
F1界隈を相手取って訴訟を起こしたフェリペ・マッサには驚かされました。が、その裁判費用を捻出というわけでもないでしょうが、愛車のラ・フェラーリが売りに出されています。全世界499台(後にチャリティ用で1台追加)というレアモデルですが、スクーデリア・フェラーリ卒業祝いということで、マッサが手に入れたのはさらなるスペシャライズが施された世界にただ1台というお宝。それにしても、どうしてマッサは貴重なモデルを手放すことにしたのでしょうか。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys
世界限定499台、ハイブリッドシステムを採用したラ・フェラーリ
ラ・フェラーリはフェラーリが2013~2016年にかけて限定生産した、ハイブリッドシステム「HY-KERS」を搭載する最高峰のハイパーカー。同社にとって初の市販ハイブリッドモデルということになりますが、元をただせば2010年に、599GTBフィオラノをベースにした実験車両「599 HY-KERS」も誕生しています。
ハイブリッドというと「なんだ、プリウスと同じか」と誤解されがちですが、ラ・フェラーリはF1のキネティックシステムに連なるもので、走行中に発電・蓄電する仕組み。外部からコンセントで充電する「プラグインハイブリッド(PHEV)」ではありませんので、誤解のなきよう。
ラ・フェラーリは2013年にフェラーリが市販車初のハイブリッドモデルとして、世界限定499台で発売したハイパーカー。
F1パイロット、フェリペ・マッサに送られた特別な1台
搭載ユニットは6.3リッターV 12のNAエンジンに、駆動用モーター1基と補機・充電用モーター1基という構成。エンジンが800ps、駆動モーターが150~163psを発揮して、合計1000ps弱というスペックを誇ります。駆動モーターの役割は前述の通りF1の「MGU-K」に相当し、加速時のパワー補助と制動時のエネルギー回生(発電)を同時に行うとされています。すでに10年以上前のハイブリッドカーですが、0-100km/hは3秒以下、0-200km/hも6.9秒という超絶俊足を誇ります。また、大パワーに物を言わせた最高速も355km/hを記録しており、フェラーリという車名に恥じないパフォーマンスに違いありません。
6.3リッターV12とモーターを合計すると最大963psを発揮。0-100km/h:3秒以下、最高速は355km/hをマークしています。
マッサは2013年末にウィリアムズへと移籍しており、このラ・フェラーリがはなむけとして贈られたのですが、実際はフェルナンド・アロンソとともに開発段階から協力しており、テスト走行やドライビングポジションの設計に深く関わったことが伝えられています。無論、約10年にわたるスクーデリアへの貢献に対する「記念品」としての意味合いもあり、それは数々の特別仕様に反映されました。
フェラーリでF1パイロットを務めたフェリペ・マッサがオーナーだったものの、ブラジルへ帰国する際に手放しています。
例えば、ネロ(黒)のボディカラーはスタンダードながら、フロントスプリッター、サイドスカート、ミラー支柱などに加えられたロッソ・コルサ(赤)のピンストライプはマッサだけのスタイル。そして、一般では手に入らないFXX-K用のホイールを装着しているのも見逃せません。さらに、車内には当時の社長だったルカ・モンテゼーモロが贈ったプレートが添えられるなど特別感にはきりがありません。
スタンダードの黒いボディに、赤のラインをあしらっているのがマッサ向けの特別仕様。
故郷ブラジルに持ち帰ろうとするも、立ちはだかった障壁…
実際、マッサはモナコに住んでいた際はラ・フェラーリを惜しみなく乗り回し、およそ4000キロの走行を刻んでいます。数々のインタビューでも愛車に触れており「これ以上のクルマはない」と相当な気に入りようだったので、誰もがブラジルへの転居の際も持ち帰るものと信じていたはず。けれども、モナコで売却したのはブラジルの税制にウンザリしたから。たとえ中古車であろうと、ブラジルは輸入車に対して車体価格に倍するような課税がなされるため、マッサは泣く泣くあきらめたと伝えられています。いくら巨万の富を得たといっても、経済合理性に背くのはマッサとて同じということ。
手放すことをとても悔やんだとされており、マッサのサインもどこかしら投げやりなニュアンス(笑)
おかげで、貴重な限定版フェラーリが市場に放出されることになったのですが、オークションでの指し値は450万 から500万ユーロ(約8億3000万~9億2000万円)と飛び出した目玉が戻ってこないレベル。もっとも、世界に1台に等しいラ・フェラーリ、しかもマッサのサインまで入っているとなればこれくらいは当然かもしれません。
8~9億が指値とされているものの、専門家によれば落札価格は10億を上回ることが予想されています。
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