
ライディングスクール講師、モータージャーナリストとして業界に貢献してきた柏秀樹さん、実は無数の蔵書を持つカタログマニアというもう一つの顔を持っています。昭和~平成と熱き時代のカタログを眺めていると、ついつい時間が過ぎ去っていき……。そんな“あの時代”を共有する連載です。第32回は、スズキの名ネイキッド「バンディット250」を取り上げてみます。
●文/カタログ画像提供:柏秀樹 ●外部リンク:柏秀樹ライディングスクール(KRS)
スズキの良心。4ストマルチ250の最高意欲作
今回紹介するバンディット250は、1989年6月に登場したバンディット400の同時開発モデルになります。
バンディット250は、400から半年遅れになる同年12月に発売されています。
フューエルタンク形状、リアカウル形状、エキゾーストパイプなどに巧みの造形が加えられたほか、ハンドル、ヘッドランプ、ステップ、メーター、ミラーなどの各所にも質感の高い部品を採用しています。マフラーやX型にクロスしたエキゾーストパイプなども、光沢のあるステンレス製がセットされるなど、あの時代の国内4社の中で、最も質感の高いフィニッシュだったと思います。
バンディット250
エンジンは低中速を重視した4サイクル水冷4気筒DOHCの4バルブですが、吸気系に鋭いスロットルレスポンスで定評のあるスリングショットキャブレターを採用。足回りは路面追従性の高いニューリンク式リアサスペンションを装備しています。
フレームは400と共用。タイヤサイズはフロントが400と同じサイズの110/70-17。リアは400の150/70-17に対して、250は140/70-17とワンサイズ細いタイヤを選定しています。
初代はイメージカラーとも言えるイタリアーノグリーンを筆頭に、マーブルピュアレッド、ブラックの3色を展開。しかもコストアップを承知でフレーム色までタンクカラーに合わせたものでした。さらにサイドスタンドまで、フレーム色と同じカラー設定という徹底ぶり。グリーンとレッドカラー車には、走りがより鮮やかに映るホワイトのホイールを採用しています。
1980年代末期は、250cc4気筒ネイキッドの時代
この当時、1980年末期のバイク界では、カワサキのゼファーの登場を外すことはできないでしょう。
過激な走りとハイメカ採用で高価格化していったレーサーレプリカの人気の反動もあって、ゼファーを代表とするネイキッドモデルたちが注目を集めた時代でもありました。
カワサキの4気筒250ccネイキッドといえば、ZXR250系エンジン流用のバリオス。ホンダならCBR250系エンジン流用のジェイド。ヤマハならFZR250R系エンジン流用のジールが発売されています。
いずれもそれぞれに明確な存在感を放つ250cc4気筒ネイキッドとなっていましたが、なかでもバンディッドはGSX-R系エンジンを流用。もっとも高級感のある仕上げとデザインの独自性、さらに走りの魅力を両立させていたのが、バンディット250だったのです。
1990年4月になるとバンディット250は、セパレートハンドル型の標準車に加えて、パイプハンドルのコンチネンタル仕様(略してコンチハンが一般的)を追加。標準車に対してコンチハンの車体幅は、標準車に対して35mm幅広になっています。標準車の価格は51.5万円、コンチハン車は49.9万円で、コンチハン車の車体色は、ブラックとルージュレッドNo.2の2色、標準車はブラック、ルージュレッドNo.2、プライムグリーンの3色を用意されています。2種類のハンドル設定と豊富なカラー設定を用意することで、より多くのファンの希望に合わせようという「おもてなし精神」が強く表れていたわけです。
1991年5月には、400と同じくFRP製ロケットカウルのリミテッドが登場。フレームマウントされたカウルは、軽量かつ強靭な3層構造のFRP製でした。
クランクケースカバー類はバフ掛け、ホイールはブラック。フレームカラーも専用設定というこだわりぶりも特徴です。ただ、奇抜に見える配色だったためか、当時から超レアな存在。価格は58.5万円でした。
1993年5月発売のバンディット250は、45psから40psへ変更。これは1992年からのメーカー自主規制に適合させたものでした。
40ps化したものの、低中速域を充実させていたことが特徴で、5速は1.315→1,285、6速は1.227→1.150というギア比の見直しで、ロングランでの快適性をアップさせています。
ロケットカウル装備のリミテッドの価格は58.5万円。車体色はルージュレッドNo.2。シリンダヘッド、シリンダフィン、クラッチケース、クランクケースカバーにバフクリア処理がされ、オールステンレスマフラーやリミテッド専用メッシュシートまで、徹底的にスペシャル感をアピールしていました。車重は乾燥156kgから160kg。価格は標準仕様が51.5万円。パールノベルティブラック、キャンディアンタスレッド、プライムグリーンの3色が選べました。
バンディット250リミテッド。
走りと質感を高めた、ニューバンディットが登場
1995年1月に、バンディットは新型に生まれ変わりました。型式もGJ74AからGJ77Aに変更されています。2月には可変バルブタイミング・リフト機構を持つバンディット250Vも追加されました。
250Vのエンジンは、250ccの4サイクル水冷4気筒DOHCのままだが、400と同じくバルブ駆動を直打式からロッカーアーム式に変更されています。この変更は、可変バルブタイミング・リフト機構を取り入れるためでした。
約9500回転までは低中速系のカム、それ以上は高速系カムが作動するこの機構の名称は「VC」と呼ばれています。ほかにもキャブはそれまでのBDST30からBST29に変更、ラジエターやエキゾーストパイプの形状も変更されています。
このような可変バルブ式を250ccクラスにも採用したことは他社では例がなく、実に画期的なことでした。スズキのバンディットシリーズへの注力ぶりをみてとれる部分だと思います。
外観は、従来のスタイリッシュなイメージを巧みに継承しながらディテールまわりを一新されています。
まずはフレームは、一見では大きく変わっていないように見えるのですが、新たに250専用設計となっています。ホイールベースは1435mmから1415mmへ、20mm短縮。車重は従来型より10kgの軽量化を達成しています。V仕様は、ハイメカエンジンのため標準車より2kg重い乾燥重量146kg。ただ、10kgの軽量化といってもセンタースタンド標準装備だった旧型に対して、新型はオプション装備になっています。
250Vはエンジンのシリンダヘッド部が赤色になったほか、セパレート型ハンドルを廃止して、すべてコンチハンタイプになっています。タンク形状も変更され、タンク容量は14L→15Lへアップ。エアプレーンタイプの燃料給油キャップは、タンク上面の右側からタンク中央のオーソドックスな位置になっています。
前後のフェンダー形状も一新され、前後輪はラジアルタイヤを採用。リアタイヤは140から150になっています。フロントフォークも変更され、アルミ製スイングアームを採用。灯火類はテールレンズが一新され、テールランプとブレーキランプを新たに「分割点灯」としました。
特殊サチライトメッキの砲弾型2連メーターの文字盤は、従来はクリームホワイトで速度計とタコメーターの針はエンジン停止停車時に真下に向いたスタイリッシュなタイプでしたが、新型の文字盤はブラックに変更されています。針のレイアウトも一般的な左下部位置に速度ゼロ、エンジン回転ゼロの針の配置でした。常用速度域とエンジン回転域を考えれば、新型の方が見えやすいという合理性があるものの、雰囲気としては従来型の方が好ましく感じています。
ともあれ新しいバンディット250は、一層の軽量化とスポーツ性を向上させただけでなく、シート高を5ミリ低減し、ハンドル切れ角も32度から35度へ変更することで、取り回し性を向上させています。
わずか3度のアップと思われるかもしれませんが、Uターンなど取り回し性が大幅に改善。具体的には従来型の回転半径2.9mは、2.7mに向上しています。余談ですが、従来型はハンドルを左右いっぱいに切ったフルステア状態では、グリップ部分とタンクのクリアランスが非常に狭くてタンクに指が挟まれやすかったのですが、これも改善されています。コンパクトターンでは非常に扱いやすくなりました。
新型は5mm下げたシート高を含め、ライディングポジションも見直していて、シート下には新たに4Lの収納スペースも確保されています。さらにセンタースタンドをオプションで用意するなど利便性もアップしています。
車体色にマッチしたフレームカラーを設定。バンディット250Vはフロリーナイエロー、マーブルイタリアンレッド、パールノベルティブラックの3色で価格は53.8万円、バンディット250はキャンディアカデミーレッド、ディープパープルメタリックの2色で49.9万円でした。
1997年、バンディット250は最終型へ
ベースモデルとVの2種類に加えて、ビキニカウル装備のVZを追加しました。一般的にビキニカウルといえばハンドルマウント型となりますが、カウルの質量を感じない軽快な操縦性でありつつ乱流や荒れた路面などでも操舵に影響の出ない作り込みが印象的でした。
車体カラーの設定は、49.9万円のベースモデルと53.8万円の250Vは、キャンディアンタスレッド、パールノベルティブラック、キャンディダスクブルー、フラッシュシルバーメタリックの4色を用意。55.5万円のVZは、マーブルイタリアンレッド、パールノベルティブラック、パールノベルティブラック/マーブルアステカオレンジの2トーン、フラッシュシルバーの4色になります。
赤系モデルはフレームも赤、シルバー系はシルバー、ブラック系はブラック、ブルー系はブルーのフレームというこだわりもキープしていました。
そしてバンディットは、どのグレードのモデルも燃料タンクにお洒落な書体の立体エンブレムがセットされています。
1997年に登場した最終型バンディット。1999年にバンディット250シリーズは生産終了となっている。
バンディット250VZはビキニカウルを装備。
スペック表と12台のラインアップは3グレードで、それぞれに4種類のカラーを用意。
400と同時開発で生まれながら、250としてのチープ感を感じさせないフィニッシュと走りはスズキの熱意を感じる作りになっていました。
1995年に250専用設計のフレームを手に入れてから、バンディット250はますます走りに磨きがかかりつつ、利便性もアップしました。250ccクラスのネイキッドで、ここまで大幅な改良やバリエーション展開を継続してきた機種はありません。
250ccクラスは車検不要で維持費が安く済む反面、チープな外観にパワーも今ひとつというイメージが支配的でしたが、バンディット250はそんな常識を覆す強い存在感を放っていました。外観と走りの両面で改良に改良を重ね続けた、まさにスズキの良心というべき250cc4気筒ネイキッドだったと思います。
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