
2009年、モビリティリゾートもてぎで「フレディ・スペンサー ライディング基礎講座」が開催された。天才肌で感覚派と言われた元王者、彼が最も重要なものとして教えてくれたのはただ一つ、コーナーリングアプローチに至る基本と実践だった。今回は当時の記事より、貴重なライテク塾の模様を2回に分けてお届けしよう。
●文:ヤングマシン編集部
はじめに:“速さ”でなく“スムーズさ”
皆さんは、私、フレディ・スペンサーのことをどういうライダーだと思っているだろうか? 前走者のインに飛び込んだり、コーナーの立ち上がりでホイールスピンを続けるなどの映像が繰り返し使われているからか、アグレッシブなライダーだと思っているに違いない。
だが実際の私は、バイクに乗り始めた幼少期から常にスムーズなライディングを目標としていて、それは世界GPで活躍するようになってからも変わっていない。安定して操作することがバイク本来の潜在能力を引き出す唯一の方法だからだ。
私が伝えたいのは、スムーズにバイクをコントロールする術であり、決して速さではない。
結果的にサーキットでのタイムの短縮にはつながるだろう。それも1つの要素ではあるが、最も大切なのはより正確にバイクを操作するテクニックを身に付けることなのだ。
そのための第一歩は、とにかく集中すること。V・ロッシ選手は乗車前に必ず右ステップを握ってお祈りを捧げるだろう? 彼はいつも同じ方法で集中力を高めている。私の場合は必ず左側からバイクにまたがり、乗車姿勢を意識しながらグリップに両手を添える。そういう具合にパターン化することで精神を集中させているんだ。意識が集中すると体やバイクの動きが高いレベルで感じ取れるようになる。
そして、集中した状態で正しい操作を何度も繰り返し、脳や筋肉にその動きを記憶させる。これがマッスルメモリーだ。
世間では私の事を“天才”なんて呼んでくれる人もいるが、実際には反復練習によって多くのテクニックを身に付けてきた。レースではライバルと競り合いながらも、100%の力で走っていたわけではない。それは私自身がテクニックを学ぶことも目標にしていたからである。
今回のスクールでは、バイクをコントロールする際の最も基本となる“コーナーアプローチ”について、私のノウハウをお教えしたい。いきなり速いスピードで試すのではなく、最初はゆっくりでもいいから、バイクをコントロールすることに意識を向けて欲しい。
「“速さ”でなく“スムーズさ”」
スペンサー語録①何度も繰り返すことで筋肉が記憶するのだ
有能なライダーほど同じ操作を正確に行っている。それは体中の筋肉が記憶しているからで、これによりバイク本来のパフォーマンスを引き出すことができる。最初は低い速度でバイクをコントロールすることを意識して欲しい。
スペンサー語録②ライディングする際に重要なのは“集中”だ
サーキットを走る時はもちろん、ごく普通に街中を移動する時も、自分の体がどうなっているのか、バイクはどう動いているのか、私はいかなる瞬間も高いレベルで感じ取っている。この集中こそ最も基礎的なテクニックだ。
レバー操作:最小限の動きで安定させる
コーナーへアプローチする際にライダーがやるべき操作は多い。
まずはスロットルを戻して、ブレーキレバーを引き、両手と左ツマ先を連動させてシフトダウン、さらに体重を行きたい方へ移動させてステップに荷重を移す…。これらの操作をスムーズに行わないと、バイクの挙動が乱れて不安定になってしまう。
しかし多くのライダーは、それぞれの入力が大き過ぎると言っても過言ではない。
また腕を突っ張っているために、せっかくのセルフステアを妨げてしまっている。
ハンドルグリップは手の平に軽くプレッシャーを感じる程度で十分だし、走行中のクラッチレバーの操作は1〜2cm程度だ。
このように最小限の操作を覚えることで、バイクが安定した状態でコントロールできるようになる。
「最小限の動きで安定させる」
スペンサー語録③ほとんどのライダーは過入力で損をしている
多くのライダーは、上半身や腕に力が入りすぎており、せっかくバイクが向きを変えたがっているのに、その動きを妨げてしまっている。肩の力を抜くには、まずはリラックスして走行中も呼吸することを忘れないようにする。
ブレーキ:今どきのバイクなら操作は指2本で十分
近年のバイクはどれもブレーキがよく効くので、レバー操作は指2本で十分だ。シフトダウンの際はスロットル操作も必要になるが、残りの指でグリップを握らずに、手の平のプレッシャーだけで軽く動かすようにする。
クラッチ:フルストロークなんて必要はない!
信号待ちの時と同じように、走行中のシフトアップ/ダウンもレバーをフルストロークさせる人は多いが、実際には1~2cm程度引けば機能してくれる。レバーは左右とも自分の体型に合った角度に合わせておくこと。
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