
40年を超えるロングセラーとなったヤマハSR400が生産終了となり、それと入れ替わるように好評を博しているホンダGB350。1980〜2000年代には、もっとも根源的な空冷単気筒エンジンを搭載しながら、トラディショナル/スタイリッシュ/スーパースポーツモデルなど、メーカー/排気量/カテゴリーごとにキャラクターが際立つシングルモデルが登場していた。今回はレッドバロンの譲渡車検のついた中古車を例に、その魅力ある空冷シングルエンジン搭載車を紹介し、その個性と魅力を改めて振り返る。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:レッドバロン
シンプルなメカニズムとスリムなスタイルが融合。絶版車だから味わえる空冷シングルの魅力
「無事之名馬(ぶじこれめいば)」の格言どおり、発売から40年に渡るロングセールスを記録したヤマハSR400は比肩するもののない名車であり、4ストシングルの魅力と実力を証明したモデルでもある。
1978年のデビューから数年後、バイクブームの到来に合わせて空冷シングルモデルは勢力を拡大し、250ccクラスでヤマハSRX250やホンダGB250クラブマンなどが、当時爆発的に増加した女性ライダーにも大いにウケた。
一方400ccクラスでは、レーサーレプリカブームが勢いを増す1985年に、ヤマハSRX400/600とホンダGB400/500が相次いでデビュー。
それらは、21世紀まで新車が発売されたSRほどではないにせよ、現在でもコアなファンによって支持され続けている。
空冷4ストシングル+キャブレターの組み合わせには、ひと目で分かるバイクらしさと軽さという利点がある。ただしカスタムの素材となることも多く、手荒に扱われた車両も少なくない。
絶版シングルの多くが20年以上の車齢を数え、日常使いに不安を感じるかもしれない。そこで、ここではレッドバロンの“譲渡車検”をクリアした車両を紹介する。明確な整備基準を満たした車両であれば、確かな品質で当時のテイストを楽しめるだろう。重いバイクを負担に感じるライダーこそ、もう一度空冷シングルの魅力に触れてほしい。
スズキ テンプター[2000年モデル]:エンジンの存在感とこだわりのディティール。20世紀最後のトラディショナルモデル
ヤマハSR一強時代の1997年に、トラディショナル極まるスタイルとディティールで登場したテンプター。バーチカルと呼ぶにふさわしいOHC4バルブのシングルエンジンは、1986年デビューのアメリカン=サベージ用がベース。エンジンの存在感をアピールしたデザインはプレーンで、アルミ製Hリム、フロントにダブルパネルの2リーディングブレーキを装着するなど、純正ながらシングルカスタムのツボを押さえていたのが特徴だったが、いかんせんSRの壁が高すぎた。
新車当時からそれほど多く見かけることのないバイクだったが、あらためて見直すと、ホイール/ブレーキ/クランクケースカバーにきっちり寄せたエキゾーストパイプなど、仕様や仕上げに対するこだわりがよく分かる。SRと違ってセルモーター付きなので、じつは街中でも気軽に乗れる。
ホンダCL400[1998年モデル]:アップマフラーでスクランブラームードを演出。CLの伝統のネーミングを受け継ぐ
スポーティーかつトラディショナルなスタイルとパワフルなRFVCエンジンを組み合わせたGB400/500から13年を経て、1998年に発売されたCL400。
1960年代以降定着した、ロードスポーツ=CB/オフロード=SL/スクランブラー=CLというホンダのネーミングに従い、アップハンドルとセミアップマフラーの組み合わせで、街乗りから舗装林道レベルのオフロードに対応。
1997年デビューのテンプターがSRと真っ向勝負だったのに対して、若干コースを変えて空冷シングルを提案。2001年にはオンロードモデルのCB400SSもリリースされた。
中型クラスで「CL」の名が付いたのは、1970年のCL175/250/350/450が最後だったが、CL400登場前年の1997年に「ベンリィCL50」で名称が復活。さらに2023年、現行レブルをベースにCL250/500がデビュー。そういった意味ではチェックしておきたい1台。左右出しのセミアップマフラーが個性的だ。
ヤマハSRX250[1990年モデル]:前期と後期でイメージを変えた長寿モデル。ライトウェイトシングルの良さを実感できる
SRXといえば一般的に400/600の印象が強いが、その1年前の1984年に登場していたのがSRX250/250F。トレールモデルのXT250用DOHCエンジンを転用し、SRとな異なるライトウェイトスポーツモデルとしての個性を明確にアピール。実際に車重はクラス最軽量の121kgに抑えられていた。他メーカーの250シングルが姿を消すなか、1990年のフルモデルチェンジでSRX400/600に近い外装デザインとなった。
1984年の発売当初は、フロント16/リヤ18インチタイヤでカラーリングもカジュアルな印象だったが、1990 年のモデルチェンジで、前後17インチタイヤを装着し、ガソリンタンク形状やメーターも400/600とイメージを統一化。キーワードも「テイスティスポーツ」に変更されている。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
差込角1/2インチの12ポイントソケットで最大32mmのボルトナットに対応 ソケット差込角1/2インチのソケットレンチは、ボルトナットが大きく締め付けトルクも強い。エンジンや足まわりにはガッチリした作[…]
キャブレターユーザーのニーズに応えるキースター フロートチャンバー内のガソリン油面を一定に保つために重要なニードルバルブとバルブシート。バルブシートには着脱可能なタイプと圧入式の非分解タイプがあり、後[…]
バイクリフターデビューに最適 「メンテナンスは見栄えではなく、仕上がり内容が大切!」とは以前にも記したとおりで、それ以上でも以下でもない。しかし、バイクショップであればお客さんに“魅せるメンテナンス”[…]
エアーコンプレッサー:住宅地でも安心して使える、高い静粛性と速い充填スピード タンク容量は控えめだが、コンパクトさとお値打ちな価格が魅力で、1台目のコンプレッサーとしてサンメカに大人気。作動音がとにか[…]
愛車エストレヤとハンターカブのカスタム基地 1970年代半ば、16歳で原付免許を取得し、ホンダ ダックスやヤマハミニトレを乗り回していたHさん。中型/大型と進む仲間もいたが、自身は20歳を境にバイクを[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ホーネット(250)はなぜ大型バイク並の極太タイヤを採用したのか? CBR250RRをルーツとする250cc4気筒エンジンを搭載し、1996年2月に発売されたネイキッドモデル・ホーネット。2007年に[…]
セパハン&バックステップでよりスポーティーに〈2017 XL1200CXロードスター|まー君〉 フロント19インチ/リヤ18インチのホイールをセットするXL1200CXロードスター。前傾のライディング[…]
ハーレー社員のレース好きが高じてオリジナルバイクを創ることに! ビューエル(Buell)といえば、ハーレーの巨大なVツインを積んだスポーツバイクとして1990年代後半に名を馳せたブランド。他にはない個[…]
世界GP制覇の2stロータリーバルブをそのままレプリカに スズキのΓ(ガンマ)といえば250のほうを思い浮かべるかも知れない。確かにRG250Γは250スポーツの常識をことごとく打ち破った革新児だった[…]
バイクの魅力をダイレクトに感じられる2ストローク。レッドバロンの“譲渡車検”車から運命の1台を探す シンプルなメカニズムと力強い走りで、原付からスポーツモデルに至るまであらゆるバイクに搭載されていた2[…]
最新の関連記事(レッドバロン)
バイクの魅力をダイレクトに感じられる2ストローク。レッドバロンの“譲渡車検”車から運命の1台を探す シンプルなメカニズムと力強い走りで、原付からスポーツモデルに至るまであらゆるバイクに搭載されていた2[…]
「ゼロスヘルメットジェット2」へと進化 2012年に登場して以来、多くの支持を得ている「ゼロスヘルメット」。国内で最初期に登場したインナーバイザー付きヘルメットとして話題になり、快適で使い勝手も良いジ[…]
開発コンセプトはオフロードのR1。生産終了後も”最強”と呼び声高い! ヤマハのラインナップから姿を消し、はや5年。それでもまだ一般公道を走ることができるナンバー付きデュアルパーパスとしては、最強と呼び[…]
20世紀末の400ccネイキッド、ガラパゴスと言うなかれ ’80年代中盤以降のレーサーレプリカブームに対するカウンターパンチのように巻き起こった、ネイキッド旋風。きっかけは1989年に登場したカワサキ[…]
アクラポヴィッチ テネレ700用スリップオンラインチタンJMCA ストライカー ラジエターコアガード’22 カワサキZ650RS用 デイトナ ホーク11用パイプエンジンガード ヨシムラジャパン ハヤブ[…]
人気記事ランキング(全体)
突然の交通取り締まり! 違反をしていないときでも… 交通ルールを守って安全運転に努めているのに、とつぜん取り締まり中の警察官に止められてしまった経験がある方は多いはずです。 「え? なにか違反した?」[…]
ビッグ・ホーネットの派生で待望のネオクラが来る! ホンダが2025年モデルとして「CB1000」という名称のバイクを登場させる。本誌が掴んだ最新情報である。……が、事情通の方なら既報のビッグ・ホーネッ[…]
ヤマハ新世代125cc/155ccの先鋒が兄弟そろって登場! ヤマハは、今春のモーターサイクルショーに市販予定車として出展した4車のうち、「YZF-R125」「YZF-R15」を正式発表。大型バイクや[…]
Snap-on(スナップオン):世界初のソケット工具を開発 1本のハンドルにソケットをかわるがわる取り付けられる構造。現在のソケットレンチを発明した創業者によって、1920年にアメリカで設立されたスナ[…]
おお、デカ目! 北米セローはXT250の名で存続、極太タイヤのTW200は懐かしの四角ライト 日本国内では、2020年7月31日にセロー250ファイナルエディションの最後の1台が出荷されてから3年が経[…]
最新の投稿記事(全体)
イベント内容 会場ではご当地グルメや特産品の販売など、9団体が13個のブースを構え、地域の魅力を発信する。地域のお土産が当たる抽選会のほか、イベントブースまたはPAの売店で税込500円以上買い物をすれ[…]
イベント概要 会場内の花壇では触れると様々な音楽を奏でるサウンドガーデニング[1]、店舗内ではソフトクリームを使って楽しむことのできるインタラクティブな光の作品[2]、芝生エリアでは光のインスタレーシ[…]
BMWの特別な称号「M」がネイキッドにも! BMWはクルマのセダンでもスポーツ性の高さをアピールしてきたメーカー。その中でもほぼレース仕様といえる過激なパッケージには「M」という特別な称号が与えられて[…]
ホーネット(250)はなぜ大型バイク並の極太タイヤを採用したのか? CBR250RRをルーツとする250cc4気筒エンジンを搭載し、1996年2月に発売されたネイキッドモデル・ホーネット。2007年に[…]
車名の後ろに排気量の数字が入るのは欧州仕様が初めて カワサキは、北米やインドネシアに続き、欧州でも451cc版エリミネーターを発表した。正式名称は「エリミネーター500」「エリミネーター500 SE」[…]
- 1
- 2