
ロイヤルエンフィールドが提案するバイクライフには、「ピュアライド」「ピュアスポーツ」「ピュアモーターサイクル」というスローガンがあり、インドやアメリカではさまざまなレースに参戦。ロイヤルエンフィールド×スポーツライディングを多くのカスタマーが楽しんでいる。そんな活動を日本でも広めるため、九州のイベントレース『鉄馬』に参戦! ここでは2024年から参戦を開始したハンター350のレーサーを紹介しよう!
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:ロイヤルエンフィールド ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド
350ccシリーズでもっともスポーティーなハンター350でレースに参戦!
なんてコンパクトで可愛らしいバイクだろう…。HSR九州のピットに佇む、低く構えるハンター350レーサーを見て、まずそう思った。しかし女子大生ライダーの中山恵莉菜さんが走り出すと、可愛らしさは精悍さへと変わり、まさに人馬一体を思わせる。そのマッチングは到底揺るぎそうにない。
そんなハンター350レーサーを仕上げたのは、熊本の単車工房モトジャンキー。今シーズンから『鉄馬フェスティバルwithベータチタニウム(以下、鉄馬)』のネオクラシック350(以下、NC350)クラスにチャレンジするマシンで、現在、日本でもっともカスタムされたハンター350といえる。
中山さんのまわりは常に楽しげな雰囲気。レースは真剣、でも楽しむスタンスも大切。モトジャンキーのピットは明るい雰囲気に包まれていた。
NC350はホンダのGB350とロイヤルエンフィールドのハンター350のみが出場できる、2024年から新設されたクラス。前年まではGB350のワンメイククラスが鉄馬で開催されていたのだが、今シーズンからクラスを新設し、この2台のエントリーが可能になった。
両車両ともノーマルのスペックは20ps。両車はこの350ccエンジンをベースにバリエーションを増やしており、市販車においてもインド&日本はもちろん、各国でライバル争いを繰り広げている人気機種だ。そんな2台が九州のHSRを舞台に勝負を展開した。
レースの模様はこちら(ハンター350鉄馬参戦記(第1回):ロイヤルエンフィールドのハンター350がホンダGB350と真っ向勝負!【女子大生ライダーがモリワキに挑む!】)を見ていただくとして、今回はNC350クラスを戦ったハンター350レーサーの詳細をお届けしよう。
ロイヤルエンフィールドのハンター350は、同社の350ccエンジンを搭載するJプラットフォームの中でもっともスポーティーな1台。前後17インチを履き、比較的ローコストでレース参戦できるマシンだ。今回も中山さん以外の3名がほぼフルノーマルのハンター350でNC350クラスに参戦した。
2024年の「鉄馬フェスティバルwithベータチタニウム」参戦の模様を動画でも公開!
多くの方のサポートを受けて完成したハンター350レーサーを走らせる中山さん。市販車/カスタムバイクでのレースは初めて。レースウィーク中にいろいろなことを吸収していく。
セパレートハンドルを装着し、カフェレーサーとなったハンター350。空冷単気筒エンジンが生み出すシンプルかつスタイリッシュなシルエットを実現。メンテナンススタンドはJトリップ製のメッキ。
マフラーはクオーター製のフルチタン。チャンバーを設けるエキゾーストパイプは、徐々にパイプ径を太くしていく凝った作り。ガソリンキャッチタンクはマフラーのチャンバーをオマージュしたデザインで、モトジャンキーの中尾さんが制作。
中尾さんが中山さんの走りを見ながらセットを考える。フロントフォークスプリングの交換を始めると、すかさず中山さんが作業をサポート。幼い頃からサーキットに通う中山さんは、こうしたサポートもお手のもの! レースの週末は中尾さんだけでなく、中尾さんの奥様(写真右の右)にもサポートいただく。ありがとうございます!
【ロイヤルエンフィールド ハンター350.】こちらがノーマルのハンター350。エンジンは空冷単気筒の349cc。6100rpmで20psを発揮する。重量は181kgとJプラットフォームの中でもっとも軽い。さまざまなカラーバリエーションも魅力で、価格は65万7800〜66万4400円。
軽量化を進めつつ、ハンドリングを追求していく
ロイヤルエンフィールドは、インドという土地柄が生み出すのか、ひとつひとつのパーツが丈夫にできている。インドの道路事情は日本ほど整備が進んでいなく、3人乗りどころか4人乗りも当たり前。道路には大きな穴が空き、高さ15cmほどのスピードブレーカーと呼ばれるブロックを頻繁に越えなければならなかったりもする。
ただ、それが良い方向に出ている面もあり、シャーシの設計はとてもしっかりしていて、それがハンドリングの良さに繋がっているのである。これは国産のこのクラスにはないロイヤルエンフィールドの美点。走る楽しさをきちんと追求しており、レーサーに仕立ててもスポーツライディングを楽しむことができるのだ。
そんなロイヤルエンフィールドの素性を活かすため、モトジャンキー代表の中尾さんはまずは軽量化を進めていった。今回は初年度のため手探り状態ではあるものの、中尾さんは徐々にハンター350を理解。スタッフの松見さんとともにセットアップを進め、それを中山さんの走りに落とし込んでいく作業を繰り返した。ちなみに今回、レーサー制作においてトラブルはなく、エンジンを一度も開けないまま決勝に挑んでいる。
決勝では3年間熟成を繰り返してきたモリワキGB350に敵わなかったものの、レースを戦ってみて課題や足りない部分は明確に。すでに中尾さんの頭の中にはさまざまなメニューが浮かんでいるから、来年へ向けたポテンシャルアップと、進化した中山さんの走りを今から楽しみにしたい!
前後アクスルシャフトはベータチタニウム製のチタンに交換。前後でなんと約800gもの軽量化を実現! 決勝の開会挨拶では、写真左の同社の岡田洋一郎さんが突然クイーンを熱唱。インパクトのある挨拶で、一瞬で会場を温めた。
前後ホイールはアクティブのゲイルスピードで、約8kgもの軽量化を実現。アルミ鍛造のCBR250RR用を流用して装着している。フロントディスクもCBR250RR用のサンスター製。キャリパーはブレンボレーシングで、キャリパーサポートはモトジャンキーのワンオフ。タイヤはピレリ製のディアブロスーパーコルサSC1。このクラスだとタイヤのライフも長い!
タイヤウォーマーはモトコルセが取り扱うCapit製。用途に合わせた多くのバリエーションがあり、MotoGPやWSBKで大きなシェアを持つ。ビジョン機能付きは、40℃から100℃まで任意で温度設定が可能。設定温度に到達すると表示が点滅し、タイヤが温まったことを示す。
温度設定できる機能がとても秀逸。ハンター350のピレリ製スーパーコルサSC1は80度に設定。そしてコンチネンタルGT650が履くピレリ製スポーツコンプRSは、最初に温めすぎるとタレる症状が出てしまうため50度に設定。サイティングラップを終えた頃にきちんと温まる温度にした。タイヤの種類はもちろん、季節や気候、路面状況に合わせてタイヤの性能を発揮することができる。
フロントフォークは、ノーマルをベースにスクーデリアオクムラでカートリッジを組み込む。プリロードと伸び側減衰力の調整も可能になる。ラップタイマーはアクティブが取り扱うQスターズ。中山さんの走りの組み立てを分析し、車体のセットアップや走りのアドバイスに使用する。メーターはスタック製。このマシンの雰囲気にとてもよく似合う。リヤサスペンションもアクティブが取り扱うハイパープロ製。中山さんに合わせてセットアップを進める。
バッテリーはレーサー化の必需品とも言えるSHORAIのリチウムイオン。なんとバッテリー交換だけで2.5kgも軽量化!。もっともコストパフォーマンスの高い軽量化パーツとも言えるだろう。エアボックスは中尾さん手作りのアルミプレートで吸入効率をアップ!
サイトカバーとシートはKスピード製。Kスピードはさまざまなロイヤルエンフィールド用のパーツをラインナップ。シートレールは中尾さんがアルミパイプを組み合わせて制作し、1kgの軽量化を実現。
鉄馬にデビューしたハンター350レーサー。打倒モリワキGB350を掲げ、チャレンジを続けていく。
バイクもライダーもまだまだ進化。来年こそは!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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