
ヤマハは大阪モーターサイクルショーで、最新ヘリテイジスポーツの「XSR900」をカスタマイズした車両×4車を展示。基本的には同じカウルキットを装着しているが、カラーバリエーションやカスタム深度がそれぞれ異なる。反響次第で発売される可能性は高そうだが──。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:藤村のぞみ ●外部リンク:ヤマハ
これぞヤマハのヘリテイジ=未来に残すべき遺産を有効活用したカスタム!
ヤマハが大阪モーターサイクルショーに展示したXSR900カスタムが多くの来場者の目を引いている。スタンダードの黒にビキニカウルを組み合わせたもの、1980年代のWGPマシンを彷彿とさせる白×赤、同じくゴロワーズカラーをイメージさせる青、そしてチヂミ塗装など市販は難しいかも? と思わせる特別な黒(ゼッケン9が目印)の4車だ。
カウルやシートカウル、タンクカバーについては純正オプションとしてカラーリングも含め発売を検討中とのことで、いずれも魅力的な外装キットになりそうだ。
一方で特別色の黒は、さすがにカスタム提案ということのようで、クランクケースの塗装やチヂミ塗装といった新しい技術を取り入れて、ベテラン層も楽しめるバイクを提案しているという。
大阪モーターサイクルショーの現地では開発者にお話を伺うこともできたのでお届けしたい。
カウルキットはRZ-Rをイメージ
──このカウルキットの企画があってそれぞれの車両が作られたようですが、その狙いどころとは?
「初代XSR900のアクセサリーとしてワイズギアの初代RZカラーのものがありました。このXSR900は2代目になるということで、血筋を辿っていくならばRZ250/350Rにするべきかな、と」ヤマハ発動機カスタマーエクスペリエンス事業部の田中佑樹さん(以下 田中さん)
──なるほど、RZ-Rのイメージなんですね。
「はい。といいつつも、このXSR900カスタムも我々の歴代のバイクが保管してあるバックヤードに持ち込み、それら歴代レーサーモデルなどを見ながら、RZの色をオマージュして作り上げました。この白と赤は、今では量産車に使われていない色でして、それを社内の技術で復刻したものなんです。それでタンク、サイドカバーなど全部塗りまして。
2020年に出した60周年カラーの白とはまた違って、1980年代の温かみのある、少し黄色がかっている白なんです。そして赤も、少しオレンジっぽい赤を採用しています」(田中さん)
──初代XSR900 カスタムキットのRZカラーとは違うんですね。たとえばRD400のデイトナとか、そんなイメージでしょうか?
「まさにその頃の白です。RD、RZ、最後に採用していたのはFZR400だったと思います。白はニューパールホワイト、赤はヒートレッドという名前です」とは西村慎一郎さん(同じくカスタマーエクスペリエンス部・以下 西村さん)
──過去にあってしばらく途絶えていた色を改めて使ったと。
「発色のさせ方は当時のレシピのままを再現しています。ただ、この先たくさん使うかわからない色を当時のレシピで作ってくれというのは交渉が必要でした」(西村さん)
──なるほど。そこまで考えて作り上げたとなると、外装キットの発売の可能性は高いんじゃないかと勘繰りたくなりますが……
「モーターサイクルショーでの反響を見て、よければ発売したいと思っています。」(田中さん)
──当時の世代に突き刺さりそうですよね(笑)。
「私は世代ではないんですが、父親にバイクのレースに連れて行かれたこともあって、あの頃の隆盛にアプローチしてみたいと思ったんです。なので父と電話で話しながら(笑)。
父は58歳で、まさしくRZに乗り、次にRZ-Rだったそうです。今回のモーターサイクルショーではXSR125も出展していますが、125のユーザーも900のユーザーも、年齢層は違うかもしれないんですが同じバイクとして繋がれる……っていうのを、今回アクセサリーを通して提案出来たらいいなと思っています」(田中さん)
──テールカウルはRZ-Rというよりも……
「そちらはYZRですね。バキッと切れよく」(田中さん)
「ノーマルのシート自体がYZR500をモチーフとしていますので、それをさらにエラを張るような形として、よりYZRに寄せています」(西村さん)
──西村さんは造形自体には関わっているんでしょうか?
「実は、やっていることも知りませんでした。完成してから彼らの部署に異動してきて、『何? いいのやってるじゃんか』っていう感じで、2個くれないかと……」(西村さん)
──それがゼッケン9の特別な黒に仕上がったわけですね。こちらの車両はカウルキットをプロモーションするためのものなんでしょうか?
「いろいろな意味を込めていますが、お客様の中で『欲しいのは白じゃないな、青でもない、でも黒だったら欲しいかも』みたいな妄想が生まれてくれることを期待しています。また、黒を選ぶ人はファッション感度が高かったり世界観を持っていたりするはずなんですが、メーカーがプッシュする色は派手な傾向がありまして、黒のかっこよさを改めて証明したかったというのもあります。
でも、それらを作るためにやっているのは、色やテクスチャーの変更だけなんです。何か部品を大きく変えたとかはなくて、それでもイメージがガラッと変わるというのを見せたかった。ネジを変えるとか磨くとか、そんな細かく手間をかけるカスタムの面白さを提案したかったんです」(西村さん)
──往年のミッドナイトスペシャルのような……。
「私が商品企画に携わり始めた頃にリスペクトしていた先輩たちがやっていたカラーリングが忘れられない、それがミッドナイトスペシャルでした。50から1100まであって、なんてカッコイイんだろうって。あのイメージを世の中に残す、ミッドナイトの伝承というのが大きなテーマでした。黄色いヘッドライトも昔のシビエのイエローフォグランプのイメージです」(西村さん)
──モーターサイクルショーに来場した方には、ぜひそのあたりを意識して見ていたきたいですね。
艶あり/艶消しブラックに金のラインなど、ミッドナイトスペシャルを強く意識させる仕上がりのゼッケン9号(正式名称はXSR900 Knight of the “9”)。こちらはあくまでもカスタム提案ということらしいが、欲しい! という方も多いのでは。 [写真タップで拡大]
というわけで、反響次第でカウルキットが発売される可能性はありそうだ。欲しい! という方はモーターサイクルショーの会場でヤマハに熱い想いを伝えていただきたい。
YAMAHA XSR900 Customized[白×赤]
YAMAHA XSR900 Customized[青]
YAMAHA XSR900 Customized[スタンダード黒]
YAMAHA XSR900 Customized[XSR900 Knight of the “9”]
喧騒が去る夜9時に走りはじめる、そんなイメージで名付けられた。施されているカスタムは下記。
- アクラポヴィッチ フルエキゾーストマフラー XSR900(スペシャル仕様)
- カウルセットブラック(スペシャル塗装)
- ちぢみ塗装クランクケースカバー
- ちぢみ塗装ウォーターポンプカバー
- ケースカバーボルトのトリートメント
- 特別コーティング フロントフォーク
- フロントフォーク周りスペシャルパーツ
- ドライブチェーン/スプロケットのカラーリング
- ホイールのカラーリング
CIBIEのイエローフォグをイメージ。スクリーンの黄色やヘッドライトガーニッシュもカッコイイ! ラジエターのコアガードやエキゾーストパイプの石綿巻きが1980年代を彷彿とさせる。 [写真タップで拡大]
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