルで行っているため、施工費は前後ホイールで約10万円となった。
装着前後のGPz900R Ninja改
写真ではキャンディレッドの美しさを表現しきれないが、バレル研磨で磨き上げられた素地のメタル感を生かしつつ発色の良いキャンディが輝くクオリティの高さは圧倒的。
BEFORE
AFTER
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