
「ファンティック」というバイクをご存知だろうか? イタリア・トレヴィーゾで創業し、トライアルの世界では1980年代中盤にチャンピオンを数多く獲得した歴史あるオフロードブランドだ。今回はそんなファンティックの考える「スクランブラー」についてモータリスト代表の野口さんに聞いてみた!
●文&写真:モータリスト ●まとめ:高橋祐介 ●BRAND POST提供:MOTORISTS
ファンティックの考える「スクランブラー」とは!?
ファンティックの代表車種「キャバレロ」はスクランブラーと呼ばれるスタイルですが、野口代表はどうお考えですか?
「スクランブラー。スクランブル=緊急発進みたいに捉えちゃう方も多いと思います。もしくは、スクランブル放送みたいな周波数変換を意味してみたり。って、何のことやらさっぱりわかりません。なんでバイクに? 英語の辞書を引くと、よじ登る人、這うようにして登山を続ける人、っていう意味もあったりします」
1974年 | CABALLERO Regularity125
「スクランブラーの意味としては、こっちですね。這うようにして、ってなんだかスマートじゃないですが、いわゆる登山家みたいに専用のトレーニングをして、専用の装備でひょいひょいと上がっていくのではなく、手持ちの装具で本格的なところにチャレンジしていくイメージっぽいです」
まさに言葉通りの車両ってコトですね! 見た目も、オフロードはもちろんですがロードでも似合っています。
「いいトコロに気づきましたね。まさにロードバイクを改造して、スクランブラーになっています。最初からオフロード走行を意識して作られたバイクではなく、ロードバイクをベースに、サスペンションを長くしたり、ブロックタイヤ付けてみたり、マフラーをサイドアップにしてみたりと、オフロードに行けちゃいそうなストリートバイクに仕上げたのが『スクランブラー』なんです。世の中にスクランブラーを名乗るオートバイは結構たくさんありますが、そのほとんどのモデルが由来どおり『オフロードを走れなくはないけれど、そもそもオンロードモデル』です」
そうしたら、キャバレロにもベースのモデルがあるのでしょうか? 元になるストリートモデルがありそうですけど、ラインナップ表を見ても出てこない……。
「ところが!ファンティックのスクランブラーは一味違います。まず、ベースとなるストリートモデルがありません」
1969 | CABALLERO Cross50 / 1971 | CABALLERO Cross Strada100
1976 | Caballero Regolarità125 / 1978 | Caballero50 Mik26
「スクランブラーとして生まれ、スクランブラーとして生きていく。もう、これだけで惚れちゃいますね。一本筋の通った男です。『なんなのそれ?』って、はい! オフロードは、ついでや可能性ではありません。本格的なオフロードマシンに全く引けを取らずに、しばしばそれ以上にオフロードを存分に駆け巡ることのできるスクランブラーが、ファンティック・キャバレロです」
スクランブラーを名乗る、すべてのモーターサイクルが『ごめんなさい』したくなるほどに、オフロードに本気のスクランブラーがキャバレロだ。
2019〜 | CABALLERO Scrambler500 50th Anniversary / 2018〜 | CABALLERO Rally500
スクランブラー「キャバレロ」の優れたオフロード性能の秘密
2018~ | Caballero Scrambler500
「しかしながら、キャバレロは『オフロードモデル』ではありません。『ストリートモデル』です。ストリートも走れる『オフロードモデル』、というわけでもありません。むしろ、並のネイキッド・モデルよりはるかに敏捷なハンドリングとバランスに優れたシャシーが、サーキットでさえも軽々とこなし、毎日愛車を走らせるアスファルトでネガを全く感じさせません。ファンティックのディーラーさんにはキャバレロでサーキットを存分に楽しんでいらっしゃる方が少なからずいらっしゃいます」
Photo:Moto Megane | www.motomegane.com / Special Thanks To Trentasette37 | CABALLERO Scrambler500
サーキットのような場所でもキャバレロは楽しく走れるのですね! 意外でした!
Photo:Moto Megane | www.motomegane.com / Special Thanks To Trentasette37 | CABALLERO Scrambler500
「500㏄の単気筒は非力ですが、バランスの優れた車体が素晴らしいコーナーリングを楽しませてくれるばかりか、右手に忠実にレスポンスする小気味よいエンジンが、モーターサイクルの愉しみはパワーだけではないことをよく教えてくれるのです」
ライダーがキャバレロの性能を活かしきって楽しめるバイクってことでしょうか?
「ファンティック・キャバレロ・スクランブラーの魅力はそこにあります。キャバレロは、文字通りどこを走っても、そのジャンルに特化して作られたモデル以上に楽しいのです。そんなバイク、あります?無いですよ。いやホントに、ないです。楽しいバイクは世の中にたくさんあります。素晴らしいバランスのバイクも、サーキットを走らせたら絶品のバイクも、ツーリングたまらないバイクも、オフロードなら任せとけなバイクもあります。でも、そのどれもを平均点よりはるかに高いレベルでこなせて、しかもそれは無理やりではなく、楽しい。それが、キャバレロです」
見た目はごついけど、驚異的に軽くて、ちょっと長めのストロークを持つサスペンションがしなやかに路面をとらえて、いつどんな時も乗り手を裏切らないインフォメーション豊かなフィードバックを与えてくれる。最高のバランスの持ち主が、キャバレロなのです。
「だから、まず乗ってみてください。バイクに乗ることがこんなに気軽で、こんなに楽しいなんて。びっくりして言葉を失い、そのうち口元が緩み始める。そんなバイク、キャバレロを置いてほかにはないですから」
オフとオンの両立を目指したこだわりのスタイリング!
オフロードバイクと違う部分が多いですが、スクランブラー「キャバレロ」のディティールはどう考えられていますか?
「ファンティック・キャバレロ・スクランブラーはしかし、乗って楽しいだけではありません。見た目は重要です。美しいスタイリングは、いつまでたっても飽きません。特にマシンやや斜め後方から眺めた時の、例えば右側なら2本出しのマフラーとサイドカバー、そこから立ち上がるフューエル・タンクのラインの美しいこと!」
ファンティックは、「足つき」のためにタンクを絞り込む、という手法は取っていません。カタログを開いて、あるいは街に出て走るバイクをよく観察してほしいです!
「タンクの後端やシートの前端、ほとんどのバイクが絞り込まれています。タンクのニーグリップ部分にはラバーが貼られていたり、膝を入れやすいようにキャラクターラインが立ち上がっていたり、シートを深く削り込んであったり、と枚挙にいとまがありません。ところが、ファンティックではこれら一切と無縁です。
一見ごつく見えるスタイルはライディングポジションをとってみれば極めて自然で、しかもコンパクト。
デザイナーのこだわりがスゴイのですか?
「まず、こんなバイクを作りたい!というデザイナーの強い気持ちがあり、マーケティングが合意し、生産技術が認めないとこんなバイクは作れません。だからといって、デザイン優先で乗れないバイク、ということは一切ありません。ふくよかで美しいカーブを描くタンクでも、またがってみれば膝の開きは自然で、乗り手に苦痛を強いることなど一切ありません」
タンクやシートのキャラクターラインとが一致するように美しくスタイルされています。
「例えば、赤いボディにはシルバーのアクセントがあちこちに用意されていますが、フロントフォークのシルバーからラジエーターシュラウド、サイドカバーのアクセントとすべてがバランスをとって用意されています。デザインが破綻していないからいつみても自然で気持ちがよく、不快感がないから長く楽しめるのです」
ファンティックらしいクオリティと軽さ
性能面といった部分ではどんな所が特徴的でしょうか?
「キャバレロの軽さも大きな特徴のひとつです。重量は、スクランブラー500はわずか150㎏(ガソリン抜き)。余計なものを削り、モーターサイクルが持つ本来の動力性能を楽しみ、使い切る。450㏄のシングルエンジンは十分にパワフルですが、決して速いバイクではありません」
「けれども、使い切る楽しさに満ちているうえ、使い切ればバカにできないほどのスポーツ性能を発揮することが可能です。私たちは全くのノーマルのキャバレロでエンデューロレースに出たり、サーキット走行を行ったりと様々に楽しんできましたが、それでバイクが音を上げるようなことが無かった、ということは特筆しておきたいですね。」
削り出されたパーツの形が複雑な形状をしている部分もありますね。これもデザインのこだわりですか?
「まさにイタリアン・クオリティと、所有感あふれる作り込みも大切なポイント。ファンティックは、イタリアで50年以上の歴史を誇るメーカーであり、資本も含めてオール・イタリアであることもその自慢の一つです。これはファンティックにとっては非常に重要なことなのです」
「主要な部品もほとんどがイタリア生まれ。特に所有感をそそるアルミ切削仕上げのフォーククランプやトップブリッジ、シャシーの肝であるスイングアーム・ピボットを構成するプレートにもアルミ切削仕上げとするあたり、コスト度外視といってもいいほどの美しさですね」
各部にはこだわり抜いたデザインのパーツが装着される。アルミ切削仕上げのフォーククランプやトップブリッジ、スイングアーム・ピボットを構成するプレートにもアルミ切削仕上げ。
「さらには、マフラーのヒートガードもドライカーボン製だったりと、手を抜くところがない仕上がりは、長くキャバレロと付き合えるポイントでもあります」
「とにかく見ていて飽きない、ご飯食べられちゃう美しさがキャバレロですが、もちろんきれいなだけのバイクならほかにも幾らでもあります。キャバレロよりはるかに高額のオートバイは世の中にあふれていますからね。でも、キャバレロならではの楽しさは、エンジンをかけた瞬間から伝わってくるのです」
エンジンの見た目は、まるで最新のモトクロスレーサーのような形状ですね。
「この450㏄のシングルエンジンは、スターターボタンに手を触れるだけで軽いクランキングで目覚めます。ARROWのマフラーからは、ほどよく消音されつつパルス感にあふれた小気味よいサウンドが流れます。これはライダーの気分を掻き立てますね。ひとたびアクセルをひねると『おぉ!』びっくりするくらいのレスポンスの良さ。モトクロッサー向けに開発したルーツを持つエンジンで、ショート・ストロークです。キャバレロのエンジンの最大の魅力の一つが、このレスポンスの良さにありますね」
マフラーのヒートガードもドライカーボン製だ。
「アクセルを持つ右手に意思を込めれば、ライダーの思うがままに動き出す、最高のマシンです。内燃機関にありがちなドロッとした鈍いレスポンスとは無縁のアクセラレーションは、スポーツライディングが大好きな乗り手を虜にさせてくれます」
「それだけ聞くとちょっと『過激でやんちゃな感じ?』いえいえ、単気筒ならではのパルス感と、しっかりと大地をつかむトラクションを楽しみながら、ゆっくり走ることも全く苦にしないフレキシブルさが、このエンジンの魅力でもあります」
「このトラクション力こそが、林道を走る楽しさでもあり、レースでさえもこなせるほどのオフロード走破力にもつながっています。レスポンスの良さは地面を掻きそうに感じるほどですが、むしろトラクションがよく、確実に地面をつかむことで前に進んでいくスクランブラーなのです」
キャバレロのバランスを取れた車体特性
サスペンションや足回りはオフロード向けのセッティングなのでしょうか?
「走り出すとすぐ感じる、上質なサスペンションになっています。一見何の調整機能もないサスペンションですが、初期はよく動き、ボトムではしっかりと踏ん張ってくれるよくできたサスペンションです。これに何の不満があるの、っていうくらいしっとり」
「もちろん、激しいオフロードでの走りや、サーキットでのフルブレーキングにも耐えられるようにちょっとばかり高荷重の設定にはなっていますが、だからこそ底付感もなく、どんなシチュエーションにも合わせられる不思議なサスペンションです」
「その足回りに支えられているのが、バランスの良いシャシーです。クロモリ製のフレームは、硬すぎずしなやかで、オートバイがきれいにピッチングして良く動いてくれるのをしっかりと受け止めます。バイクがバランスの乗り物であることを文字通り全身で表現するように仕上げられている肝が、このフレームといっていいでしょう」
「キャバレロの全方位楽しめる素晴らしさは、まさにこのバランスの良さにあります。だからいつ乗っても楽しいし、引っ掛かりのない、楽しさだけが気持ちよく残る印象につながるのです」
全方位で活躍できるファンティックのキャバレロ
「スタイルから入っても、エンジンから入っても、どこからも隙が無いほどに楽しい。これがキャバレロです。味わえば味わうほど、他に似たものがないことに気づいていただけるはず。排気量ヒエラルキーからも解き放たれて、本当に楽しくて、自分の使い方に合った万能なマシンが欲しい方なら、必ず共感していただけるモーターサイクル。それがキャバレロなんです」
「キャバレロの沼に、ぜひはまりに来てください。まずは試乗しましょう。そして、一緒に旅に出ませんか?」
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