
1960年代後半にAMF(アメリカンマシンファンダリー)の傘下に入ったハーレーダビッドソン。買い戻された1981年にリリースされた新パワーユニット“エボリューションVツイン”と、クラシックなスタイルを決定づける画期的なシャーシ“ソフテイル”。これらを駆使して往年の名車たちを想起させるモデルをハーレーダビッドソンは次々に登場させ、人気を博していく。本記事では、1988年に登場した、スプリンガーフォークを装備したソフテイルのリミテッドエディションを紹介する。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:ハーレーダビッドソンジャパン ●外部リンク:ハーレーダビッドソンジャパン
ハードな見た目でソフトな乗り心地。ソフテイルのリミテッドエディション
創業者たちの家系による純血主義を貫いてきたハーレーダビッドソンだったが、企業買収が盛んになった1960年代後半、経済状況の低迷から株式を公開し、レクリエーション製品を手広く扱うAMF(アメリカンマシンファンダリー)の傘下に入らなければならなかった。
13人の役員によって会社を買い戻したのは1981年のことで、3年後にはメンテナンスフリー/軽量化/冷却性向上を果たし、高い信頼性を獲得した新パワーユニット“エボリューションVツイン”をリリース。ショベルヘッドから1340ccの排気量こそ踏襲したものの、オールニュー。新設計のアルミシリンダーヘッドは、スキッシュエリアを持つウェッジ型の燃焼室で、高出力とクリーンな排出ガスを両立し、ショベルより10%のパワーアップを実現。スクエア状のヘッド部は3つのピースを積み上げることから「ブロックヘッド」とも呼ばれた。
同時に、画期的なシャーシが誕生。1957年までのリヤサスペンションを持たないリジッドフレームの外観を得るため、2本のショックアブソーバーを車体の底に隠すよう水平配置し、三角形のスイングアームを押し引きする構造とした。
衝撃吸収機構を備えないハードテイルに対し、ソフトで快適な乗り心地であることから「ソフテイル」とネーミングされた。クラシックなスタイルを決定づけるソフテイルフレームのおかげで、往年の名車たちを想起させるモデルをハーレーダビッドソンは次々に登場させ、人気を博していく。
バイバックを記念し、1981年に発売したFLHヘリテイジエディションは、フリンジの付いたサドルシートやレザーバッグで、1950年代のデュオグライドのシルエットを甦らせたが、1986年のソフテイルヘリテイジクラシックはより旧いハイドラグライドの復活を感じさせた。
そして、世界中のバイクファンを驚かせたのが1988年、創業95周年を記念して登場したスプリンガーソフテイルだった。
油圧式のテレスコピック式フォークの台頭により、1948年に途絶えたスプリンガーフォークが復活したのだから、初めて見た者たちはまさかと目を疑った。
リジッドレッグが車軸に向かって次第に細くなるなど、オリジナルを忠実に再現。剥き出しのスプリングと2本のフォークレッグからなるオールドスタイルのサスペンション機構を、40年もの時を経て再び新型車に採用するなど、業界の常識からかけ離れており、その斬新なアイデアと技術力には賞賛の嵐が巻き起こる。
これもまた85周年という節目のチャレンジであり、タンクには大きな翼をなびかせる白頭鷲とバー&シールドの特別なグラフィックが描かれた。スプリンガーモデルは2011年式まで販売される。
2023年モデルもまたさまざまな限定仕様車が設定された。ここで紹介したメモリアルモデルのように、未来永劫いつの時代も輝きを失うことはない。
もしこれを読んでいるアナタが、伝統を継承する記念すべきリミテッドエディションを新車で購入できる機会であるなら、じつに羨ましく、逃す手はない! 世界中にたった1台のシリアルナンバーが刻まれるハーレーは、人生において最高の相棒となり、誇らしい宝物となるだろう。
1981:AMF傘下からの脱却は歴史に残る大改革
レジャー関連大手のAMFの傘下にあったハーレーダビッドソンを13 人の役員が買い戻した。金融機関から融資を受けて資金調達をするLBO(レバレッジドバイアウト)による歴史的なバイバックは、1981年のことだった。
このフレームが歴史を作った! 1984-2017 ソフテイルフレーム
1984年から2017 年式まで続いた旧ソフテイルフレームでは、2本のショックアブソーバが車体底部に備わり、スイングアームが動くとスプリングが押し縮められ、ダンパーは通常とは逆方向にストロークした。リヤショックを持たないリジッドフレーム時代のフォルムを再現したもので、誕生したのは1984年のこと。初代FXSTから脈々と受け継いできたシャーシであった。
1981:ショベル時代からあったリバイバルバージョン
1981年のバイバックを記念し、グリーンとオレンジの車体色で発売されたのがFLHヘリテイジエディション。歴史と伝統を重んじるハーレーは、早くから往年のモデルをオマージュしたモデルを登場させていた。エンジンはショベルヘッド1340cc。
1986:リジッド風なビンテージルックソフテイルフレーム
ウインドシールドやフォグランプを備えた豪華で重厚なフロントまわり、クラシカルなデザインのレザーサドルバッグ、オーソドックスなスポークホイールやディープフェンダーなどノスタルジックなスタイルで登場した1986年のヘリテイジソフテイル。ロングセラーとなった。
1991:アメリカンレーシングの誕生50周年
1992年には、デイトナのレース50周年記念として全世界1700台限定のFXDB-Dが発売された。ショベルから引き継いだケイヒン製バタフライキャブは、1990年に負圧式CVに変更。ロッカー周辺のガスケットは1990年まではコルクだったが、1991年から耐油性の高いゴム製ガスケットを採用。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ハーレーダビッドソン専門誌『ウィズハーレー』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
初ツーリングのメンバーも気持ちの良いクルージングを楽しめる 目的地は、静岡県の清水。最初の計画では、ほとんど一般道で南下する予定だったが、メンバーに初心者の女性ライダーもいるということで、ゴー&[…]
オーナーとのディスカッションで生まれたクラシカルテイストパンヘッド 大型のショールームに大量のクラシカルカスタムバイクを展示している遠藤自動車。基本的にそのスタイルは、ビンテージハーレーの基本骨格から[…]
白バイ史上最大排気量 栃木県警察本部に、ハーレーダビッドソンの白バイ2台が寄贈された。交通機動隊に配備され、交通事故防止の啓発活動などに活用されていく。 白バイ仕様の『ストリートグライドスペシャル[…]
どっこい乗れるのっ! 1923ccロードグライド ご用意してくださっていたのは、なんと排気量1923ccの超弩級ハーレー! 最新の『ロードグライドST』ではありませんか。その迫力に、正直なところ圧倒さ[…]
明るく広々した店内に人気の最新モデルが勢揃い 弾ける笑顔で、ハーレーダビッドソン埼玉花園の店内を案内してくれるのは市川さん。ハーレーダビッドソンがミルウォーキーに構え続ける本社屋のようなレンガづくりの[…]
最新の関連記事(ハーレーダビッドソン)
FLHX ストリートグライド:ワイドグライド譲りのファイヤーカラーも選べる! 2025年式ストリートグライドは、その象徴的なバットウイングフェアリングとLEDライトを融合させたモダンなスタイルを持つグ[…]
FLHXU ストリートグライドウルトラ:ストリートグライドを名乗る、伝統のウルトラモデルがついにデビュー! ハーレーダビッドソンのフラッグシップモデルが、フルモデルチェンジを果たした。その名は「FLH[…]
RH975S ナイトスタースペシャル:ダウンドラフト吸気の水冷Vツインを黒で統一 レボリューションマックス搭載モデルでは、燃料タンクをシート下にレイアウトすることでダウンドラフト吸気を実現。従来タンク[…]
RH1250S スポーツスターS:ダウンドラフト吸気の水冷Vツインを黒で統一 121HPを発揮するレボリューションマックス1250Tエンジンをオールブラックにし、精悍さを強調するデザインとなった202[…]
RA1250ST パンアメリカ1250ST:オンロードを制するためのニューマシン“ST”登場 アメリカで人気沸騰中のスーパーフーリガンレースでは、公式バイクとして位置づけられ、H-Dファクトリーのサポ[…]
最新の関連記事(新型クルーザー)
FLHX ストリートグライド:ワイドグライド譲りのファイヤーカラーも選べる! 2025年式ストリートグライドは、その象徴的なバットウイングフェアリングとLEDライトを融合させたモダンなスタイルを持つグ[…]
FLHXU ストリートグライドウルトラ:ストリートグライドを名乗る、伝統のウルトラモデルがついにデビュー! ハーレーダビッドソンのフラッグシップモデルが、フルモデルチェンジを果たした。その名は「FLH[…]
ツーリングの楽しさを気軽に、疲れ知らずで ウェット路面に翻弄され、全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラス今季初戦は、決勝9位という不本意な結果に…。その悔しさを癒してもらおうと、新型のRebel […]
RH975S ナイトスタースペシャル:ダウンドラフト吸気の水冷Vツインを黒で統一 レボリューションマックス搭載モデルでは、燃料タンクをシート下にレイアウトすることでダウンドラフト吸気を実現。従来タンク[…]
RH1250S スポーツスターS:ダウンドラフト吸気の水冷Vツインを黒で統一 121HPを発揮するレボリューションマックス1250Tエンジンをオールブラックにし、精悍さを強調するデザインとなった202[…]
人気記事ランキング(全体)
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
カスタムスピリットから生まれた英国ブランド まずMUTT Motorcyclesというブランドについておさらいしておこう。2016年、英国バーミンガムでカスタムビルダーのWill RiggとBenny[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
最新の投稿記事(全体)
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
用品から観光までバイクライフが広がる一日 「茶ミーティング」の最大の魅力は、その出展ブースの多様性にある。国内外のオートバイメーカーや用品メーカー、卸商といった我々ライダーにはお馴染みの企業が多数参加[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]
- 1
- 2