新しい仲間との出会いはやっぱり楽しい。バイクという共通のキーワードで出会い、一緒に楽しむ感覚がたまらなく心地よいのだ。『もて耐』参戦のためのエネルギーやコストは途方もないが、みんなの笑顔を見ると、ただただ達成感だけが溢れ出す。決勝後には暑さが吹き飛び、清々しさだけが残った。
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:安井宏充 佐藤洋
チーム31『もて耐』参戦!Vol.1【監督はカワサキモータースジャパンの桐野社長!ライダーは元世界GPチャンピオンの原田哲也さん、マジカルレーシング蛭田社長(71歳!)、他……】の記事は>>こちら
毎晩、作戦会議という名の食事会で結束を高める
僕らのレースの楽しみは昼間だけではない。夜、皆で集まっての作戦会議という名の食事会も大切な場所。ここで初対面の面々が仲良くなる。もちろん燃費の計算をして、作戦などをエクセルの表(『チーム38レジェンド』の齋藤さんが表計算を入れて『カワサキ チーム31』用に作ってくれたもの)を見ながら決めていく。
『カワサキ チーム31』のライター伊藤さんは、これまでも僕(筆者・MIGLIOREディレクター)と一緒にレースに参戦し、チームを切り盛りしてくれる存在。伊藤さんと話を進めていると、桐野監督も輪に入りディスカッションが始まる。今できる最大限の方法を模索して上位進出を狙う。桐野監督は、燃費/周回数/各ライダーの役目と配分などを、その場で電卓を使い、瞬く間に計算していく。
そして伊藤さんがそれをエクセル表に落とし込み、何度もシミュレーション。こんな打ち合わせを2晩行い、宴会に突入していくのだ。
大人数が集まる耐久レースは人同士の絆を深めることがとても大事。そして皆のそんな笑顔を見ていると、このメンバーでレースができて良かったし、桐野監督や山本さんに加入していただき本当に良かったと思う。
予選は原田さんと僕の合算タイムとなるのだが、今回の『もて耐』は予選落ちがないので、気楽。決勝のスタートはル・マン式で2グループに分けて行われるのだが、1グループ目に入れれば、あとはスタートライダーの山本さんがなんとかしてくれるはずだ。
予選では少しマシントラブルがあり、2人ともきちんとアタックができなかったが、それでも19番手、スタートの1組目に残ることができた。ちなみに本来国際ライダーは予選ライダーになれないのだが、レギュレーションで50歳以上はOKということで、原田さんに予選ライダーになってもらった。
決勝は暑さと熱さとの戦い
この3日間、幸いなことに天気の崩れはなく、日中は太陽が容赦なく力を注ぎ続け、アスファルトはそれに反抗するように照り返す。7時間の長丁場となる決勝はライダーもクルーも暑さとの戦いになりそうだ。
『カワサキ チーム31』のZX-25Rのラジエターはノーマルを採用。周りのバイクを見るとラジエターを大型化しているバイクが多く、熱対策は必須のようだった。「ピットインの時にラジエターが吹くかもしれないから水をかけよう」と竹内さん。どうやらバイクも熱さとの戦いになりそうだ。
ピットイン時の手順を確認していると、桐野監督が各自の役割を采配。ピットイン時のタイムキーパーを担当する桐野監督と、決勝日から手伝いに来てくれているブルドッカータゴスの田子さんが霧吹きでラジエターに水をかけることとなった。もちろん、コースイン前にはアンダーカウルに溜まった水を全部拭き取る。
スタートライダーは山本さん。「ガンガン行ってください。ピット時間の長いカワサキ チーム31の見せ場は最初のスティントだけですから」と伝える。さあ、ZX-25Rは何秒出るだろうか。
Ninja ZX-25Rのベストタイムは2分13秒744!
スタート直後は転倒も多く、各所でイエローフラッグが出ている模様。暑さと混走、イベントレースの耐久レースにありがちな展開だ。山本さんはスタートからジャンプアップを決め、2分14〜15秒前後で周回。満タンスタートとなるこの走行は、いちばん周回数を稼げるスティント。
ちなみに国際ライダー(『カワサキ チーム31』の場合は山本さんと原田さん)は、1時間以上の走行と連続走行が認められていない。
走行終盤に3周ほどアタックした山本さんは、2分13秒744のベストラップを記録。ピットが盛り上がる。さすがである。ピットインしてきた山本さんを拍手で迎える。
ピット滞在時間が長いため、山本さんの話をじっくり聞く。どうやら水温が高く、全開で走るとすぐに110℃を超えてしまうようだ。1万6000rpmシフトならなんとかなりそうとのことだったので、これ以降はアタックはなし。全員回転をセーブして走ることにした。
ちなみに我々は賞典外なので、2分13秒744は非公式。とはいえ、ZX-25Rの可能性の高さは証明できたと思う。
次の原田さんの走行後にガソリン残量をチェックすると、前日までの走行よりかなり燃費が良いことが判明。「僕の走りは、今のエコな時代に合っているんだよ」と原田さんは笑うが、タイムも良く燃費も良いということは、とても効率の良い走りをしているということ。ちなみにこれまで他のバイクで参加してきた『もて耐』でも、原田さんは燃費がとても良かった。
また、回転数をセーブして走ると身体的にもかなり楽で、何周でもできるような感じとのことで、作戦を大幅に見直す。ここでも桐野監督が速攻で電卓を叩く。堅実に、そしてもっとも効率の良い各自の周回周とピット回数を導き出していく。
11回ピット&11回給油作戦を、9回ピット&8回給油作戦に変更した。決勝中は、クルーの献身的な動きにより、ほとんど何もトラブルはなく進行。最後のピットインでは給油はせず、71歳の蛭田さんにチェッカーを受けてもらう。お隣りの『チーム38レジェンド』のアンカーは、69歳の齋藤さんだ。レジェンドの2人を皆で送り出す。ほどなくして無事チェッカー。『カワサキ チーム31』は150周を走り42位、『チーム38レジェンド』は152周を走って41位だった。
転倒や大きなトラブルもなく、このメンバーで走って42位という結果はとても微妙ではあるが、勝つのではなく楽しむレースをした結果なので仕方ないと思う。出走を許可してくれたモビリティリゾートもてぎ、そしてチーム員の皆に本当に感謝したい。ありがとうございました。
仲間と楽しむレースを実践。これこそ耐久レースの醍醐味
チェッカー後も話は尽きない。みんながホッとした表情を浮かべ、そこには達成感しかなかった。久しぶりの『もて耐』は、みんなが色々なプレッシャーの中で戦ってくれた。本当にここにいるみんなに感謝しかない。日中の熱射も和らぎ、もてぎには心地良い時間と風が流れる。
特に、素性の知れない僕のチームに疑問も持たずに参加してくれた桐野監督には多謝しかない。会場で多くの方と話をして情報収集している姿もとても印象的で、そのフットワークの軽さにみんなが驚かされた。また細かな配慮と着実な作戦で監督業を全うしていただいた。そしてトリックスターの山本さん。公言していた通りZX-25R最速ラップをマーク。冷静にレースを走り切るその姿勢はさすがで、その走りをQスターズのデータ(詳細は、Qスターズで走りを数値化&見える化!【チャンピオンの走りは何が凄い? 趣味ライダーとプロの走りを比較してみた!】)で見ながら、各ライダーの参考にさせていただいた。新たに加入していただき、レースをサポートしてくれたお2人には本当に感謝しかない。
また、桐野監督の参入で、いつものチーム員みんなの緊張感が高まったのも事実。絶対にマシントラブルがあってはいけないし、転倒も御法度。模範になるようなレースをしていただいたいつものメンバーが最高の仲間であることも再認識した。やっぱりレースは良い。最高の仲間たちと過ごせる僕のバイクライフはとても贅沢だと思う。
さらに嬉しかったのは、翌週の鈴鹿8耐では、原田さんと桐野社長がナショナルストッククラスのライバルチームとして戦い、決勝後にお互いを讃えあっていたことだ。
「鈴鹿8耐で桐野社長がレース中もレース後もピットに来てくれたんだよね。優勝のお祝いの言葉ももらってさ」と原田さん。こんな人同士の繋がりが生まれることが僕はとても嬉しいのだ。
さあ、原田さんが再び日本に戻ったら関東と関西で(?)打ち上げをしないと!
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