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かつてランチア・ストラトスがラリーシーンを席巻していた頃、親元のフィアット・グループはむしろ頭を抱えていました。その理由は、いくらストラトスが勝ち続けようと、肝心の売り上げにはさほど貢献しなかったから。2シーターの特異なスタイルを持ったスポーツカーでは、万人の心をとらえても販売台数は微々たるもの。そこで、ストラトスが活躍中にも関わらず、水面下で巨額の開発費が投じられたのがフィアット131ミラフィオリというファミリーカーでした。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys
大衆車だが、フィアットの本気が感じられるモデル
フィアット131のデビューは1974年のトリノ・モーターショー。スチール製モノコックボディをスリーボックス設計とし、縦置きフロントエンジン、後輪駆動レイアウトを採用した当時のスタンダードなパッケージでした。直列4気筒のエンジンを搭載し、鋳鉄製シリンダーブロックとアルミニウム合金製シリンダーヘッドも先代の124シリーズを踏襲。
当初、131はプッシュロッドバルブギアのみで提供されたものの、世界初のOHVバルブギアとベルト駆動カムシャフトを採用したという革新性もありました。さらに、モデル後半には歯付きタイミングベルトを使用する有名なダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)エンジンが登場。大衆車といえども、フィアットの本気が感じられるかと。
商売上の理由から、ラリー投入車両として白羽の矢が立った131
この131をラリーに投入しようと考えたフィアットは、買収したばかりの「アバルト」に開発を命じました。アバルトは124ラリー(1972)に引き続き、ストラトスやX1/9、あるいはランチア・ベータ・モンテカルロといったモデルのレーシングプリペアを担っていたものの、ここで131を最優先することに。アバルトとしてはフィアットがラリー車両として本命視していたのは、ストラトスと同じくミッドシップのX1/9と考えていたようですが、これまたストラトスと同じく「2シーターのミッドシップは売れてもたかが知れいてる」という理由で外されたのでした。ペレスコーピカ(ルーフ上の巨大なエアインテーク)を装備したアバルトX1/9(SE030)はストラトスとは違った魅力もあっただけに、ちょっと残念ですよね。
131には当初ストラトスで使っていた3.2リッターのV6エンジンを搭載して開発がスタートされたといいます。131のボクシーなスタイルはストラトスやX1/9と違って、大きなエンジンベイを持ち、エキマニの取り回しなど自由度が非常に高かったのだとか。実際、1975年にはジロ・デ・イタリアに131アバルトV6クーペ(SE031)でエントリー。アバルトの開発ドライバーだったジョルジョ・ピアンタ(後に同部門の総括に就任)によってサルーンクラスでデビューウィンを飾っています。が、こちらは2ドアのクーペ、しかもV6というゴージャス仕様だったため「売り上げへの貢献度は高くない」とフィアット首脳陣が判断。アバルトの開発はふりだしに戻ることになったのでした。
「フィアット131アバルトラリー・ストラダーレ」400台の限定モデル
ここからのストーリーは037ラリーに次ぐ熱いものがあるのですが、かいつまんでご紹介しておきましょう。まず、エンジンは124ラリーで実績のあった2リッター直4をリファイン。ちなみに、フェラーリのエンジン設計で腕を振るったランプレディ技師による設計で、信頼性と出力の高さに定評があるユニットです。そして、アバルトお得意のLSDも臭種類、タイヤ&ホイールについてもコースに応じて14と15インチを使い分けるなどいかにも素性のいいFRマシンに仕上げたのでした。紺と黄色のオリオ・フィアットカラー(マルク・アレン等/メーカーズ・ワールドラリー)をはじめ、アリタリアカラー(ワルター・ロール等/FIAドライバーズカップ)など、ラリーファンならずともその雄姿は思い出に残っているはず。
ご紹介するのは、そのホモロゲーションモデルとなった「フィアット131アバルトラリー・ストラダーレ」400台の限定モデルで、1976年にFIAの承認を受けています。特徴的なオーバーフェンダーやルーフエンドのスポイラー、そして数々のインテークといったスタイルはベルトーネの作品。
1995ccツインカムで、16バルブヘッドを搭載し、1基のウェーバー34 DMTR 51/250を介して140hp/6400rpm、18kgm/3800rpmを発揮。フロント:マクファーソンストラット、リヤ:ウィッシュボーンに横置きリーフスプリングと、サスペンションもラリー仕様車とほぼ同じ。ですが、ホイールは1サイズ小さくて、14インチ×7Jとされ、185/60 HR ピレリP7タイヤが選ばれています。
ストック状態がきれいにレストアされていますが、手に入れたらばやはりワークス仕様にカスタムしたいもの。キャレロのラリーランプを装備してアレン仕様を気取るとか、オリオ・フィアットのステッカーだけでなんちゃってワークスマシンなど夢が大きく膨らむかと。ただし、高コンディションのホモロゲモデルの例に漏れることなく、落札価格は約3500万円と決して安いものではありません。グループ内でストラトスと跡目争いをして、見事に打ち負かしたことを考えても、相当なマニア向けというほかないでしょう。
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