
今となってはカングーだのカクタスといったオシャレSUVが人気のフランス車ですが、ちょっと前まではフレンチロケットなどと勇ましいニックネームのモデルがわんさか走っていました。とりわけ懐かしいのは、V6ターボエンジンをリヤに積んで、いかにも空力性能の良さげなボディをまとったアルピーヌV6ターボでしょう。一説によると、打倒ポルシェ911を目指して開発されたというスポーツカーですが、そこはフランス製ということで911とは一味違った仕上がりとなっていました。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
アルピーヌがこだわり抜いたRRパッケージへ
現在のアルピーヌはルノーのスポーツ部門、ルノースポールを吸収合併した「組織」となっていますが、V6ターボをリリースした1984年当時は単純にルノーの子会社という位置づけ。それゆえ、クルマの開発はルノーの判断によったものの、創業当初からのスポーツカー作りはかなり自由に行えたようです。オマージュモデルがあるA110から、A310、そしてV6ターボに至るまで、一貫してRRパッケージにこだわり続けているのがその証しにほかなりません。
前述の通り、アルピーヌはRRレイアウトのスポーツカーを得意としていたのですが、V6ターボは正面切ってスポーツをうたったわけではなく、スポーティなグランツーリズモを目指して開発されています。それゆえの2+2シートであり、リヤシートもそれなりに実用的だったりしています。また、ロータス・エスプリなどが採用していたXボーンフレームの採用もV6ターボのトピックで、スペース効率に優れるのをはじめ、懐の深いサスペンション構築など、GTとしてのキャラを存分に引き出したのでした。
1984年に先代のA310からフルモデルチェンジしたアルピーヌV6ターボ。日本以外での正式名称はアルピーヌGTAターボと呼ばれています。
ポルシェ944ターボと互角か、それ以上の性能
搭載されるV6エンジンはプジョー・ルノー・ボルボ三者共同開発のPRVユニットがベース。SOHCゆえレーシングカーのように極限的なチューンナップには向いていないものの、ターボラグが少なめで、トルクの立ち上がりがマイルドと、実に扱いやすいもの。2458ccから、最高出力200PS/5750rpm、最大トルク29.6kgm/2500rpmと、ポルシェ944ターボ(初期型)の220ps/33.6kgmにさして引け目があるわけではありません。タービンが追加されているので、オイルのメンテナンスには気を遣うべきですが、それ以外はアメ車なみの丈夫さだと言われるほど。ただし、エンジンルーム内の発熱量は注意が必要で、パイプや電装系にダメージを与えることもやぶさかではありません。
FRP製のボディは、かつてフランスに存在した自動車メーカー向けのファクトリー、ユーリエが担っています。当時としては最先端の空力解析を行い、徹底的にフラッシュサーフェス化を施した結果、Cd値0.28と優秀な数値を実現しています。実際、風切り音もほとんど聞こえないため、高速走行は快適そのもの。また、FRPボディは意外なほど重量がかさむものですが、アルピーヌは車重を1210kgにとどめました。944ターボより100kg以上軽いことになり、先の性能差を埋めて十分なものといえるでしょう。
ガンディーニがインテリアのスタイリングを担当。直線基調ながら、どこか優しげなカーブを描いているのが彼らしいスタイルです。
鬼才ガンディーニがインテリアをデザイン
そして、インテリアのデザインは誰あろう、マルチェロ・ガンディーニの力作です。直線を基本としながら、適宜カーブを施す独特なスタイルで、ガンディーニらしく愛着がわきやすいものとなっています。バケット風のシートも座り心地が満点で、普段使いにも、また長距離のドライブにも合っていて、スポーツカーながら「さすがフランス車」と感心することしきり。ただし、当時の欧州車全体に言えることですが、経年劣化によるヒビ割れは避けようがありません。レストアの際は、腕のいい職人を探すのがマストとなるはずです。
およそ5000台弱が生産されたアルピーヌV6ターボですが、世界的に見れば中古車は絶滅危惧種。日本を含め、中古市場に出回っていないわけではないものの、極めて少数であり、かつ程度のいいものは滅多にないようです。ご紹介しているネイビーブルーのサンプルは、日本からアメリカへ渡った中古車で、10年ほど前の落札価格が1万5000ドル(当時のレートで187万円ほど)とかなりのお買い得。今乗っていたら、超絶カッコいいスポーツカーの代表格ですから、苦労してでも探しだす価値は大きいものです。
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