ホンダの意地と技術の結晶! 1981年「CBX400F」、1982年「CBX400Fインテグラ」【柏 秀樹の昭和~平成 カタログ蔵出しコラム Vol.9】

●文/カタログ画像提供:[クリエイターチャンネル] 柏秀樹 ●外部リンク:柏秀樹ライディングスクール(KRS)
カワサキZ400FXを凌ぐため、ホンダの独自技術をフル投入
ホンダが持っている技術のすべてをこのバイクに投入しよう!
そんな意欲がヒシヒシと伝わってくるバイク、それが1981年11月に登場したCBX400F、そして1982年7月にカウル装備のCBX400Fインテグラです。
“中免”こと自動二輪中型限定が制定された70年代半ば、400ccクラスのシェアをリードしていたホンダですが、1979年登場のカワサキZ400FXのデビューで流れが変わりました。大型バイクだけでなくミドルクラスにも4気筒!というニーズが鮮明になってきたのです。
1980年6月にヤマハXJ400が続き、1981年4月にGSX400F、そして同年11月にCBX400Fが満を持してデビュー。
もともと400ccクラスで唯一4気筒バイクをリリースしていたホンダが後追いになった以上、ライバル他社にはないホンダ独自の技術をフルに投入する手段を講じたわけです。
まずは外観。CB400フォアことヨンフォアが見せた極めて美しいエキゾーストパイプ処理に勝るとも劣らないCBX400FのX字型配置のエキパイ。CBX400Fはこの部分だけでも他を圧倒するクオリティのホンダを思い出せてくれました。
CBX400F 主要諸元■全長2060 全幅720 全高1080 軸距1380 シート高775(各mm) 車重173kg(乾)■空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 399cc 48ps/11000rpm 3.4kg-m/9000rpm 燃料タンク容量17L■タイヤサイズF=3.60-18 R=4.10-18 ●1981年11月17日発売 ●当時価格:ソリッドカラー=47万円/ツートーンカラー=48万5000円
ブレーキトルク応答型アンチノーズダイブフロントサス、プロリンク式リアサス、インボード式鋳鉄製ベンチレーティッド・ディスク装備の油圧ディスクブレーキ、ジュラルミン鍛造のセパレートハンドルにステップホルダーでも痺れるのですが、なんと言ってもこのCBX400Fの核心はホンダ400ccクラス初の4バルブ式DOHC4気筒エンジンです。
このエンジンのポイントはフリクションの低減です。高回転になるほどフリクション:摩擦抵抗が増大していく事実に向けて、強度を上げながら軽量化したコンロッドなど各部材の見直しを徹底。
動力伝達ロス低減のためシャフト、ギヤ、ボルト、ナットなど各パーツのディテールまで徹底的に見直して4気筒先駆メーカーの意地を見せました。
最新技術満載と美しい仕上がのCBX400Fですが、現実の有りがた味はもっと身近にあったのです。寒い時期でもチョークを引いてセルボタンを押すと一発でエンジン始動。しかもすぐに走り出せるほどエンジン回転が安定。もともとホンダのエンジンは始動性に優れ静粛性抜群なのにCBX400Fは輪をかけて始動性を進化させました。
ホンダ車らしく発進など低回転域での扱いやすさを実感させながら、中高回転のエンジンの伸びも最新設計らしく実にシャープかつパワフル。同クラス最後発の空冷DOHC・4気筒としてホンダの意地を見せたつくりでした。
ハンドリングは低重心が誰でもすぐに実感できるタイプ。アンチノーズダイブのフロントフォークと組み合わされたリアサスは乗り心地は良いけれど前後のストローク感を感じさせない、つまりピッチングモーションの少ないフラットな車体姿勢保持の作り込みでした。
オートキャンセル式ウインカーなど先進装備を採用したインテグラ
CBX400Fがデビューした頃の日本はオイルクーラーをオイルリザーバータンクと命名し、カウルはメーターバイザーと表現したり、さまざまな規制がこの頃に大きく緩やかになった時期でした。CBX400Fインテグラはフレームマウントの大型カウル(フェアリング)を装備した日本初のバイク。当局の規制も徐々に緩和方向になった時期に生まれたバイクと解釈できるでしょう。
CBX400Fインテグラ 主要諸元■全長2060 全幅720 全高1275 軸距1380 シート高775(各mm) 車重180kg(乾)■空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 399cc 48ps/11000rpm 3.4kg-m/9000rpm 燃料タンク容量17L■タイヤサイズF=3.60-18 R=4.10-18 ●1982年7月1日発売 ●当時価格:54万9000円
オートキャンセル式ウインカー装備も国内初。輸出主体だった同時開発モデルCBX550Fインテグラにも採用。ウインカー消し忘れ防止に役立つ先進的な装備ですが北米市場ではすでにハーレーなどには常識的な装備です。
さて、80年代初頭のホンダといえばニューレーシングを意味するNRプロジェクトで楕円ピストンのGPマシンに没入していた時期。4サイクルV型4気筒エンジンの市販車もこの流れで次々に生まれてきた頃。そんな技術革新目白押しの最中に空冷DOHC4バルブ4気筒の400スポーツ車CBX400Fを発売したという背景があります。
同時期ライバル他社は前輪19インチとツインショックの組み合わせ。70年代の技術を残したモデル群に対してCBX400Fは前後18インチ、リンク式リヤサスペンションを装備して後発モデルゆえに最新の技術構成としていたのです。
CBX400Fのカタログにはフレディ・スペンサーを起用。
CBX400Fインテグラはスーパースポーツを標榜した。
CBR400Fの後にファンの要望で再生産された
しかし、それでもホンダは意外なことに早期にCBX400Fを生産中止。レーシーなスタイルのCBR400Fへシフト。しかし根強いCBXファンの要望に応える形でCBX400Fは1984年11月に再登場。
今なお凄まじい人気を保持する中型バイクはCBX400Fを置いて他にありません。
空冷4気筒400ccロードスポーツで投入できる技術をすべて盛り込んだ意欲作は永遠不滅です。
1984年の再生産バージョンはツートーンカラー(ブラック×キャンディアラモアナレッドとキャンディアラモアナレッド×パールシェルホワイト)のみがラインナップされた。グラフィック変更とホイールスポークのブラック処理が施され、価格は据え置きの48万5000円。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(柏秀樹)
1969年の袋井テストコース完成が英国車に負けないハンドリングを生んだ ヤマハ初の4サイクルスポーツ車といえば1970年登場のヤマハスポーツ「650 XS-1」です。XS登場の約1年前にデビューしたC[…]
真摯な取り組みから生まれたスズキの良心だった 日本初のナナハンことホンダ「CB750フォア」に対し、GT750は2年後の1971年9月に登場しました。何に感動したかって、低回転のままスルスルっと滑るよ[…]
日本メーカーによる大排気量車ブーム、その先駆けが750フォア 「威風堂々!」 「世界を震撼させた脅威のスペック!」 「日本の技術力を名実ともに知らしめた記念すべき名車!」 1969年デビューのホンダC[…]
美に対する本気度を感じたミドル・シングル ひとつのエンジンでロードモデルとオフロードモデル、クルーザーモデルまでを生み出す例って過去に山ほどありますけど、プランニングからデザインのディテールまでちゃん[…]
ずっと走り続けたいミドル級爽快ツアラー 1970年代末期から1980年代に入った頃の日本のバイク各社は原付クラスからナナハンクラスに至るニューモデルを矢継ぎ早に投入していました。空前のバイクブームが訪[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
8耐の熱い走りを思わせるライムグリーンと赤の差し色 2020年モデルの発売は、2019年9月1日。250ccと基本設計を共通化した2018年モデルにおけるフルモデルチェンジ時のスペックを引き継ぐ形で登[…]
スズキRG250Γ(ガンマ):レーサーそのものの仕様に大歓喜 1983年、ようやく運輸省(当時)がカウリングとセパレートハンドルを認可。Γ(ガンマ)は、その恩恵を受け、車体を一気に”近代化”した第1号[…]
ホンダVT250F:4ストロークエンジンに懸けたホンダ 爆発的に売れた2ストのRZ250に対抗するため、1982年、ホンダは4ストロークV型2気筒のVT250Fを投入する。 ホンダには4ストへのこだわ[…]
ベースはCB750Four!新時代のスポーツ車を目指した「ホンダマチック」搭載モデル 1970年代の半ば、今回の主役「ホンダ・エアラ」のベースとなったCB750Aの紹介記事で「アメリカ人はオートマ車し[…]
ホンダが初めて設計したA型エンジン 敗戦から1年後の1946年の夏、ホンダの創業者である本田宗一郎は、早くも復興を目指して旧陸軍の小型発電機用2ストエンジンを改造して自転車に取り付け、自転車補助用エン[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
【本田技研工業 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部 CUV e: LPL(開発責任者) 後藤香織さん】2006年入社。以来一貫して2輪車開発に従事し、おもに車体設計としてEV-[…]
走り続けるため、戦い続けるためのエンジンカバーセット 「F.C.C./TSR エンジンカバーセット CBR1000RR-R(SC82)」は、世界耐久選手権(EWC)で戦い続けてきたTSRならではの製品[…]
従順で力強いエンジンと軽快な旋回性を生む車体 2024年はついに全日本ロードレース選手権で表彰台に立ち、次の目標はもちろん初優勝なのですが、先輩たちから「レースは積み重ねが大事。開幕から優勝狙いではな[…]
ベースはCB750Four!新時代のスポーツ車を目指した「ホンダマチック」搭載モデル 1970年代の半ば、今回の主役「ホンダ・エアラ」のベースとなったCB750Aの紹介記事で「アメリカ人はオートマ車し[…]
ホンダが初めて設計したA型エンジン 敗戦から1年後の1946年の夏、ホンダの創業者である本田宗一郎は、早くも復興を目指して旧陸軍の小型発電機用2ストエンジンを改造して自転車に取り付け、自転車補助用エン[…]
人気記事ランキング(全体)
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
エクステリアはより力強く、そして個性的に 今回のモデリスタのコンセプトは、その名も「Dandy mode(ダンディモード)」だ。彫刻的な立体表現を随所に用い、街中はもちろんのこと、オフロードにおいても[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
動きが渋い鍵穴に潤滑剤はNG! ・・・の前に ちょっと前に「キーの回りが渋くなってきた鍵穴に、潤滑剤を吹きつける(注入する)のはNG!」という情報がネット上で広く流れました。その理由は一時的に動きが滑[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
最新の投稿記事(全体)
8耐の熱い走りを思わせるライムグリーンと赤の差し色 2020年モデルの発売は、2019年9月1日。250ccと基本設計を共通化した2018年モデルにおけるフルモデルチェンジ時のスペックを引き継ぐ形で登[…]
【本田技研工業 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部 CUV e: LPL(開発責任者) 後藤香織さん】2006年入社。以来一貫して2輪車開発に従事し、おもに車体設計としてEV-[…]
スズキRG250Γ(ガンマ):レーサーそのものの仕様に大歓喜 1983年、ようやく運輸省(当時)がカウリングとセパレートハンドルを認可。Γ(ガンマ)は、その恩恵を受け、車体を一気に”近代化”した第1号[…]
クラッチレバーをグリップに当るまでフルに切るのは丁寧なのではなく、ギヤに衝撃を与えるラフな操作になってしまう! 大切な愛車、バイクの運転はまだ慣れていないので上手くはないけれど、操作は慎重で丁寧であり[…]
走り続けるため、戦い続けるためのエンジンカバーセット 「F.C.C./TSR エンジンカバーセット CBR1000RR-R(SC82)」は、世界耐久選手権(EWC)で戦い続けてきたTSRならではの製品[…]
- 1
- 2