
1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第156回は、WRCドライバーの勝田貴元選手に会った話、そして今シーズンのMotoGPを見据えて。※記事執筆はブリラム公式テスト直前
Text: Go TAKAHASHI Photo: Michelin
開幕戦タイGPを前に
WRCで大活躍している勝田貴元選手と食事をしました。彼は’24年からモナコに住んでいるんですが、なかなか会う機会がなかったんです。実はMotoGPもかなり好きでチェックしているとのこと。今回は外国人の知人づてでイタリアでの食事が実現しましたが、「テツヤを紹介するよ」と聞いた勝田さん、まさか「ハラダテツヤ」とは思っていなかったらしく、ビックリしてました(笑)。
ご存じの方も多いと思いますが、勝田さんは本当に素晴らしい人柄の好青年です。食事しながらの会話でも「いい人オーラ」があふれ出て止まりません(笑)。「MotoGP、生で観たいんですよ〜!」という勝田さんを、MotoGP観戦に誘っておきました。めちゃくちゃ忙しいみたいだけど、来てほしいなぁ……。
WRCトップドライバーも注目のMotoGPは、’26シーズンが間もなく開幕します。開幕戦はタイGP。昨年は、カンボジアとの軍事衝突の影響で開催が危ぶまれていましたが、直前のテストも開催される見込みですし、MotoGPファンとしてはひとまず安心でしょうか。
注目は、MotoGPクラス2年目となる小椋藍(Trackhouse MotoGP Team)くん。昨年は開幕戦タイGPで予選5位、スプリントレース4位、そして決勝でも5位と鮮やかなデビューを飾りました。今年は、もちろん昨年以上の成績に期待が懸かりますから、本人も気合いが入るでしょう。2年目の今年は、彼にとっても正念場とも言えます。今のMotoGPは甘くありませんが、ぜひ頑張ってほしいものです。
小椋藍選手(ブリラム公式テストにて)
今年はいろいろとラストイヤーになります。エンジン排気量は最後の1000cc、そしてワンメイクタイヤは最後のミシュランですね。これらについては次のコラムに書きますが、「いろいろラストイヤーだから」……なのかどうか分かりませんが、来季に向けてのストーブリーグが早すぎるスタートを切っています。
ウワサではファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)がホンダに行くとか、フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)がヤマハに行くとか(アプリリアとの報道もある)、ホルヘ・マルティン(Aprilia Racing)がヤマハに行くとか、ペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)がドゥカティに行くとか、アレックス・マルケス(BK8 Gresini Racing MotoGP)がKTMに行くとか、かなりの大型移籍が取り沙汰されています。
ストーブリーグの中心的存在ともいえるファビオ・クアルタラロ。
……いずれにしても、ストーブリーグ早すぎじゃないでしょうか……。もともとはシーズンが終わってから寒い時期に、ファンが翌シーズンのことをアレコレ言って楽しむことを「ストーブリーグ」と言っていたそうですが、もはや1年近く前倒しというちょっと異常な状況です。
情報が入り乱れるストーブリーグ、ライダーのモチベーションは……
契約は、ライダーにとってさまざまな作用をもたらします。ロリス・カピロッシはシーズン中盤にストーブリーグが始まると俄然速くなり、契約が決まるとそうでもなくなるタイプ(笑)。僕自身も、契約の有無によってライディングに何らか影響していたように思います。
例えば2年契約をした場合、マシンが合わない時には「ケガしたくないな……」と無理をしないようなことがあった……かもしれません。自分としては契約など関係なく走っているつもりでしたが、知らず知らずのうちに守りに入っていた可能性はあります。
メーカーとしては、ひとりのライダーと複数年契約した方が腰を落ち着けた開発ができそうですが、ライダーのモチベーションを高めるという意味では、やはり単年契約でシーズン終盤にストーブリーグ、というのがベストかもしれません。
もっとも、マルティンやフェルミン・アルディゲル(BK8 Gresini Racing MotoGP)のように大きなケガを負ってしまった場合は、なかなか実力が出せなくなる。その場合は複数年契約していた方がライダーとしても安心感は高いし……。契約をどう捉えるかは本当に人によると思いますが、少なからず影響していることは確かです。
ところで、WRCドライバーの勝田さんですが、レーシングカートからキャリアを始めて、サーキットレースでF3まで走っていたんですよね。全日本F3ではランキング2位になっています。「世界一になりたい」とラリーに転向し、WRCでは何度も表彰台立っています。「速い人は何に乗っても速い」の典型ですね。お父さん、お祖父さんもラリードライバーというサラブレッドとはいえ、本人の才能もすごい。
MotoGPで言えば、マルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)タイプですね。最近、ケーシー・ストーナーがマルケスについて「電子制御に頼らず走り、タイヤを長持ちさせるのが際立ってうまい」というコメントをしていました。確かにそうなんですが、じゃあどうやってタイヤを保たせているのかといえば、僕の見解では荷重コントロールがうまいのだと思います。
二輪四輪問わず、モータースポーツは結局、荷重をどうコントロールするかに尽きるのでしょう。「何に乗っても速い」というタイプの乗り手は、何に乗っても最適な荷重コントロールができるのだと思います。
じゃあどうやって荷重コントロールしているのかといえば、それは分かりません(笑)。僕も恐らく荷重コントロールがうまかった方だと思いますが、自分でどうやっていたのかも分からないし、ましてや人のことなど……。ただ、荷重コントロールに長けている人に共通しているのは、優れたセンサーの持ち主だ、ということです。
「どうやっているか」という操作以前に、まず荷重の変化を感じ取ること。話はそこからです。じゃあどうやってそのセンサーを……。ますます分かりません(笑)。ただ、人並み外れたセンサーの持ち主が集まっているMotoGPの中でも、マルケスがさらに鋭いセンサーを備えていることは確か。
マレーシア公式テストでは総合4番手でしたが、今年も本命であることは間違いなさそうです。
ブリラム公式テストでは3度の転倒を喫したマルク・マルケス。体調不良が原因だったと報じられている。
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