
1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第159回は、開催が迫る第4戦スペインGPを前に日欧メーカーの現在地をおさらいします。
Text: Go TAKAHASHI Photo: Michelin
苦境が続く日本メーカー
カタールGPが11月に延期となったことで、次戦は4月末(つまり今週末)のスペインGPになりました。ヨーロッパラウンドに入ってからもアプリリアが今の勢いを保ち続けるか、注視したいところです。ただ、ホルヘ・マルティン(Aprilia Racing)もグングン調子を上げてきていますから、打倒ドゥカティの先鋒であることは間違いありません。
その一方で、苦境から脱出できないのが日本メーカーです。ホンダは、ジョアン・ミル(Honda HRC Castrol)が速さを見せるようになってきましたが、現時点でのランキングではルカ・マリーニ(Honda HRC Castrol)が25ポイントで10位、ミルがまさかの3ポイントで19位。とても復調とは言えません。
HRCの渡辺康治社長がテレビのニュース番組で「F1は勝てますか?」と問われて、「勝てます」と答えていました。「勝つためにレースをやってるんだから、なんて当たり前なことを聞くんだろう」と思いましたが(笑)、「勝てます」という答えもどうかな、と。ただ、それが本気だとしたら、ホンダはレースへの情熱を失っていない、ということ。MotoGPにもぜひ今以上に注力してもらいたいですね。
ヤマハは新しいV型4気筒エンジンに苦しんでいますね。「そう簡単ではないだろう」と予想していましたが、ここまで苦しむとは……。ヤマハは、僕が現役時代からエンジンパワーに課題がありました。その分、ハンドリングを武器にしてタイムを稼ぐ、というマシン作りを続けてきました。今はエンジンにも課題があり、さらにエンジンの気筒配列の変更によってコーナリング中のフィーリングも悪化して、ハンドリングという武器が失われてしまった状態。完全にドツボにはまっています。
明るい要素としては、コンセッション(優遇措置)が適用されているということ。まだまだ開発中のマシンですから、コンセッションを生かして進歩してけるはずです。そういう意味では、パフォーマンスを判断するには時期尚早ですが、ライダーたちが持ちこたえてくれるかどうか……。結構シビアな発言をしがちなファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)はもちろん、あまり不満を口にしないアレックス・リンスからも厳しい声が聞こえ始めているのが気がかりです。
イタリアンメーカーで走るライダーにも明暗か
MotoGPライダーは誰もが素晴らしいテクニックとフィジカルを備えています。でも、メンタルのコントロールはかなり難しい。特に今のMotoGPは本当にシビアで、ちょっとしたことが大きな差になって表れてしまいます。その「ちょっとしたこと」には、もちろんメンタルも含まれるので大変です。
今年で言えば、フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)も心配です。’22〜’23年は2年連続でチャンピオンを獲得し、’24年もランキング2位だったバニャイアですが、マルク・マルケスがチームメイトになった昨年からは明らかに調子を崩しています。
もちろんマシンの仕上がりやマシンとの相性など、テクニカル面も大きいでしょう。でもそれ以上に、「自信を失った」といったコメントをしていることが気になります。バニャイア自身も天才ですが、天才中の天才であるマルケスがチームメイトになって、その差を誰よりも強く感じているのでしょう。
’27年はアプリリアへの移籍が有力視されているバニャイアですが、圧巻の勢いで勝利を重ねているマルコ・ベゼッキ(Aprilia Racing)や、復調したらやはり速いホルヘ・マルティン(Aprilia Racing)に比べると迫力に欠けます。来季のシートを確保するためにも、頑張ってほしいものです。
それにしても、「よいシート」として挙げられるのはドゥカティとアプリリア──気付けばイタリアンメーカーだけですね。二輪に懸ける並々ならぬ情熱と、産学一体となった開発、そしてF1など四輪技術との連携など、イタリアの勢いはまだまだ続きそうです。極東の島国という地政学的な不利に負けることなく、日本メーカーの復権に期待したいですね。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 元世界GP王者・原田哲也のバイクトーク)
「あいつは終盤に追い上げてくる」がライバルにプレッシャー フランスGPウィークですが、日本のMotoGPファンの皆さんが大注目している小椋藍くん(Trackhouse MotoGP Team)について[…]
転倒後に本コースを横切る……あれはナシ 物議を醸したスペインGPのスプリントレース。2番手を走っていたマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)が8周目の最終コーナーで転倒したことが発端[…]
相反する空力の要素を両立しているアプリリア MotoGPは早くも第3戦アメリカズGPを終え、決勝レースはマルコ・ベゼッキ(Aprilia Racing)が優勝しました。これでベゼッキは、昨年の第21戦[…]
現行レギュレーションは最後になる2026年 2月27日に開幕を迎えたMotoGP2026シーズン。注目のトピックスはたくさんありますが、僕が注目しているのは1000ccエンジンとミシュランのワンメイク[…]
開幕戦タイGPを前に WRCで大活躍している勝田貴元選手と食事をしました。彼は’24年からモナコに住んでいるんですが、なかなか会う機会がなかったんです。実はMotoGPもかなり好きでチェックしていると[…]
最新の関連記事(モトGP)
「あいつは終盤に追い上げてくる」がライバルにプレッシャー フランスGPウィークですが、日本のMotoGPファンの皆さんが大注目している小椋藍くん(Trackhouse MotoGP Team)について[…]
転倒後に本コースを横切る……あれはナシ 物議を醸したスペインGPのスプリントレース。2番手を走っていたマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)が8周目の最終コーナーで転倒したことが発端[…]
リスクを取りつつサーキットでトレーニングする小椋藍 アメリカズGPからスペインGPまでのインターバルで、日本では「オグラアイ前線」がズンズン北上し、レースファンの注目を集めた。筑波サーキット、モビリテ[…]
850cc化、エアロパーツ小型化、車高デバイス禁止、そしてタイヤメーカー変更! 先日、イタリアはミザノサーキットで、来季に向けたドゥカティ・モトGPマシンのテストが行われたようだ。 来シーズンは排気量[…]
H-Dレーシングの新たな時代が幕を開ける! 昨秋、イタリア・ミラノで開催された世界最大規模の二輪車展示会「EICMA2025」にて、ハーレーダビッドソンは『HARLEY-DAVIDSON BAGGER[…]
人気記事ランキング(全体)
普通の移動手段では満たされないあなたへ 通勤や週末のちょっとした移動。便利さばかりを追い求めた結果、街には同じようなプラスチックボディのスクーターが溢れ返っている。「もっと自分らしく、乗ること自体に興[…]
長距離ツーリングの「疲労感」にお別れ 休日のツーリング。絶景や美味しい食事を堪能した帰り道、高速道路を走りながら首や肩の痛みに耐え、「明日の仕事、しんどいな…」とため息をついた経験はないだろうか。スポ[…]
毎日の移動、もっと身軽に楽しみたいあなたへ 朝の慌ただしい時間帯。重いバイクを狭い駐輪場から引っ張り出すだけで、どっと疲れてしまうことはないだろうか。渋滞路のストップ&ゴーや、ちょっとした段差での車体[…]
レプリカブームの始祖、RZ250/350誕生 ヤマハは1950年代の創業以来、2ストローク専業メーカーとして名を馳せていたが、1970年代に入ると4ストローク車の台頭や世界的な排出ガス規制の波に直面し[…]
原付二種の身軽さに、高速道路という自由をプラス 毎日の通勤や街乗りで大活躍する125ccクラス。しかし、休日のツーリングで「自動車専用道路」の看板に道を阻まれ、遠回りを強いられた経験を持つ人は多いはず[…]
最新の投稿記事(全体)
まさに「純正然」。クラシックモデルへの親和性が爆上がり! 今回のトピックは、何と言ってもその質感にある。 「Moto II」のシンプルかつ機能的なフォルムはそのままに、ベゼル部分にポリッシュステンレス[…]
絶版車のコンディション維持に欠かせない純正部品同等の品質と性能を持つ「規格部品」 毎年のようにモデルチェンジを行うことでパーツ点数が膨大になったのがバイクブーム、レーサーレプリカブーム時代の純正部品事[…]
注目は「GP-6S」と「SK-6」の後継機! 今回発表されるのは、長らくサーキットの定番として君臨してきた名機の後継モデルだ。 GPV-R RO 8859:ツーリングカーレースの定番「GP-6S」の後[…]
ホンダの“R”だ! 可変バルブだ‼ 1980年代に入ると、市販車400ccをベースにしたTT-F3やSS400といった敷居の低いプロダクションレースの人気が高まってきた。ベース車として空冷直4のCBX[…]
「名機」がもたらす、心地よい高揚感と安心感 長年、日本のツーリングライダーを虜にしてきたスズキの645cc・90度Vツインエンジン。SV650やVストローム650の生産終了により、その系譜は途絶えたか[…]
- 1
- 2


































