
2009年、モビリティリゾートもてぎで「フレディ・スペンサー ライディング基礎講座」が開催された。天才肌で感覚派と言われた元王者、彼が最も重要なものとして教えてくれたのはただ一つ、コーナーリングアプローチに至る基本と実践だった。今回は2009年の記事より復刻、貴重なライテク塾の模様を2回に分けてお届けする。
●文:ヤングマシン編集部
ブレーキング:鍵はイニシャルブレーキ
旋回への準備を整える区間で重要となるのが、初期制動=イニシャルブレーキである。コーナーの進入でいきなりガツンッとレバーを握り込むと、前方向へのピッチングが必要以上に発生し、バイクが不安定な状態になってしまうのだ。
初期制動とはフルブレーキングを100とすると0~5%、ちょうどブレーキランプのスイッチがカチッと入るぐらいの入力でよく、それでも十分なピッチングを起こすことが可能なんだ。
理解して欲しいのは、小さなブレーキ圧を維持したままでも、スピードが低下していけば、相対的にブレーキの効力が高まっていくということ。実際の走行におけるイニシャルブレーキは一瞬で、すぐに本制動に移行する。ただ、これを実行するか否かで、バイクの安定性は大きく変わってしまう。
イニシャルブレーキを学ぶため、手前のパイロンで軽く入力、それを維持し奥のパイロンで停止する練習を行った。ほとんどの参加者は目標よりも手前で停まってしまい、入力が大きかったことが判明。速度が減少するほど制動力が高まることがよくわかる。
コーナー進入:減速は寝かせる前に終える
ここでは最も重要なコーナーアプローチについて説明しよう。
まず最初のステップは目線だ。例えば55マイル(約89km/h)で走っているとしよう。この時、バイクは1秒間に25mも進んでしまう。よって、視界を広く取り、短時間で多くの情報を収集する必要がある(①)。
次にスロットルを戻しつつ(②)イニシャルブレーキを開始し、荷重をフロントへ移動(③)。その後、必要に応じてシフトダウン操作を行い(④)、ブレーキをさらに握り込んでスピードを落とす(⑤)。
この部分の後半で体重を内側に移動し、イン側のステップに荷重を載せておく(⑥)。その後、ブレーキレバーの入力を弱めていくと、自然に向きが変わる(⑦)。この、コーナーのクリッピング付近まで残す制動をトレールブレーキと言う。バイクの初期旋回をコントロールするのに重要なテクニックだ。
また、直進しているバイクは、ホイールなどが発生するジャイロと慣性によって真っ直ぐに走り続けようとする。減速することでその働きを減少させ、それが短い時間と距離でバイクの向きを変える手助けとなる。これを理解することも重要だ。
そしてバイクを倒し込む際、イン側のハンドルを押すと習ったライダーは多いと思う。逆操舵とか当て舵なんて呼ばれる操作だが、これは減速荷重に耐えているフロントタイヤに無理を強いるのでやめるべきだ。きちんと体重移動できていれば、例えば左コーナーで左手を離していても、バイクは自然と倒れて旋回を始めてくれるものだ。
コーナーアプローチを詳しく解説
①まず頭を上げて周囲の状況を確認する。多くのライダーが目線を下げてしまうのは余裕がないからで、自信を持って安定した走りができるようになれば、顔は自然と上げられるようになる。この時、まだスロットルは開いている状態で、レバーに指もかけていない。
②スロットルを戻すことでエンジンブレーキが発生、それによって荷重がわずかにフロントへと移動する。レバーに指をかけて準備しているものの、まだ引いてはいない。
③0~5%のイニシャルブレーキをかける。時間にしてコンマ数秒という世界だが、②と比べるとフロントフォークの沈み方やタイヤの潰れ具合がはっきりと違うのがわかる。
④スロットルをあおって回転数を合わせながらシフトダウンを行う。左手の指先を滑らかに動かして、スムーズにクラッチレバーを操作する。フルストロークさせる必要はない。
⑤ほとんどの減速はマシンが直立に近い状態で終えてしまうことが重要だ。私の場合、最大でも入力は8%程度だ。マシンが寝つつある状況でフロントブレーキを握ってしまうと、車体が起き上がろうとする。それを体験して焦ったライダーは少なくないはずだ。
⑥体を行きたい方向へオフセットさせ、荷重をイン側のステップバーに載せる。内側の太股の筋肉(大腿四頭筋)に力を入れるイメージで、腕は決して突っ張ったりしないように。
⑦トレールブレーキの入力を弱めていくと、すでに荷重がイン側にかかっているので、自然とバイクが向きを変えていく。この時、外足の太股でタンクをイン側に引き寄せるというのも効果的だ。また、旋回中も視野は広く保つこと。
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