
1980年代のモーターサイクルシーンに多大な影響を与え、空前の2ストローク&レーサーレプリカブームを巻き起こしたヤマハの伝説的名車「RZ250」および「RZ350」。その誕生の背景から、市販レーサー直系の革新的なメカニズム、当時のライバルを圧倒した比較試乗の記録、そして後継モデル「RZ-R」へと続く進化の系譜まで、RZシリーズのすべてがわかる特集記事4本をダイジェストでまとめて紹介しよう。
●文:ヤングマシン編集部
レプリカブームの始祖、RZ250/350誕生
ヤマハは1950年代の創業以来、2ストローク専業メーカーとして名を馳せていたが、1970年代に入ると4ストローク車の台頭や世界的な排出ガス規制の波に直面していた。そのような状況下で「最後の2ストロークスポーツ」という目標を掲げ、1977年から開発に着手したのが「RZ250」および「RZ350」だ。
市販レーサー「TZ」で培った最新技術を惜しみなく投入し、1980年8月にRZ250が、翌1981年3月にRZ350が登場。外装を一体に見せる流線形のデザインや黒塗装のチャンバー、キャストホイールなど斬新な装備を採用した。とくにRZ350は最高出力45馬力を発揮し、パワーウェイトレシオ3.17kg/psという当時の750ccクラスを凌ぐスペックを誇った。結果としてRZは「最後の2ストローク」にはならず、他社の猛追を呼び起こし、空前のレーサーレプリカブームの起爆剤となったのである。
新しい時代を切り開いたヤマハならではの技術 現代の目で見れば、至ってオーソドックスなネイキッドと思えるものの、'79年のパリ/東京モーターショーでプロトタイプが公開され、翌'80年から発売が始まったR[…]
水冷化と最新サス、RZの新技術を紐解く
初代RZ250/350が当時のライダーに与えた衝撃の背景には、市販レーサーTZ譲りの数多くの革新的な新技術が存在した。もっとも注目されたのはエンジンの水冷化である。これによりシリンダーの発熱量を安定させ、シール性と充填効率を高めることで、当時のクラストップとなる最高出力(RZ250で35馬力、RZ350で45馬力)をマークした。
しかも水冷化に伴う部品増があったにもかかわらず、エンジン単体の重量は空冷時代より約12%も軽量化されている。車体面では、オフロード車由来のモノクロス式リヤサスペンションをオンロードモデルとして採用し、抜群のトラクション性能を獲得。新設計のフレームはヘッドパイプとピボットを直線的に結ぶ構造とし、エンジンの不快な振動を上下方向のみに制限する独自の「オーソゴナルマウント」も導入された。単なるレーサーの公道版にとどまらない、ヤマハ独自の思想が凝縮されていた。
TZの技術を転用しながら独創的な思想を随所に注入 伝統の2サイクルパラレルツインという構成を維持しつつも、数多くの新技術を導入したRZ。中でも最もインパクトが大きかったのは、市販レーサーTZを踏襲する[…]
比較試乗が証明した、RZ250の圧倒的性能
デビュー当時のバイク誌において、RZ250がいかに高く評価されていたかを証明する比較試乗テストの記録が振り返られた。1980年当時、スズキ「RG250E」およびホンダ「CB250RS」とともに行われたテストでは、ゼロヨン加速こそライバルと大差なかったものの、筑波サーキットでのラップタイムはRZ250が1分15秒82を叩き出し、他を1秒以上引き離して圧勝した。
テスターからは「5000回転以下のトルクが細い」「走る場所が限定される」といったピーキーな特性への苦言も呈された。しかし一方で、6000回転からスムーズに吹け上がるエンジンフィーリングや、コーナーの入り口から出口まで正確に路面をトレースする圧倒的なコーナリング性能は絶賛されている。
さらに後年行われたRZ350のテストでは、ゼロヨン13秒77というタイムを記録し、当時の4ストローク400ccモデルをまったく寄せ付けない圧倒的な速さを見せつけた。
ライバル勢を圧倒する抜群のコーナリング性能 '80年代初頭のヤングマシン紙面には何度もRZが登場しているが、デビュー当初のRZ250の実情を知る素材としてここで選択したのは、'80年11月号に掲載した[…]
初代からRZ-Rへ、名車が紡いだ進化の系譜
1980年の誕生から1980年代末に至るまで、時代を駆け抜けた歴代RZシリーズの系譜がまとめられた。1980年に発売された初期型RZ250は、白と黒の2色展開で予約が殺到し、納車まで3ヶ月待ちとなる大ヒットを記録。翌1981年には「ゴロワーズカラー」と呼ばれる青ラインをまとったRZ350が登場し、1982年モデルでは両排気量のカラーリングが共通化されるとともに、真紅のYSP限定車も設定された。
その後、1983年には外装だけでなくフレームや足まわりまで全面刷新された新設計の「RZ-R」シリーズ(RZ250R / RZ350R)へと進化を遂げる。エンジンには排気デバイスYPVSが新たに搭載され、扱いやすさとパワーアップを両立させた。RZ250Rはその後もカウル付きモデルの追加や外装変更、最終型での前後17インチホイール化など年次改良を重ね、激動のレプリカブームの中で存在感を放ち続けた。
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 '80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
まとめ:2ストロークの可能性を切り開いた革新の歴史
1980年代初頭、環境規制や4ストローク全盛の波に対抗し、「最後の2ストロークスポーツ」という並々ならぬ決意のもとで開発されたヤマハRZ250およびRZ350。今回紹介した記事群は、市販レーサー譲りの水冷エンジンやモノクロスサスペンションといった革新技術が、いかにしてライバルを圧倒する走行性能を生み出したかが鮮明に振り返れる内容だ。
また、その圧倒的な存在感が結果的に2ストロークを延命させ、後継のRZ-Rシリーズや他メーカーを巻き込んだ未曾有のレプリカブームへと発展していった歴史的意義は極めて大きい。現代においても色褪せない、名車RZの奥深い魅力と開発思想の熱さは今なお色褪せない。
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