ラチェットハンドルの要点であるギヤ数を36→72歯に倍増させた3/8インチシリーズのデビューから2年。72歯のラチェット機構ががついに差込角1/4&1/2インチにも採用され、全30アイテムからなるKo-ken Z-EALハンドルフルラインナップが完成した。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:山下工業研究所
- 1 明確な個性を持つ30種類のラチェットハンドル
- 2 差込角3/8インチは12種類のラインナップ展開。Z-EAL初のプッシュボタン式ロックシステムも登場
- 3 バイクのメンテナンスに適した差込角1/4インチシリーズ
- 4 コンパクトなラチェットヘッドと質実剛健なデザインが魅力
- 5 Z-EALソケットならではのボールディンプルとフィット感抜群のプッシュボタン式ロック
- 6 標準ハンドルからZ -EALハンドルまで、終始一貫して“空転トルクの軽さ”にこだわるコーケンのラチェット哲学
- 7 1/4から1/2まで共通構造を採用する72歯のZ-EALラチェット
- 8 ほんの僅かにスライドするクサビでギヤ滑り防止と軽い空転トルクを両立
- 9 コーケン独自のノウハウが盛り込まれた、カムと爪を組み合わせた左右切り替え
- 10 ギヤ数を増やしながらヘッドの小型化を果たしたZ-EAL
- 11 コーケンの鍛造技術を集約した独自のセレーショングリップ
明確な個性を持つ30種類のラチェットハンドル
デザインや製品番号を変えることなく、ラチェットハンドルの要点であるギヤ数を36→72歯に倍増させたコーケンZ-EALの3/8インチシリーズがデビューしたのが2021年。多ギヤ化による振り角の減少はもちろん、コーケン製ラチェット最大の美点である“空転トルクの軽さ”を継承したハンドルは、瞬く間に大ヒット商品となった。
それから2年、72歯のラチェット機構ががついに差込角1/4&1/2インチにも採用され、全30アイテムからなるZ-EALハンドルフルラインナップが完成した。
ハンドル長の違いや首振り機能の有無、Z-EAL初採用となるプッシュボタン式ロックシステムなど、明確な個性を持つ30種類のラチェットハンドルは、空転トルクの軽さと軽快なラチェット音でまたもや新たなファンを生み出すに違いない。
差込角3/8インチは12種類のラインナップ展開。Z-EAL初のプッシュボタン式ロックシステムも登場
差込角3/8インチのうち6アイテムは、2021年のモデルチェンジで72歯となっていたが、今回のラインナップ拡張でプッシュボタン式ロックの6アイテムが加わり、合計12種類が勢揃いとなった。3725Z(下写真の右列手前)をスタンダードとして、ハンドルの長短や首振り機能の有無など、シーンごとに最適な1本を選択できる。
バイクのメンテナンスに適した差込角1/4インチシリーズ
空転トルクが軽い3/8インチは狭い場所でも使い勝手は良いが、差込角1/4シリーズはヘッドがコンパクトなぶん、さらに窮屈な環境でもアクセスが良好。ヘッド幅は3/8の28mmに対して20.5mmと超スリムなのが特長。
コンパクトなラチェットヘッドと質実剛健なデザインが魅力
差込角1/4インチの2725Zの全長は114mm、3/8インチの3725Zは178mm、1/2インチの4725Zは253mmで、いずれもプレーンなフォルムや耐油性の高いエラストマーグリップなど、Z-EALならではのディティールを持つ。
Z-EALソケットならではのボールディンプルとフィット感抜群のプッシュボタン式ロック
Z-EALソケットのボールディンプル(ハンドル差込角の鋼球がはまる部分)は、ソケットをハンドル側に引き付ける新形状を採用しており、Z-EAL初のプッシュボタン式ロックこのディンプルと完璧にフィットする。
標準ハンドルからZ -EALハンドルまで、終始一貫して“空転トルクの軽さ”にこだわるコーケンのラチェット哲学
ラチェットハンドルはギヤ数が増えるほど振り角(ギヤの掛け替えに要する角度)が小さくなり、狭い場所でも使い勝手が良いというのが一般論。だがボルトやナットを回し続けられるか否かは、ギヤ数より空転トルクの軽重が重要な要素となる。
多ギヤ化による滑りを防ぐため、回転方向を決める爪をラチェットギヤに押しつけると、逆回転時に爪が引っかかり空転トルクが重くなり、快適な作業の妨げになるからだ。
ソケットレンチ専門メーカーであるコーケンは、長年に渡ってラチェット動作の軽さに着目した製品開発を続けており、そのこだわりはカム切替式と呼ばれるメカを採用する標準ハンドルから、独創的な2ピース構造を発明したZ-EALの72歯ギヤまでブレることなく一貫している。
劇的に軽い72歯の空転トルクは感動モノだが、一見すると凡庸すぎる24歯ハンドルの高い実力も侮れないのが、コーケンの奥深さである。
1/4から1/2まで共通構造を採用する72歯のZ-EALラチェット
72歯の前身である36歯時代と同サイズのヘッドに72歯を収めるのは技術的難易度が高い作業だが、その壁に挑むことで画期的な2ピース構造の爪を開発。差込角3/8インチを先行発売してから2年を経て1/4インチと1/2インチにも展開、すべてのZ-EALラチェットの72歯化を実現した。
ほんの僅かにスライドするクサビでギヤ滑り防止と軽い空転トルクを両立
コーケン独自のノウハウが盛り込まれた、カムと爪を組み合わせた左右切り替え
72歯ギヤのZ-EALに対して、標準タイプの3/8インチ小判形ラチェットは24歯ギヤ(1/4インチは20歯、1/2インチは24歯と30歯)と、多ギヤ化人気の中では控えめな印象。だがラチェットギヤを支える2枚の爪を三角形のカムで切り替えるコーケン独自のカム切替式構造によって、空転トルクが非常に軽く抜群の実用性を誇る。また2枚の爪のピボットをラチェット本体で支えることで、ソケットに大きなトルクが加わった際に力が逃げないため、ヘッドの変形やギヤの滑りを防止できるのも特長。ハンドルの種類によって爪の先端が2段の製品と3段の製品があり、締め付けトルクと強度アップに役立っている。
ギヤ数を増やしながらヘッドの小型化を果たしたZ-EAL
差込角1/2インチでギヤ数24歯の4753Nと、72歯のZ-EAL4725Zのヘッドを比較すると、4753Nは山谷が大きく爪もガッチリロックするため強度も高そうに見える。歯数を増やすためにギヤ径を大きくすれば滑らない山谷を容易に作れるが、クサビ状の爪を浅い山谷に食い込ませることで小型化を実現したのがZ-EALの大発明だ。
コーケンの鍛造技術を集約した独自のセレーショングリップ
ポリッシュグリップや樹脂グリップなど、複数のハンドルが用意されているコーケン製ラチェットの中で、特徴的なのがセレーショングリップ。6箇所の凹凸とローレット加工の組み合わせは同社の鍛造技術の結晶であり、握り心地の良さと滑りにくさを両立し、直径の太さに対して内部を中空化することで軽量化にも貢献している。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
コンパクトでハイパワーな18Vブラシレスモーターを搭載 デウォルト(DEWALT)の電動インパクトドライバーは、他の同社製ツールと共通の18Vバッテリーとブラシレスモーターの組み合わせで、190Nmの[…]
絶滅危惧種・2サイクルエンジンの心強い味方 エンジンに限らず、様々な部分にメンテナンスが必要な低年式モデル。たとえば、ホイールハブベアリングにガタがなかったとしても、旧グリースを洗い流して新しいグリー[…]
サンデーメカニック御用達・高性能ケミカルに注目 金属や樹脂やゴムなどの素材に、塗装やめっきといった表面処理を行って組み立てられている1台のバイク。バイクいじりの第一歩は洗車であり、素材×表面処理の組み[…]
表皮の厚み/柔軟性/優れたフィット感で仕上がり抜群。NTBの「規格部品」でくたびれたシートをリフレッシュ! 実用車としてだけでなく、カスタムバイクとしてのポテンシャルも高い、ホンダ スーパーカブ。その[…]
シンプルなメカニズムとスリムなスタイルが融合。絶版車だから味わえる空冷シングルの魅力 「無事之名馬(ぶじこれめいば)」の格言どおり、発売から40年に渡るロングセールスを記録したヤマハSR400は比肩す[…]
最新の関連記事(コーケン)
Z-EALメタルケースセット:バイクはもちろんクルマでも重宝するシブイチアイテム網羅セット ヘッドの中でガタつかず空転トルクが軽い72歯ギヤのラチェットハンドル、薄さと短さを追求したスタンダードソケッ[…]
エアーコンプレッサーを設置したら、インパクトレンチとソケットをセットで持っておきたい ガレージにコンプレッサーを置いたら、絶対欲しいインパクトレンチ。作業効率が格段に向上する。メッキ仕様が多いハンドツ[…]
新構造ロック機構でソケットとの一体感アップ。接合部の精度が秀逸なエクステンションバー ソケットレンチは、ソケット内側のディンプルに差込部のボールが入って接合される。スプリングでボールを押す一般的な差込[…]
差込角1/2インチの12ポイントソケットで最大32mmのボルトナットに対応 ソケット差込角1/2インチのソケットレンチは、ボルトナットが大きく締め付けトルクも強い。エンジンや足まわりにはガッチリした作[…]
ラチェットやソケットが小さくなるほど、使い勝手の良さが分かるクイックスピンナー コーケン製クイックスピンナーは、スピンディスク(ローレットが刻まれた円盤外周)の仕上げが丁寧で、素手の指先で回しても当た[…]
最新の関連記事(工具)
どうも! バイク好きの映画監督、ナカモトユウです。賃貸ガレージユーザーの僕は、自宅でバイクのカスタムや整備をすることが多いのですが、ここ最近願望がありまして…。それは…エアコンを設置したい!!! 9月[…]
エアクリーナーエレメントがエンジンをぶっ壊す可能性 これはつい先日、筆者が実際に体験したノンフィクションです。 これはスズキRG400ガンマ。1985年製、すっかりレトロになってしまった2ストロークマ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト ブレーキフルード・・・密閉されているのになぜ劣化する? ブレーキフルードは、マスターシリンダーとキャリパーと、ブレーキホースの中に入っているが、なぜか劣化する。「密閉され[…]
リバーシブルギヤレンチ:スタッドナットはもちろん、通常のボルト着脱でも便利を実感 ボルトやナットを連続して回せるギヤレンチはポピュラーなハンドツールのひとつだが、このレンチはメガネ部分の片面に壁があり[…]
一歩先の作業を可能にするPLOTのサービスショップツールズ 愛車と楽しく付き合うためには“バイクのコンディション維持”が何よりも重要。わかってはいても、なかなか実行できないのがメンテナンスで、さらに二[…]
人気記事ランキング(全体)
1441cc、自然吸気のモンスターは北米で健在! かつてZZ-R1100とCBR1100XXの対決を軸に発展し、ハヤブサやニンジャZX-12Rの登場からのちにメガスポーツと呼ばれたカテゴリーがある。現[…]
エンジンもシャーシも一気に時代が進む 第1回の記事では、新型CB400がトータルバランス路線を取り、77psを発揮するカワサキZX-4Rのような高性能路線には踏み込まない…という情報に対し、プロは「バ[…]
125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限[…]
日本で登場したときの想定価格は60万円台か カワサキはタイに続き北米でも「W230}を発表。空冷233cc単気筒エンジンはKLX230のものをベースとしているが、レトロモデルにふさわしいパワー特性と外[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、なんならツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
最新の投稿記事(全体)
燃料タンクも新作! サスペンションカバーやディープフェンダーも特徴 ホンダは、昨年11月に車両の姿を公開し、後日国内で発売予定としていた新型モデル「GB350C」をついに正式発表、2024年10月10[…]
最小クラスのRシリーズも元気いっぱい! 欧州では新型モデルの「R9」「R3」と同時に2025年型の「R125(日本名:YZF-R125)」、そして北米では「YZF-R7」が発表された。これらはニューカ[…]
欧州ではR125、R3、R7、R9、さらにサーキット専用R6 RACE、R6 GYTR、R1 RACE、R1 GYTRのスーパースポーツ大艦隊を編成 ヤマハは欧州で2025年モデルの「R3」を、北米で[…]
ヤマハの3気筒スーパースポーツがついに登場! ヤマハは欧州でR9、北米でYZF-R9を発表した。車名は仕向け地によって『YZF』を省略しているようだが、基本的には(細かな違いはあるとしても)同じマシン[…]
Moto2チャンピオンに向かってまっしぐら。2009年の青山博一以来の日本人世界チャンピオン誕生までカウントダウンに入った。 厳しいコンディションでもレコード更新する凄まじさ MotoGP日本グランプ[…]
- 1
- 2