
初夏の東京サマーランドで開催された「第18回モンキーミーティング」。会場に集結したカスタムモンキーはもはや唯一無二のプロダクトマシンの領域に迫るものも。1/1のリアルプラモデルに大人が本気で情熱を注いだ結果(褒め言葉)、カオスで百花繚乱な世界が繰り広げられた。リアルとSNS時代が融合したコミュニティが実現した、令和の今なお熱狂を集める“4ミニ・カルチャー”という沼の底知れぬ魅力を、モンキー好きの筆者がレポート。
●文&写真:ヤングマシン編集部
モンキーを中心に4ミニが560台超も集まる
新緑の香りが心地よく残る東京サマーランドの特設会場。今年もこの場所に、日本全国から規格外の情熱を持ったミニバイクたちが集結した。熱いモンキー愛を持つオーナーたちが待ちに待った「第18回モンキーミーティング」の開催である。
数々のスーパースポーツや最新のエレクトリックバイクが跋扈し、オートバイ文化が多様性を広げている現在だが、ホンダ モンキーを代表とする4ミニのクラスターは一種独特のカルチャーを築いている。
そこでは良い意味で「一般的なバイクの常識」をひっくり返すカスタムが当然のように行われ、わずか50cc(から始まる)小さな車体に、大人が狂おしいほどの情熱を注ぎ込んでいる。その過剰とも言えるエネルギーの源泉は一体どこにあるのだろうか。
東京サマーランドの特設会場にモンキーを筆頭とする4ミニが560台超も集結。そのほとんどがオーナーによる思い思いのカスタムが施され、きらびやかな4ミニワールドを創出していた。
まさに「走る盆栽、宝石」にして「1/1のプラモデル」
当日はモンキーだけでなく、ゴリラやスーパーカブ、ダックス、シャリー、グロム、CT110/125など総勢560台超の4ミニが訪れた。単一車種ではないものの、系譜を同じくするオートバイがこれほどの台数集結したのがまず驚きであり、さらに会場を見渡して圧倒されるのは1台として「同じ仕様が存在しない」という多様性だ。
クラシカルな純正スタイルを新車同様、いやそれ以上に美しくキープしているコンクール・ド・エレガンス級の個体があるかと思えば、その隣には、もはやホンダのオリジナルパーツがどこに残っているのか探すのが難しいほどのフルカスタムマシンが並ぶ。
モンキーミーティングと名付けられイベントだが、派生車種のゴリラも多数参加。ミントコンディションのオリジナル仕様はもちろん、個性的なカスタムによって一見しただけでは車種がわからない個体も多かった。
ダックスやシャーリー、スーパーカブも会場のあちこちに鎮座。カスタムの方向性も千差万別で、外装にとことんこだわったドレスアップや走行性能を際立たせるチューニング、ツーリングに重きをおいたものなど見てるだけでワクワクする。
特に注目すべきは、近年のカスタムにおけるクオリティの高さ。かつてのような「既製品のパーツを工夫して組み付ける」時代は完全に過去のものとなり、現代のモンキー・カスタムは、3DプリンターやCADを駆使したワンオフの削り出しパーツや、大排気量車顔負けのウェーブディスク、果てはツインカムヘッド化されたエンジンなど、もはやエンジニアリングの領域に達したカスタムが目白押し。
足まわりのジオメトリーや吸排気の効率を突き詰め、限られた小さなパッケージの中でいかに「自分だけの理想の運動性能と美」を成立させるか。これはまさに、自動車メーカーの開発主査が直面するパッケージングの課題そのものにも通ずる。オーナーの数だけ、独自の「開発ストーリー」がそこには存在していた。
レトロ感が人気のCT125、モダン4ミニの代表格であるグロムなども今回のミーティングには4ミニ仲間として列に加わった。会場を見渡すとホンダの4ミニがいかに多様性に満ちているかがわかる。
ネット時代だからこそ輝く、リアルな「知のコミュニティ」
そして、このイベントのもうひとつの主役は、オーナーたちの笑顔と弾む会話である。
「そのキャブ、セッティングはどう出したの?」「このマフラーのステーはどこで加工したの?」
そんなマニアックな会話が、会場のあちこちから聞こえてくる。SNSで瞬時に情報が手に入る時代ではあるが、やはり実車を前にしてお互いの苦労やノウハウをリアルに語り合う熱量は格別だ。
年齢や肩書きなどは関係なく、「モンキーが好きだ」という共通言語だけで初対面の大人たちが一瞬でエンジニア仲間のように繋がっていく光景は、「好き」を突き詰めることが最大の価値観である現代ならではのものだ。
これほど個性的なカスタムが違和感無くマッチするのも不思議。ある意味4ミニとは対象的な存在であるビッグアメリカン・スタイル、スポーティなトラスフレーム搭載車など異彩なカスタムがそこかしこに見られた。
多様化するホビーをメーカーがバックアップする意義
東京サマーランドの駐車場を舞台にした会場では、原付世界一周などの活躍で知られる旅行家&イラストレーターの藤原かんいち夫妻のトークショー、ホンダ学園の学生たちが創立50周年プロジェクトとして実施した「Cubチャレンジ」の紹介、モンキーを始めとするカスタムを得意とするショップのブース展開など、多彩なコンテンツが繰り広げられたこともトピック。
また、当日集まったオートバイたちは参加者の投票によって表彰され、ホンダからジャケットやTシャツなどのノベルティグッズ、さらにはタイヤなどの賞品が参加者に贈呈され(どうやって持ち帰った?かは不明です)、じゃんけん大会でも大盤振る舞いのホスピタリティが提供された。
会場に設けられたステージでは、旅行家&イラストレーターの藤原かんいち夫妻のトークショー、ホンダ学園の学生たちが実施した「Cubチャレンジ」のレポートなど、オートバイの展示だけでなく楽しいイベントが開かれた。
普通に考えれば「メーカー」と「改造」は双極の関係であるにも関わらず、メーカー主導のイベントで改造車が集まるのは異例のこと。これはホンダが4ミニのカスタムを排除するどころか文化として尊重している証であり、懐の広さを如実に物語っている。
「日本のプロダクトはハードは優れているがソフトは未成熟」などと揶揄する声もあるが、こと4ミニに関しては当てはまらない。むしろ日本独自のオートバイ・カルチャーとして誇るべきだろう。
左はブース展開していたT.T.Rサービスが出展したモンキー125の外装キット「エフモン」。名車ヨンフォアをまんまスケールダウンした力作だ。右はドレミコレクションのカワサキZ2スタイルのカスタム。ホンダのイベントなのに?
モンキーという名の、終わらないフロンティア
生産終了という節目を迎え、時代の波が電動化へとシフトしていく中でも、この4ミニの世界がまったく色褪せない理由が、今回のミーティングで改めてハッキリと分かった。
モンキーとは、乗り手にとって「一生終わらないキャンバス」なのだ。手を入れる余地が無限に残されているからこそ、我々はこの小さな相棒に自らの夢を投影し、走り、弄り続けるのである。
最先端のハイテクバイクも刺激的だが、自らの手で機械を操り、育てる楽しさの原点がここにはある。18回目を迎えてなお、さらに深まるモンキーの“沼”。その底知れぬ魅力に、改めて深く脱帽した一日であった。
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