
旧くからのファンにはモリワキマシンの代名詞とも語られる「モンスター」。独自のチューンで究極的なパワーを発揮するカワサキZエンジンをオリジナルのスチールorアルミフレームに搭載したレーシングマシンだ。ここでは1981年鈴鹿8耐の予選で後の世界王者・W.ガードナーが驚異的なラップタイムを叩き出したゼッケン14号車を紹介する。
●文:伊藤康司(ヤングマシン編集部) ●写真:真弓悟史/モリワキエンジニアリング
常識を塗り替えた最強の空冷Z
いまやレーサーやスーパースポーツ車はもちろん、スポーツネイキッドでもメジャーなアルミフレーム。しかしその源流は、いちコンストラクターが作ったマシンにあった…。
モリワキエンジニアリングは創業時、親族関係にもあったヨシムラの製品開発や製造を請け負い、その後もカワサキZ1のエンジンチューニングやフレーム補強を行ってきた。頑強なZ1のエンジンはさまざまなチューンに耐え、モリワキはステージ3から手がけ、オリジナルの鋳造ピストンやカムシャフト、ハイリフトや高回転に対応したインナーシム式のタペットなどで、当初から120ps以上、最終的には160psも達成。
こうしてモリワキZは“怪物”と呼ばれる速さを発揮したが、このパワーに車体が追い付かない。そこでSTDフレームの補強を経て、1979年にクロモリ鋼管のオリジナルフレーム車“モンスター”が誕生する。この進化版が、1981年に登場した大型二輪車で世界初となるアルミフレームの第2世代モンスターだ。
こうして最強の空冷Zエンジンとアルミフレームが合体したモンスターは、1981年の鈴鹿8耐予選でW.ガードナーが駆り、ワークス勢やヨシムラをも突き放す驚異的なラップタイムを叩き出した。巨大な空冷エンジンや武骨なスタイルから“猛牛”とも呼ばれたが、ディメンションや重量は最新スーパースポーツにも引けを取らない。時代の先端を駆け抜けた怪物がここにある。
【1981 MORIWAKI MONSTER】
モリワキは世界で初めて大型二輪車用のアルミ製フレームを開発し、レースに投入。#14のW.ガードナーが、1981年の鈴鹿8耐の予選で2分14秒76という、前年のポールタイムを3秒近く縮める驚異の走りで、ポールポジションを獲得した(決勝は転倒リタイヤ)。車両は1988年にレストアされ、マフラー/フロントホイール/外装デカールなどが1981年当時とは異なる。
正面から見ると、クランクケースの幅広さに驚く(アッパーカウルより幅広)。バンク角を稼ぐために下辺を落としている。ヘッドライトはシビエのイエローバルブ。前輪のみ溝付きタイヤを履いているが、本来は後輪同様にダンロップのスリックで、サイズは前輪3.25/4.50-18/後輪3.75/6.50-18。
ホイールベースは1400mmでキャスター角は25.5度と立っており、燃料/オイル/バッテリーを除いた状態の車両重量は166kg(すべて後年に計測した実測値)。数値上は現代のスーパースポーツに近いディメンションで、かつコンパクト。アルミ製の燃料タンクはシート下の予備タンクと合わせて容量24L。
アルミパイプとプレートが織りなす究極の造形美
ステアリングのステム付近はSTDと大きく異なるパイプワークで、補強も入る。すべてがアルミで作られたスイングアームピボット部のパイプ連結や補強のガセット、さらにはヒールガードまで、もはや工芸品のような形状と溶接痕だ。初期のモンスターのスイングアームは角パイプのみだが、1981年からスタビライザーを追加。アクスル軸の固定も強固だ
APロッキードの2POTキャリパー+φ295mmディスク。フロントフォークはモリワキ・カヤバのφ36mm径。フロントホイールはダイマグだが、レース当時はリヤ同様にビート製だった。
空冷2バルブで160ps! 限界チューンのステージ4
Z1000のクランクケースにZ750のシリンダーをセットし、オリジナルのφ69.4mmピストンで998.6cc。ステージ4チューンで約150psを発揮する。
若き日のワイン・ガードナーと森脇護氏。マシン開発の技術力もさることながら、護氏は才能のあるライダーの発掘にも長けていた。
【1981 MORIWAKI MONSTER】
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(モリワキエンジニアリング)
名車Z2の面影を宿す。空冷4気筒エンジンを搭載したゼファー750の普遍的な魅力 レーサーレプリカ全盛の時代に「バイクらしさ」への回帰を掲げて登場したのがゼファーシリーズだ。そのナナハンモデルとして19[…]
スーパースポーツ譲りの心臓と流麗なフォルムを持つCB1000F カスタムパーツの真価を知るには、まずベース車両の素性を把握しておこう。2025年11月に発売されたCB1000Fは、最高出力124psを[…]
衝撃を逃がすモリワキの専用パッド まずはベース車両について振り返っておこう。2025年11月に発売が開始されたCB1000Fは、最高出力124psを発揮する水冷直列4気筒エンジンを搭載。低回転から高回[…]
待望のホンダ・ネオクラシック 124psを発揮するスーパースポーツ譲りの999cc直列4気筒エンジンを搭載し、2025年に満を持して登場したホンダ「CB1000F」および上級仕様の「CB1000F S[…]
新生CBのスポーツ性を示すイメージリーダー まだ市販車が登場していないにもかかわらず、2025年の大阪/東京モーターサイクルショーのホンダブースにはCB1000Fコンセプトのフルカスタム車が展示されて[…]
最新の関連記事(レース)
まさに最強の盾と矛! ヤマハの本気度がヤバい ホルヘ・マルティン: 言わずと知れた2024年の世界王者。その圧倒的な一発の速さと、限界を超えて攻め抜くメンタリティは、現在のMotoGP界でも間違いなく[…]
小椋藍が最高峰で魅せた!王者マルケスを脅かす「25歳」の覚醒 MotoGP第9戦は小椋藍選手がポールポジションを獲得し、スプリントレース、決勝レースともに2位という素晴らしい成績を収めたレースです。決[…]
小椋藍、チェコGPで日本人6年ぶりのPPを獲得。フィニッシュでも2位! 見えてきた「夢の頂点」への課題 小椋藍選手(SuperFile Trackhouse MotoGP Team)が大活躍したMot[…]
今年に入ってからの成長速度は拍車がかかっている 2026年シーズン、開幕から長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)が好調を維持している。もてぎで2位。SUGOで4位と[…]
伝説のチューナー「スーパーモンキー」 東大阪市に拠点を構えていたチューニングショップ「スーパーモンキー」は、ミニバイクという小さな世界において極限性能を追求した異端の存在だ。その頂点に位置するのが「ス[…]
人気記事ランキング(全体)
【魅力1】30年ぶりの4気筒フルカウルに最新「Eクラッチ」を融合 「4気筒の高周波サウンドを響かせながら、風を切って走りたい」。そんなフルカウルファンの渇望を満たすCBR400R FOUR E-Clu[…]
繊維強化プラスチック×高密度リブで「軽さと強さ」を両立! まず注目したいのが、そのタフな骨格だ。 トッププレートには高強度の繊維強化プラスチックを採用。裏面には緻密な高密度リブ構造を巡らせることで、積[…]
【魅力1】新設計4気筒エンジンと「Eクラッチ」の融合によるイージースポーツ 「あの甲高いエキゾーストノートをもう一度味わいたい」。そんなライダーたちの熱い想いに応えるように、ホンダは完全新規の直列4気[…]
再現という行為の本質 第18回モンキーミーティングの会場には数多のモンキー系カスタムが集まり、綺羅星のごとく会場を埋め尽くしたカスタムモンキーの中に一際目を惹く1台があった。 それは伝説的名車であるホ[…]
青春のバイブル『バリバリ伝説』と憧れの「しび子ちゃん」 しげの秀一氏が描いた『バリバリ伝説』は、単なるモータースポーツ漫画にとどまらず、一つの時代を象徴するバイブルだった。アマチュアの峠の走り屋から、[…]
最新の投稿記事(全体)
チェーンの清掃と注油はやや難易度が高いセルフメンテナンスかもしれませんが、道具を揃えてやり方を覚えれば愛車のコンディションをいつでも良好に保つことができます。今回はチェーンのメンテナンスの必要性とメン[…]
未踏の地へ。30Lタンクを備えた「V4 ラリー」の絶対的安心感 長距離ツーリングの最中、「ガソリンスタンドが見つからない」「足つきに不安がある」とストレスを感じた経験はないだろうか。 V4 ラリーは、[…]
再び「ラバゲイン」です これまでカチコチ硬化したゴム部品を救ってきましたが、今回も・・・結論から言っちゃうと、やっぱり無双してくれちゃいました。効果絶大、絶対無比。向かうところ敵ナシ。 もちろんラバゲ[…]
開店休業状態のランボとBMWがタッグを組むのだが… M1をざっくり説明すると、1976年にBMWがグループ4/5に参戦可能なマシンの開発に乗り出し、当時の趨勢(すうせい)だったミッドシップを画策。とは[…]
30kgフル積載でも余裕の登坂力。EVがもたらす極上のトルク 「荷物をたくさん積んだ状態での坂道発進は、どうしてもパワー不足を感じてしまう」。そんな配達現場のリアルな悩みを、ギアレヴはモーターの圧倒的[…]
- 1
- 2



















































