原付二種と呼ばれる125ccクラスのバイクは、日常の足から趣味の1台まで、幅広くバイクユーザーの支持を受けている。その中で「趣味的125」の代表選手と言える、ヤマハのXSR125とホンダのモンキー125を比較してみよう…というのが当稿の目的。排気量クラスと手動クラッチのMT車ぐらいの共通項しかないけれど、同時に乗ってみるといろいろなことが見えてきたッ!!
●文:谷田貝 洋暁 ●写真:富樫秀明
できることは一緒。でも得意分野がそれぞれ違う
最近、原付二種、いわゆる125ccクラスのバイクの存在が見直されている。コロナ禍に加えて公共交通機関の縮小などで通勤・通学の足として125ccクラスのバイクを選ぶ人が増えているし、このクラスは自動車税が大きな排気量帯のバイクより安いうえ、任意保険が4輪車や中〜大型バイクの付帯にできる“ファミリーバイク特約”が使えたりすることで維持費の面でも有利な点が多い。
いずれにせよ、どうせ乗るなら楽しい方がいいに決まっている。そこで今回は125ccクラスの中から、趣味性の高い手動クラッチのMTモデルであるヤマハのXSR125とホンダのモンキー125をピックアップ、一緒に走り比べてみることにした。同時に乗ってみるとほぼ同じ排気量であるにもかかわらず、得意分野がまったく違うことに驚かされたのだ。
モンキーのキャラクターが光る街乗り
まずは125ccクラスのアドバンテージが多い街乗りから比較していこう。ストップ&ゴーや混雑した道路環境でこの2台を走らせてみたら、ここはやはりモンキー125の小さな車格というキャラクターがひときわ際立った。
モンキー125は2021年のモデルチェンジでエンジンを刷新し、同時にミッションも4速から5速に変更されているが、中低速重視という根本的なキャラクターは変わっていない。信号待ちからのスタート加速にはトルクがあって、力強い発進をしてくれる。しかもひとり乗り専用に割り切った車体がコンパクトであり、最小回転半径も1.9mと小回りが効く。混雑した道路環境でのモンキー125の機動力には光るモノがある。
一方のXSR125は、前後17インチのフルサイズの車格であり、モンキー125に比べればかなり大きく感じるし、車重も104kgのモンキーと比較すれば33kg重い137kg。しかし、軽二輪などと比べれば圧倒的に軽く、十分に街中で乗りやすく機敏な1台に仕上がっている。
街乗りにおけるXSR125とモンキー125の大きな違いはエンジン特性だ。9.4psを6750rpmで発生する中低速重視のモンキー125に対し、15psを10000rpmで発揮するXSR125は全域性能のバランス型という感じ。なんせ中低回転域から高回転域までの全域特性を高めるためにVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーター)という機構を搭載しているぐらいである。
排気量の小さな125ccクラスは、どうしても発揮できるパワーが絶対的に少なく、モンキー125のような中低速重視にするか、それともパワー重視の高回転型にするかの両極端なキャラクターが多かった。だがVVAが登場したことで中低速重視エンジンと高速重視エンジンのいいとこ取りができるようになったのだ。
そんなVVAを搭載したXSR125の発進性能はというと“なかなかいい”感じである。たしかに中低速に極振りしているモンキー125のような強いトルクの押し出し感はないものの、出足から普通に力強い発進をしてくれる。少なくともクルマに遅れを取ったりストレスを感じるようなことはない。
なんて書き方をしてしまうと“XSR125が大したことがない”ように思われてしまうかもしれないがそうではない。というのも、モンキー125のような中低速に極振りしたマシンはともかく、一昔前のフルサイズ125ccでは“普通に加速する”ということがなかなか難しいモデルもあったのだ。
ところがこのXSR125、そんな“一昔前の125ccアルアルな走り”をしなくて済む。普通にスロットルを開ければストレスなく加速するし、発進加速もスムーズ。キャブレター時代やインジェクション黎明期のスロットルを開けてもなんだか進まないフルサイズ125ccを知っている身からすると、これはすごいことなのだ。
速度が上がるほど余裕を見せるXSR
さて、お次は郊外の流れのいい幹線道路やワンデイツーリングを想定しながらインプレッションしてみよう。まず驚いたのがモンキー125のライディングポジションだ。フルサイズのXSR125に比べると窮屈に感じるだろうな…なんて思っていたのだが、意外とラクチン。全体的にコンパクトとはいえ、このぐらいポジションに余裕があれば丸1日走ったところでそこまで疲れることはなさそうだ。
このあたり、XSR125はどうかというとさすがはフルサイズといったところ。ちゃんとバイクを操るのに理にかなったポジションが与えられているのでまったくストレスがない。思わず“これで高速道路に乗れたら、どこでも行けるのに…”なんて高望みが出てきてしまうぐらいだ。
さて、流れのいい交通環境になってくると2台のキャラクターの差がよりハッキリと出てくる。XSR125の高回転の伸びがいいのだ。そもそも出力に1.5倍以上の差がある上、6速ミッションにVVAなど、そういう風に作っているのだから当たり前ではあるのだが、一緒に走るとモンキー125との差が開くことが多くなる。とくに長い上り坂などでは、まだまだXSR125に余裕がある状況でも、モンキー125は5速全開で頑張っている感じ。ハイペースでの巡航性能はXSR125に軍配があがる。
十分な発進加速を持ちながら、このトップスピード付近の伸びの良さを持つのは間違いなくVVAの恩恵である。ちなみにXSR125ではクローズドコースでの試乗経験もあるのだが、最高速はメーター読みで115km/hの数字を見たことがある(ちなみにモンキー125は95km/hぐらい)。
本格的なXSR、玉乗り的な面白さのモンキー
お次はコーナリングだが、これも2台のキャラクターの違いが出てとても面白い。前後17インチのXSR125はいわゆるスポーツ走行が可能だ。ポジションに余裕があるおかげで、腰を落としてのハングオン的なポジションも取りやすいし、バーハンドルの優位性を活かしたリーンアウト気味のライディングフォームもキマる。
6速のギヤレシオに関しても、しっかりスポーツライディングを見据えて作り込んでいるのだろう、コーナー進入で3速から2速に落として旋回。十分に加速してからシフトアップ…なんていう一連の流れがスムーズにキマるようなギヤ設定になっている。
一方のモンキー125はというと、決してスポーツバイクとしては作り込まれてないのだがこれはこれで面白い。小さな前後12インチホイールにXSR125より180mmも短い1145mmのホイールベース。コンパクトな車体と扱い切れるエンジン性能のおかげでなんだか楽しいのである。
コーナーを攻めるバイクではないのでコーナリングスピードで言えばXSR125に叶うわけはないのだが、コンパクトな車体はライダーがまたがればトップヘビーとなり、乗り手の挙動に対して敏感に反応。玉乗りしているような面白さがあるのだ。
やはりモンキー125の主戦場は中低速域。太めのエンジンパルスを感じながら、お散歩感覚で流して走るのが一番心地いい。対するXSR125はレトロなルックスを持ちつつも純然たるスポーツバイクとして成立している。同じ125ccクラスのマニュアルモデルながら、キャラクターも設計思想もまったく違うのだ。
【まとめ】求めるのはファーストバイクか? セカンドバイクか?
XSR125とモンキー125、同じ125ccクラスのギヤ付きモデルを乗り比べて思うのは、キャラクターの多様性だ。モンキー125は、ひとり乗りだったり、前後12インチホイールからくる独特の乗り味だったり、良くも悪くも個性が強くセカンドバイク向きということだ。あくまでメインのバイクがあったうえで、“ちょっとキャラクターの尖った2台目が欲しい”。そんな要望を満たすようなマシンになっている。
対してXSR125のキャラクターはあくまでニュートラル。走りが素直でスポーツライディングのイロハも学びやすい一方で、対応速度レンジも広く二人乗りも可能で実用性も高いから十分メインバイクを張れる素養を持っている。それこそ、免許をとったばかりのライダーの初めての1台としては自信を持ってオススメできると、太鼓判を押させてもらおう。
設計思想がよく表れる2台のライディングポジション
XSR125:シート高810mm
モンキー125:シート高776mm
テスター谷田貝の「2台のココがイイ!!」
XSR125①スタンダードな前後17インチの車格
XSR125②二人乗りができる!
XSR125③やっぱりすごいぞVVA!
モンキー125①車体がとにかくコンパクト!
モンキー125②車両重量104kg!
モンキー125③意外と長距離もイケる!
2台のディテールを徹底比較!
【ヤマハ XSR125】フルサイズの“モーターサイクル”
2023年12月に国内発売が開始されたXSR125 ABS(型式:RE46J)。名前をみてわかるとおり、オーセンティックでレトロな外観を持つXSRシリーズとして登場。XSRシリーズには他に、XSR900/GP、XSR700、XSR155(正規販売は海外のみ)がラインナップしており、XSR125は排気量的に末弟のポジション。しかし、車体を見てみると前後17インチのホイールに倒立フォークやダイヤモンドフレーム、6速ミッションエンジンなどなど。兄貴たちに負けない”NeoRetro”なモーターサイクルとしてしっかり作り込まれていることがわかる。
【ホンダ モンキー125】ファニーなデフォルメスタイルが特徴
1961年、多摩テック(遊園地)の子ども向け遊具として産声をあげたモンキー。その後モンキーは市販化され車のトランクに入れて持ち運ぶ「レジャーバイク」の地位を確立。日本国内では1967年から50ccモデルの発売がスタートした。現行の125ccモデルは2018年に登場し、先代に比べると車格も大型化。2021年には5速&ロングストロークの新型エンジンに換装されている。CT125ハンターカブやダックス125など、ホンダ125ccクラスの“オールドウイングマーク”シリーズでは唯一のクラッチレバー付きMTモデルとなっている。
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