‘70s国産名車 ホンダ CB750フォア 完調メンテナンス【補修部品に関する心配はほとんど不要】

今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はホンダのCB750フォアについて、メンテナンス上のポイントを明らかにする。


●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:ベイエリアモータース

【取材協力|ベイエリアモータース】’03年に創業したベイエリアモータースは、’70~’80年代の日本車を得意とするショップ。最も取り扱いが多いモデルはCB750フォアだが、同時代のCB400/500フォア系やカワサキZシリーズの入庫も少なくない。ウェブサイトには過去に販売した車両の詳細に加えて、多種多様な整備の費用が掲載されている。 神奈川県横浜市西区岡野2丁目12-22 TEL:045-313-9230

ホンダ CB750フォア:経年劣化はあるものの耐久性は十二分

CB750フォアの弱点をネットで調べると、カムチェーンテンショナーの作動不良、シリンダーヘッド下部のシーリングラバーの劣化によるオイル漏れ、燃料コックやキャブレターからのガソリン漏れ、プライマリードリブンギヤのダンパーラバーの劣化、2速ギヤの抜け、スタータークラッチの滑りなどが出て来る。とはいえベイエリアモータースの市川さんによると、これらは必ずしも弱点とは言えないそうだ。

「何と言っても、生産から40年以上が経過しているわけですからね。経年劣化を考えればそういったトラブルは当然のことで、弱点とは言えないでしょう。なお旧車でよく問題になる充電系も、CB750フォアはかなり丈夫ですし、当時としては画期的だったメタル支持のクランク+コンロッドも、耐久性は十二分に確保されています」

同店が面倒を見ているCB750フォアは、ノーマルスタイルを維持している車両がほとんどだが、吸気系と点火系に限っては、アフターマーケット製に変更している車両が存在する。

「ウチの基本姿勢はノーマルで完調を取り戻すことですが、お客さんの希望や車両のコンディションによっては、キャブレターはCRかFCR、点火系はASウオタニのフルトラキットを使用することがあります。ちなみに、この2点に手を入れてセットアップを行えば、ノーマルとは一線を画する、エンジンの潜在能力を引き出せている感触が味わえるのですが、僕としてはマストと言うつもりはないんですよ」

ホンダ CB750フォア パーツ供給:補修部品に関する心配はほとんど不要

生産終了から40年以上が経過した現在でも、実動台数が多いだけあって、CB750フォアのリプロ・中古部品は相当に豊富。ホンダ自身もこのモデルの存続に意義を感じているようで、近年でも数多くの消耗部品を継続販売している。

「精度は純正が一番ですが、純正部品の価格はリプロパーツより高めなので、どちらを使うかはオーナーの予算次第でしょう。なおリプロパーツの中には粗悪品が存在し、僕自身も過去に何度か痛い目に遭ったことがあります(笑)」

【ガスケットはセット品が定番】エンジン関連のガスケットは、純正の1/3~1/2くらいの価格で入手できる、アフターマーケットのフルセットが同店の定番。ただし、純正を希望するお客さんもいるそうだ。

【無番マフラーが一番人気】近年のCB750フォアの排気系の一番人気は、極初期のK0の特徴だった“無番”を再現したリプロ品。ただし、K1以前のHM300やK2以降のHM341、集合式にこだわる人もいる。

【シューの経年劣化に注意】フロントのブレーキパッドとリヤドラムのとシューも、数多くのリプロ品が存在。なおリヤはライニングが残っていても、経年劣化で制動力が低下している個体が少なくない。

【外装はすべて新品が存在】ガソリンタンク/サイドカバー/シート/前後フェンダーといった外装部品は、いずれも純正を再現したリプロ品が販売されている。各年式用エンブレムも複数のメーカーが復刻。

ホンダ CB750フォア:メンテナンスポイント

イグニッションコイル:費用対効果ならASウオタニが優勢

点火系の重要パーツであるイグニッションコイルは、現在でも純正部品の入手が可能で、リプロ品も存在。とはいえベイエリアモータースでは、費用対効果を考えて、ASウオタニ製を選択するお客さんが少なくないそうだ。

コンタクトブレーカー:純正のポイント式でも好調の維持は容易

好調を維持するのが大変…という説があるものの、きちんとした調整が行われていれば、コンタクトブレーカーの点検は1~2年に1回で十分。ポイントギャップの基準値は0.3~0.4mmで、接点が荒れている場合はサンドペーパーで修正。

キャブレター

純正のケーヒンPW28キャブレターをOHする際は、同店ではキースターの燃調キットを使用。「すべての補修部品に加えて、5種類のMJと3種類のPJが入っていることが、キースターさんの製品の魅力です。ヤレが進んだ車両の場合は、純正より濃い目や薄目で好結果が出ることがありますから」

シリンダーヘッド

シリンダーヘッドをOHする際は、バルブシートカットに加えてバルブガイドの打ち換えがほぼ必須事項。ステムシールが吸気側のみのK0後期型~K2前期型は、排気側もステムシール対応品に変更することがある。6つの大きな穴を塞ぐシーリングラバーの劣化は、オイル漏れの原因になりやすい。

ピストン:オーバーサイズの選択肢はかなり豊富

オーバーサイズピストン(写真は純正)は、数多くのリプロ品が存在。同店で最も使用頻度が高いのは0.25/0.5/1.0mmオーバーサイズが揃う、エムテック中京製で、キットに含まれるリケンのリングは単品販売も行われている。

フューエルコック:リペアキットで漏れを解消

ASSY状態での購入も可能だが、CB750フォアのガソリンコックは分解整備を前提とした構造で、アフターマーケット市場では、リペアキット(パッキン/Oリング/ワッシャー/フィルターなどを同梱)が販売されている。

オイルタンク:長期放置車は内部に汚れが沈殿

長期放置車の場合、オイルタンク下部にヘドロ状に変質したオイルやスラッジが溜まっていることが少なくない。清掃後に装着したら、オイルの往復を目視で確認。エンジンとオイルタンクを結ぶラバーホースの劣化にも要注意。

オイルポンプ:徐々に劣化が進む潤滑の司令塔

オイルポンプはトロコイド式で、送りと戻し用、2系統のローターが備わる。分解時にはボディ内部のスラッジをキレイに掃除し、アウター/インナーローターのクリアランスやキズを確認。ガスケット、シール類、フィルターは新品に交換。

ドライブスプロケットシャフト:当時ならではのチェーン注油機構

耐久性が低かった当時のチェーンを考慮して、ファイナルドリブンシャフトには、エンジンオイルを利用した注油機構が備わる。注油量は中央のマイナスネジで調整。ブラインドキャップの圧入で、キャンセルすることも可能。

メインハーネス:新車時のままなら確実にカチカチ

新車時から1度も交換していないなら、メインハーネスは確実に硬化している。このパーツは複数のアフターマーケットメーカーが、各年式に対応する復刻品を販売。スイッチボックスやキーシリンダーもリプロ品が存在する。

レギュレター/レクチファイヤ:ネジの回転で電圧調整が行える

レギュレターとレクチファイヤは別部品で、前者はネジの回転によって電圧調整が可能。アフターマーケット市場では現代的な一体型が数多く販売されているが、ベイエリアモータースでは純正の構造を維持する車両が多い。

フレーム

【駐車時の角度に異変を感じたら要修理】サイドスタンドブラケットも腐食しやすいが、これはCB750フォアに限ったことではなく、旧車ではよくある話。サイドスタンドが曲がっている個体も少なくない。

【転倒で曲がりやすい後部左右のステー】ただしマフラー&タンデムステップステーは、転倒で内側に曲がっていることが多い。また、センタースタンドを固定するパイプは、内部から腐食しやすいようだ。

【剛性を左右する前半部はかなり丈夫】フレームはかなり丈夫。同時代のカワサキZシリーズでよく話題になる、前半部のパイプの変形やガセットの割れ、溶接のハガレなどはほとんど起こらないと言う。

フロントブレーキ:独自の調整機構で引きずりを解消

フロントブレーキキャリパーは、ホンダ独自の左右位置調整機構を装備。逆にこの部分の調整に問題があると、盛大な引きずりが発生する。なおブレーキの補修部品は、現在でもほとんどが入手可能で、ダブルディスクキットも存在。

リヤショック:純正スタイルのリプロ品が人気

リヤショックは純正スタイルを再現したリプロ品が人気。市川さんは過去に最新技術を投入した高性能品を使用したことがあるものの、日常域に適した特性を得るためには、セッティングの大幅な変更が必要になったという。

タイヤ:耐久性に優れるIRCのGS11

最終型K7以外は、F:3.25-19/R:4.00-18という当時の定番サイズだったため、タイヤの選択肢は意外に豊富。同店の推奨品は耐久性に優れるIRCGS11だが、ルックス重視でダンロップF11/K87を選ぶ人も少なくない。

カムチェーンテンショナー:調整と消耗品の交換で適正な張りを維持

カムチェーンの張りを適正に保つテンショナーは、内部のロッドが固着しやすい。なおカムチェーン周辺に使用されている多くのラバーパーツは、経年変化で硬化していることが多いので、OH時にはすべてを新品に交換したい。

ヘッドライト:シールドビームからハロゲンに変更

CB750フォアの純正ヘッドライトは、現代の基準だと光量が不足しているうえに、バルブ単体の交換ができないシールドビーム。この問題を解消するべく、いろいろなメーカーがハロゲンバルブ用レンズ+リムを販売している。

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