
大阪モーターサイクルショーで世界初公開されたホンダの新型「CB400スーパーフォア Eクラッチ コンセプト」。2022年の販売終了から待たれてきたスーパーフォアの実質的な後継モデル復活の報に、胸を躍らせたライダーも多いはずだ。この歴史的な発表を祝して、あえて時計の針を戻したい。日本の400cc直4ネイキッドの原点であり、今なお語り継がれる伝説「DREAM CB400FOUR(通称ヨンフォア)」の魅力を振り返ろう。
●文:ヤングマシン編集部 ●外部リンク:ホンダ
ナナハンは重い、でも350は物足りないというジレンマへの回答
大型バイクの圧倒的なパワーには憧れるが、取り回しに気を遣う日常はしんどい。かといって、ミドルクラスでは加速感が足りず、どこか迫力に欠ける。当時のライダーたちが抱えていたそんな「モヤモヤした不満」を、ホンダは決して見逃さなかった。
1970年代前半、ナナハンの代名詞「CB750FOUR」の絶対的な「剛」、扱いやすい「CB500FOUR」の「静」に対し、ホンダは陸上選手のような俊敏な「動」のキャラクターを構想。排気量を408ccへと拡大し、ライダーの心をダイレクトに揺さぶるマシンを世に送り出した。
それが1974年に登場したDREAM CB400FOURだ。スロットルを捻れば、軽量化された車体と6段ミッションが相まって弾けるように前に出る。街中の交差点を曲がるだけでも、思わずヘルメットの中でニヤリとしてしまうほどの快感をもたらした。
CB350FOURの347ccから408ccにアップ(シリンダー内径を47mmから51mmに変更)したエンジン。408㏄から398㏄にしたフォア-I/IIは、ストロークを50mm→48.8mmに短縮して対応した。
【HONDA DREAM CB350 FOUR】CB750FOUR(1969)、CB500FOUR(1971)に続く4気筒シリーズで、クラス最高級車として、豪華な機能と外観をもつ長距離ツーリングバイクとしてリリースされた。■空冷4ストローク4気筒OHC 347cc 34ps/9500rpm 170kg 4キャブレター 5段変速
欧米の風をまとった、美しきカフェレーサースタイル
ヨンフォアの前に立つと、まず目を奪われるのがその斬新なスタイリングだ。CBスーパースポーツの原点に立ち返り、当時欧米で流行の兆しを見せていたカフェレーサースタイルをいち早く取り入れた。
無駄を削ぎ落としたソリッドなフューエルタンク。スリムなシートエンド。そして低く構えたハンドルバー。ガレージに佇むその姿に手を触れると、ひんやりとした金属の質感とともに、内に秘めた熱い鼓動が伝わってくるかのようだ。単なる移動の道具ではなく、ライダーを「その気」にさせる仕掛けが随所に散りばめられている。
【HONDA DREAM CB400FOUR】CBスーパースポーツの原点に返り、欧米に流行の兆しがみえたカフェレーサースタイルや、4本の排気管を1本のマフラーに導いた集合排気システムをいち早く採用し高い人気を得た。■空冷4ストローク4気筒OHC 408cc 37ps/8500rpm 183kg 4キャブレター 6段変速
量産車初!機能美を極めた「4into1」集合マフラーの衝撃
ヨンフォアを語る上で絶対に外せないのが、輝かしくうねるエキゾーストパイプの造形美だ。エンジン前面から伸びた4本の管が、車体右側で滑らかに1本へと収束していく「4into1」集合マフラー。今でこそ珍しくないが、これを量産車で初めて採用したのがこのマシンなのだから驚きを隠せない。
この集合管は、単なる見た目のハッタリではない。排気干渉を利用して他のシリンダーの排気を促進し、出力を向上。同時に消音効果と軽量化までも実現する、まさに機能美の極致。エンジンを始動させると、集合管特有のまとまりのある連続音が響き渡る。回転を上げていくと、そのサウンドは心地よい高揚感へと変わる。ライダーの感性と直結するような一体感を味わえるのだ。
当時のカタログより。4into1のポイントとして「出力の向上、消音効果、さらに軽量化と機能美。量産二輪車に採用するための技術的難問を研究・テストの結果完成したホンダならではの高効率集合排気システム」としている。
法改正に翻弄されながらも輝きを増した歴史
デビューから順風満帆かに見えたヨンフォアだが、歴史のいたずらが待ち受けていた。発売の翌年となる1975年10月、400ccまでの中型限定免許制度が導入されたのだ。これにより、408ccのヨンフォアは「大型免許」が必要なバイクとなってしまった。
しかし、そこはホンダ。後期型として、ストロークを短縮した398ccの「フォア-I」と「フォア-II」を市場に投入し、免許制度に対応させた。1977年に生産を終了するものの、その後すぐに中古市場で価格が高騰。多くのライダーが「どうしてもヨンフォアに乗りたい」と渇望した事実こそが、このマシンが放つ強烈な引力の証明に他ならない。
上が1974年で下が1976年3月(後期)のカタログ。おまえは風だ。→おまえが好きだ。というキャッチコピーの変化も有名。’76年は398㏄のフォア-I/IIが加わり、バリエーションは3種類に。下段中央の2台がI/IIで、動画で走行しているはIIのスタンダードハンドル仕様となる。408㏄版とフォア-Iはセミフラットハンドルだった。
「日常で楽しい」という哲学は、現代のEクラッチへと繋がる
「日常で楽しい、バイクって楽しいなと思えることを大切にした」。新型CB400スーパーフォア Eクラッチコンセプトの開発責任者が語ったこの言葉は、まさに50年前にヨンフォアが目指した「動」のキャラクターそのものだ。
ナナハンのような威圧感はなく、スモールクラスにはない余裕と色気を持つ。最新の電子制御やEクラッチという現代の武器を手に入れても、ライダーが日常の交差点ひとつで心躍らせる「ファンライド」の神髄は少しもブレていない。
伝説のヨンフォアが切り拓き、CB400スーパーフォアが熟成させてきた直列4気筒ネイキッドの熱い血脈。新型車の市販化を待ちわびながら、改めてこの偉大なご先祖様に最大限の敬意を払いたい。
CB750FOURではタンク横にあったイグニッションスイッチがメーター部へ。ヘッドパイプにはコンビネーションロック・アンド・スイッチを初めて採用しスイッチのキー操作でハンドルロックができるようになった。
HONDA DREAM CB400FOUR SPECS
| 項目 | DREAM CB400FOUR(1974年モデル) |
|---|---|
| エンジン | 空冷4ストローク4気筒OHC |
| 排気量 | 408cc(後期型に398ccあり) |
| 最高出力 | 37ps / 8500rpm |
| 車両重量 | 183kg |
| 燃料供給 | 4キャブレター |
| 変速機 | 6段変速 |
| 最大の特徴 | 量産車初の4into1集合マフラー採用 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ホンダNSR50が、12インチの景色を変えた 前後輪12インチの50ccロードスポーツバイクといえば、ホンダ「NSR50」「NSR80」を思い浮かべるバイクファンは多いことでしょう。それというのも、こ[…]
ホンダの“R”だ! 可変バルブだ‼ 1980年代に入ると、市販車400ccをベースにしたTT-F3やSS400といった敷居の低いプロダクションレースの人気が高まってきた。ベース車として空冷直4のCBX[…]
世界を熱狂させた「キング」の象徴 インターカラー(スピードブロック)の歴史を語るうえで、絶対に外せないのが「キング」ことケニー・ロバーツの存在である。1978年から1980年にかけて、ロードレース世界[…]
レプリカブームの始祖、RZ250/350誕生 ヤマハは1950年代の創業以来、2ストローク専業メーカーとして名を馳せていたが、1970年代に入ると4ストローク車の台頭や世界的な排出ガス規制の波に直面し[…]
長時間の高速移動で悩まされる風圧 休日のツーリング。目的地に着く頃には、高速道路での強烈な風圧で首や肩が悲鳴を上げている。そんな経験を持つライダーも多いはず。かといって、風を防ぐために過激な前傾姿勢を[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
アースカラー復活のハンターカブ。唯一の悩みは足つきか 2026年モデルで初代のアースカラー「マットフレスコブラウン」が復活し、新色のブラックも追加されたCT125ハンターカブ。大型リヤキャリアや前後デ[…]
シンプルなコットンパンツにプロテクターをプラス:ライディングチノパンツ チノクロス素材を使用した本格的な風合いのチノパンツに、CE規格の軽量プロテクターをヒザに標準装備。少しゆとりのあるシルエットで、[…]
アメカジスタイルに涼しさをプラス:ストリートメッシュブルゾン ミリタリー×アメリカンカジュアルテイストを取り入れたフルメッシュジャケット。ボディには滑らかな質感で透け感を抑えたストレッチ性のあるメッシ[…]
ホンダNSR50が、12インチの景色を変えた 前後輪12インチの50ccロードスポーツバイクといえば、ホンダ「NSR50」「NSR80」を思い浮かべるバイクファンは多いことでしょう。それというのも、こ[…]
疲労ゼロと操る歓びの融合。Eクラッチの真価 クラッチ操作の自動化といえば、ホンダにはすでに「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」という確立された技術がある。しかし、DCTが約10kgの重[…]
人気記事ランキング(全体)
大衆車だが、フィアットの本気が感じられるモデル フィアット131のデビューは1974年のトリノ・モーターショー。スチール製モノコックボディをスリーボックス設計とし、縦置きフロントエンジン、後輪駆動レイ[…]
乗っていてワクワクする相棒を求める気持ち 年齢とともに車の運転が不安になり、免許返納を考える。だが、いざ代わりの移動手段を探すと「いかにも」なデザインの乗り物ばかり。ただ近所のスーパーへ行ければいい、[…]
シンプルだが飽きのこないデザイン。転倒の際の車両の保護も ライダーにとってかゆところに手が届くような、幅広いバイク関連用品を開発・販売するデイトナ。同社がリリースするバイク用カスタムパーツ「アルミビレ[…]
「ちょうどいい」がもたらす自由。完全新設計の並列2気筒 BMWの「GS」ファミリーはアドベンチャーバイクの最高峰として君臨しているが、その大柄な車体に尻込みしてしまうライダーも少なくない。そんなジレン[…]
はじめに:“速さ”でなく“スムーズさ” 皆さんは、私、フレディ・スペンサーのことをどういうライダーだと思っているだろうか? 前走者のインに飛び込んだり、コーナーの立ち上がりでホイールスピンを続けるなど[…]
最新の投稿記事(全体)
SHOEI NEOTEC3 VORYX オーソドックスだからこそTPOを選ばずかぶれるニューグラフィック ネオテック3に新規導入される『ヴォリックス』は、ヘルメット前方から後方へ流れる走行風を模したよ[…]
風を科学することで生み出されたエアロフォルム 二輪用ヘルメットに求められる性能は、年々高まっています。 安全性はもちろん、長時間走行での疲労軽減、高速域での安定性、さらには街乗りでの快適性まで、多くの[…]
はじめに:“速さ”でなく“スムーズさ” 皆さんは、私、フレディ・スペンサーのことをどういうライダーだと思っているだろうか? 前走者のインに飛び込んだり、コーナーの立ち上がりでホイールスピンを続けるなど[…]
大衆車だが、フィアットの本気が感じられるモデル フィアット131のデビューは1974年のトリノ・モーターショー。スチール製モノコックボディをスリーボックス設計とし、縦置きフロントエンジン、後輪駆動レイ[…]
シンプルだが飽きのこないデザイン。転倒の際の車両の保護も ライダーにとってかゆところに手が届くような、幅広いバイク関連用品を開発・販売するデイトナ。同社がリリースするバイク用カスタムパーツ「アルミビレ[…]
- 1
- 2





































