
今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はホンダのCB750フォアについて、メンテナンス上のポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:ベイエリアモータース
ホンダ CB750フォア:経年劣化はあるものの耐久性は十二分
CB750フォアの弱点をネットで調べると、カムチェーンテンショナーの作動不良、シリンダーヘッド下部のシーリングラバーの劣化によるオイル漏れ、燃料コックやキャブレターからのガソリン漏れ、プライマリードリブンギヤのダンパーラバーの劣化、2速ギヤの抜け、スタータークラッチの滑りなどが出て来る。とはいえベイエリアモータースの市川さんによると、これらは必ずしも弱点とは言えないそうだ。
「何と言っても、生産から40年以上が経過しているわけですからね。経年劣化を考えればそういったトラブルは当然のことで、弱点とは言えないでしょう。なお旧車でよく問題になる充電系も、CB750フォアはかなり丈夫ですし、当時としては画期的だったメタル支持のクランク+コンロッドも、耐久性は十二分に確保されています」
同店が面倒を見ているCB750フォアは、ノーマルスタイルを維持している車両がほとんどだが、吸気系と点火系に限っては、アフターマーケット製に変更している車両が存在する。
「ウチの基本姿勢はノーマルで完調を取り戻すことですが、お客さんの希望や車両のコンディションによっては、キャブレターはCRかFCR、点火系はASウオタニのフルトラキットを使用することがあります。ちなみに、この2点に手を入れてセットアップを行えば、ノーマルとは一線を画する、エンジンの潜在能力を引き出せている感触が味わえるのですが、僕としてはマストと言うつもりはないんですよ」
ホンダ CB750フォア パーツ供給:補修部品に関する心配はほとんど不要
生産終了から40年以上が経過した現在でも、実動台数が多いだけあって、CB750フォアのリプロ・中古部品は相当に豊富。ホンダ自身もこのモデルの存続に意義を感じているようで、近年でも数多くの消耗部品を継続販売している。
「精度は純正が一番ですが、純正部品の価格はリプロパーツより高めなので、どちらを使うかはオーナーの予算次第でしょう。なおリプロパーツの中には粗悪品が存在し、僕自身も過去に何度か痛い目に遭ったことがあります(笑)」
ホンダ CB750フォア:メンテナンスポイント
イグニッションコイル:費用対効果ならASウオタニが優勢
コンタクトブレーカー:純正のポイント式でも好調の維持は容易
キャブレター
純正のケーヒンPW28キャブレターをOHする際は、同店ではキースターの燃調キットを使用。「すべての補修部品に加えて、5種類のMJと3種類のPJが入っていることが、キースターさんの製品の魅力です。ヤレが進んだ車両の場合は、純正より濃い目や薄目で好結果が出ることがありますから」 [写真タップで拡大]
シリンダーヘッド
シリンダーヘッドをOHする際は、バルブシートカットに加えてバルブガイドの打ち換えがほぼ必須事項。ステムシールが吸気側のみのK0後期型~K2前期型は、排気側もステムシール対応品に変更することがある。6つの大きな穴を塞ぐシーリングラバーの劣化は、オイル漏れの原因になりやすい。 [写真タップで拡大]
ピストン:オーバーサイズの選択肢はかなり豊富
オーバーサイズピストン(写真は純正)は、数多くのリプロ品が存在。同店で最も使用頻度が高いのは0.25/0.5/1.0mmオーバーサイズが揃う、エムテック中京製で、キットに含まれるリケンのリングは単品販売も行われている。 [写真タップで拡大]
フューエルコック:リペアキットで漏れを解消
オイルタンク:長期放置車は内部に汚れが沈殿
オイルポンプ:徐々に劣化が進む潤滑の司令塔
ドライブスプロケットシャフト:当時ならではのチェーン注油機構
メインハーネス:新車時のままなら確実にカチカチ
レギュレター/レクチファイヤ:ネジの回転で電圧調整が行える
フレーム
フロントブレーキ:独自の調整機構で引きずりを解消
リヤショック:純正スタイルのリプロ品が人気
タイヤ:耐久性に優れるIRCのGS11
カムチェーンテンショナー:調整と消耗品の交換で適正な張りを維持
ヘッドライト:シールドビームからハロゲンに変更
CB750フォアの純正ヘッドライトは、現代の基準だと光量が不足しているうえに、バルブ単体の交換ができないシールドビーム。この問題を解消するべく、いろいろなメーカーがハロゲンバルブ用レンズ+リムを販売している。 [写真タップで拡大]
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