今も絶大な人気を誇る名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はレーサーレプリカ全盛の時代を終わらせ、ネイキッドブームの口火を切ったゼファーシリーズの長兄「カワサキ ゼファー1100」をあらためて紹介する。まずはこの名車の特徴と歴史について振り返ろう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 YM ARCHIVES ●取材協力:バグース! モーターサイクル
- 1 昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得
- 2 400はχに進化したが、750と1100の基本は不変だった
- 3 中古相場は100~250万円:程度はさておき、タマ数は超豊富
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昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得
ゼファーはレーサーレプリカ時代に終止符を打ち、以後のネイキッドの基盤を構築したモデルで、近年のネオクラシックブームの原点と言えなくもない存在。改めて振り返ると、’89年に400、’91年に750、’92年に1100が登場したゼファーシリーズは、日本の2輪史を語るうえで欠かせない名車である。
もっとも、少なくとも400の登場時は、ゼファーに違和感を抱く業界関係者が少なくなかった。何と言っても、アルミツインスパーフレーム/水冷4バルブ/セパレートハンドル/リンク式モノショックが王道だった時代に、ゼファーはスチールダブルクレードルフレーム/空冷2バルブ/バーハンドル/ツインショックという、昔ながらの機構を採用していたのだから。
ただし現実の市場では、常用域の楽しさやカスタムベースとしての資質が高く評価され、ゼファーシリーズは爆発的な人気を獲得。3兄弟すべてが四半世紀に渡って生産が続くロングセラーになり、’00年代後半に販売が終了してからも根強い人気を維持している。
今回の取材に協力してくれたバグース! モーターサイクルは、’10年の創業当初からゼファーを主軸に据えて来たショップで、’19年にはこのシリーズの極上車のみを取り扱う中古車販売店として、ソイルマジックをオープン。2つの店舗の代表を務める土屋雅史さんは、おそらく、世界で最もゼファーシリーズに力を入れている人物だろう。
「ゼファーを取り巻く状況は、近年になって大きく変わりました。まず一昔前のゼファー好きは、“カスタムベース”という意識の人が多数派だったのですが、最近はノーマル指向のユーザーが増えています。また、かつてのゼファーには気軽というイメージがありましたが、中古車価格がどんどん上がってきたため、数年前からはそういう印象は持ちづらくなりました。特に旗艦の1100はその傾向が顕著で、コロナ禍以降は価格が高騰しています」
そう語る土屋さんだが、このシリーズのルーツとなった’70~’80年代前半の空冷Zと比較すれば、ゼファーの入手と維持は容易ではないだろうか。
「確かにそうかもしれませんが、中古車のコンディションが年を経るごとに悪くなったり、純正部品の欠品が多くなったりと、ゼファーシリーズも好調の回復にかかる手間が確実に増えています。初期モデルなら約30年、ファイナルエディションでも15年ほど前のモデルですから、ある程度以上の手間がかかるのは当然のことですけどね」
400はχに進化したが、750と1100の基本は不変だった
既存の空冷ZやGPZ系がリッタークラスを起点としていたのに対して、ゼファーシリーズは400が第1号車。400が大ヒットモデルになったからこそ、輸出仕様の550(’90~’99年)に続く形で、750と1100が登場したのだ。なお兄貴分のエンジンが最後まで伝統の2バルブを維持したのに対して、400は’96年から4バルブを導入したχ(カイ)に進化している。
750と1100で興味深いのは、四半世紀に及んだ生産期間中に、フルモデルチェンジを1度も受けなかったこと。もっとも弱点の対策や排気ガス規制への対応といった仕様変更は行われたし、’96~’03年にはスポークホイールのRSが併売されたのだが、動力性能向上を目的とした刷新はナシ。その事実をどう捉えるかは人それぞれだが、現代の視点で維持の容易さや中古/アフターマーケットパーツの豊富さを考えると、基本設計を変更しなかったカワサキに感謝したくなるゼファー750/1100ユーザーは多いはずだ。
中古相場は100~250万円:程度はさておき、タマ数は超豊富
ネットオークションには2ケタ万円台が存在するけれど、中古車販売店におけるゼファー1100の現在の相場は上記の通り。これは750も同様で、カスタム車になると300万円以上も珍しくない。ちなみに、400は70~150万円、400χは80~180万円。生産台数が多かっただけあって、いずれのモデルもタマ数はかなり豊富だ。
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