
●記事提供:モーサイ編集部 ●レポート:山本晋也 ●写真:ホンダ/アウディ/HKS/カワサキ
そもそも「過給機」とは
世界最大規模の2輪車ショーといわれるEICMA(ミラノショー)。2024年11月に開催された同ショーにおいて最大級の注目を集めたのは、ホンダが初公開した電動過給機付きV型3気筒エンジンで間違いないだろう。オールドファンからすると懐かしい前方2気筒・後方1気筒というレイアウトはともかくユニークだが、その上に鎮座する赤い電動過給機は、いかにもハイパフォーマンスを予感させてくれるものだった。
現時点ではホンダから詳細な発表はないのでメカニズムや性能については想像するしかない段階ではあるが、はたして電動過給機の斬新さ、先進性はどうなのか。そしてどんなメリットがあるのかを考察してみたい。
ホンダが開発を進めている世界初の2輪用電動過給機付きV型3気筒エンジン。エンジンの回転数に関わらず過給をコントロールでき、低回転からハイレスポンスなトルク特性になっているという。
前バンク2気筒、後ろバンク1気筒のV型3気筒エンジン。バンク角は75度。大型車用を想定しているが(排気量は未公表)、エンジンサイズがスリム&コンパクトな点も特徴だ
なぜなら、電動過給機というのは4輪分野においては市販車への搭載実績もあり、またチューニングアイテムとしても活用されるなど実績がある。そうした事例を見ていくことでホンダの電動過給機を理解するための「事前情報」が身につくはずだ。
さて、まずは内燃機関における「過給機」から整理してみたい。
そもそも「過給」するメリットはシリンダーが吸い込む空気量を増やすことにある。ご存知のように、エンジンが燃焼するには空気中の酸素量に見合った燃料を噴射する必要がある。燃料ばかり過大に供給してもエンジンは回らないし、最悪壊れてしまう。過給機によってエンジンに多くの空気を供給することは、ダイレクトにパワーアップにつながるのだ。
ターボとスーパーチャージャーの違い
ひとまず電動化という点は置いておいて、まず過給機について改めて振り返えってみると、「ターボチャージャー」と「スーパーチャージャー」の二つが主なタイプとして存在している。
ターボチャージャーは排気エネルギー(エンジンが捨てた熱、排気の圧力)を利用するもので、スーパーチャージャーはクランク出力(エンジンの力そのもの)を利用するというのが大きな違い。エネルギー効率的には圧倒的にターボチャージャーが優位といえるが、排気エネルギーを利用するために、どうしても過給がかかるまでのタイムラグ(ターボラグと呼ばれる)が発生してしまう。
一方、スーパーチャージャーはエンジン回転で動かしているので低回転域からリニアに過給することができるが、クランク出力を利用しているということは、スーパーチャージャー自体が出力を消費していることになる。大幅なパワーアップのためにわずかにパワーロスをしているのがスーパーチャージャーといえる。
また、スーパーチャージャーにおいてはコンプレッサーとブロワーといった違いもある。スーパーチャージャーの入口と出口の圧力を比べたときに、出口で上がっているのがコンプレッサーで、空気を圧縮している、本来の意味での過給機だ。
一方、ブロワーというのは圧力変化がほとんどないタイプで日本語的には送風機といったイメージになる。いずれにしてもパワーは上がるのだが、コンプレッサータイプのほうがよりハイパフォーマンスが狙える傾向にある。
スーパーチャージャーは3タイプある
少々マニアックな話になるが、このようにクランク出力で動かす機械式スーパーチャージャーにおいては「ルーツ式」「リショルム式」「遠心式」と大きく3タイプにわけられる。このうち、もっともメジャーであろう「ルーツ式」はじつはブロワーに分類され、それ以外の2つがコンプレッサータイプとされている。
また、過給機の働き具合を可視化するものとしてブースト圧が挙げられ、その数値を示すブーストメーターはとくに過給機チューニングでは必須アイテムとなっている。一般的な4輪用エンジンでは「サージタンク」と呼ばれる、スロットルボディとインテークマニホールドの間にある空気溜めのスペースにセンサーなどを刺してブースト圧を計測することが多い。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
ホンダ・スズキと同じく、浜松で創業した丸正自動車製造 中京地区と同様に、戦後間もなくからオートバイメーカーが乱立した浜松とその周辺。世界的メーカーに飛躍して今に続くホンダ、スズキ、ヤマハの3社が生まれ[…]
80年代、80ccであることのメリットに、金欠ライダーは着目した 高校生が自動二輪中型免許(当時)を取ったはいいけれど、愛車をすぐ手に入れられるかは別問題。資金の問題が立ちはだかるのだ。2年ごとの車検[…]
ヤマハ AG200(1985年2月発売)「AGはAGRICULTURE=農業の略」 直訳すると車名は「農業200」だが、いわゆる農耕地での移動や運搬に使われるバイクのこと。ホンダのCTシリーズと成り立[…]
’80年代の国内市場は短命モデルの宝庫でもあった 若年人口の増加も手伝い、国内でのモーターサイクル販売需要も多かった’80年代。エンジンは空冷から水冷化が進み、サスペンションもフレームも日々進化が見ら[…]
6年連続トップ人気の軽二輪! レブル250の魅力を500と比べつつ検証 2017年4月、250/500が同時発売されたホンダのレブルシリーズは、登場当初、かなり異色のクルーザーモデルに感じられた。エン[…]
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー | ホンダ [HONDA])
構造から見る「ハイパーVTEC」の合理性 多くのライダーが魅了されるCB400SFの「ハイパーVTEC」。バルブ数切り替えという複雑なシステムを量産車に落とし込んだホンダの技術力には、改めて敬意を表し[…]
出力調整を極限まで最適化&他技術との連携で相乗効果 キャブやFIスロットルボディの吸気量を決めるバタフライの開閉をワイヤーで繋がったスロットルグリップで人間が直接調整していたのが旧来の方式。これに対し[…]
Eクラッチと電子制御スロットルが初めて連携する750シリーズ ホンダが欧州2026年モデルの5車にEクラッチを新搭載。これまでにミドル4気筒の「CBR650R」「CB650R」、250cc単気筒の「レ[…]
第一世代登場は20年も前! まず最初に言っておこう。”喰わず嫌いしていると時代に取り残されてしまうぞ。いずれほとんど自動クラッチに置き換わっても不思議ではないのだ”と。なぜそこまで断言できるかというと[…]
“レールのないジェットコースター”のコンセプトはまさに二輪車のFUNを体現 ホンダは、昨年のEICMA 2024で世界初公開したV型3気筒コンセプトモデルに続き、「V3R 900 E-Compress[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
直4の咆哮。心震わす吸排気サウンド 「エンジンを回した瞬間、鳥肌が立った」。そう言いたくなるほど、両車のサウンドチューニングは秀逸だ。 新設計の399cc水冷直列4気筒エンジンは、最高出力58PSを1[…]
1986年、異端児の誕生。「融合」の名を持つスクーター ホンダの250ccスクーター「フュージョン」は1986年に登場しました。フュージョンは1970年代後期にかけて流行したジャズとロック、ラテンなど[…]
58馬力の直4エンジンが放つ、突き抜けるような高揚感 「ヨンヒャクでも胸のすくような直列4気筒エンジンの吹け上がりを、フルカウルモデルでとことん味わい尽くしたい」。そんなスポーツ志向のライダーの渇望を[…]
58馬力を絞り出す新設計の直列4気筒エンジン 「もう一度、あの甲高い直4サウンドを響かせて走りたい」。そんなライダーの切なる願いに、ホンダの技術陣は新設計の399ccエンジンで完璧に応えてみせた。 最[…]
気になる方は「Honda 二輪車正規取扱店」へ! 細かい部分までしっかりこだわった特別感のあるモデル「スーパーカブ50・HELLO KITTY」「スーパーカブ110・HELLO KITTY」が気になる[…]
人気記事ランキング(全体)
熊の出没が急増する季節、ライダーに求められる「万が一」への備え 熊の被害や出没件数は、これからの夏から秋にかけてまさに「本番」のピークを迎える。特に秋は冬眠に向けた過食期に入り、熊の行動が活発化するた[…]
目を奪われる新色「マットファントムブルー×フルーレッド」の衝撃 「フルカウルのスポーツバイクに乗るなら、誰とも被らない個性的なカラーリングで個性を主張したい」。そんなライダーの所有欲を強烈に刺激するの[…]
夏のツーリングを快適に変えるプロ仕様の冷却技術 猛暑のなかでのライディングは、想像以上に体力を消耗する。ジャケット内にこもる熱や、肌にまとわりつく汗のベタつきは、集中力を削ぐ大きな要因だ。快適な走行を[…]
「リアル峰不二子」が魅せる、相棒との優雅な休日 トライアンフのブランドアンバサダーを務めるダレノガレ明美さん。2026年1月の就任以来、彼女のバイク愛は深まるばかりだ。今回、InstagramとXに投[…]
ワークマンプラス上板橋店で実地調査! これからの「猛暑」あるいはそれを飛び越えた「酷暑」と呼ばれる夏の時期、上着なしの薄着でいたくなるのも確か。しかしバイクに乗る以上、「転倒」というリスクには常に備え[…]
最新の投稿記事(全体)
ガレージのインテリアにも適したカギ付き大容量7段引き出し収納 整理整頓や紛失防止、作業効率アップなど機能面でのメリットが多いのはもちろん、モチベーションアップに果たす役割も大きいのがツールキャビネット[…]
直4の咆哮。心震わす吸排気サウンド 「エンジンを回した瞬間、鳥肌が立った」。そう言いたくなるほど、両車のサウンドチューニングは秀逸だ。 新設計の399cc水冷直列4気筒エンジンは、最高出力58PSを1[…]
普通二輪で乗れる極上スタイル「スピード400&スクランブラー400 X」 「初めての輸入車に挑戦したいけれど、デザインの妥協は絶対にしたくない」。そんなライダーの背中を力強く押してくれるのが、400c[…]
YZF-Rの血統と電子制御CVTがもたらす新感覚の走り アクセサリーの紹介に入る前に、ベースとなる新型車「AEROX ABS」の特長をおさらいしておきたい。最大のトピックは、ライダーの操作に合わせて減[…]
1986年、異端児の誕生。「融合」の名を持つスクーター ホンダの250ccスクーター「フュージョン」は1986年に登場しました。フュージョンは1970年代後期にかけて流行したジャズとロック、ラテンなど[…]
- 1
- 2






































