![空前のバイクブームの陰に短命車あり──世界初の可変マス機構を誇った専用設計650ccツイン「スズキGR650」[1983]](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/03/img_044_01.jpg)
RG250Γ(’83年)→GSX-R(400、’84年)→GSX-R750(’85年)と、’80年代にスポーツモデル路線で成功を収めたスズキだが、市販モデルすべてが売れたわけではないのも、現実だった。ヒットモデルの裏には短命に終わるモデルもある。今回はその中から、スズキが放った意欲作にして悲運のモデルを紹介。衝撃のデビューを果たしたRG250Γと同じ’83年、650専用設計の並列2気筒搭載で登場したGR650である。
●記事提供:モーサイ ●レポート:阪本一史 ●写真:スズキ/八重洲出版
’80年代の国内市場は短命モデルの宝庫でもあった
若年人口の増加も手伝い、国内でのモーターサイクル販売需要も多かった’80年代。エンジンは空冷から水冷化が進み、サスペンションもフレームも日々進化が見られた時代の中で数多くのモデルが登場したが、ニューモデル数が多い分、時流にうまく乗れないモデルも少なからずあった。
開発に際し、新規モデルはどれくらいの期間の生産・販売を想定しているか詳細はわからないが、開発・生産のコストを差し引いて利益を生むことを期待されるだろう。マイナーチェンジなどで商品力を維持することはあっても、ベースの車体とエンジンは極力長く使いたいはず。
実際、進化の早いスーパースポーツ系モデルでは2〜4年ほど、スタンダードモデルなら10年以上基本を変えずに継続されたりするが、開発モデル数が極端に増えた’80年代、販売が振るわず登場後2年ほどで消滅といったモデルも意外と多かった。
いわば’80年代は短命車の宝庫とも言えるが、中でも単一機種用の車体・エンジンを採用したものの販売が振るわずに終わった一例が、冒頭に紹介したスズキGR650なのである。
RG250Γと同じく’83年に登場のGR650。写真のとおりバーチカルと言う割には前傾したツインエンジンのほか、厚めの段付きシート、大アップ気味のハンドル、キャストホイールの組み合わせが特徴。400並の取り回しと750並の走りという狙いは、乾燥重量178kg、価格47万8000円で当時の400ccクラスに比肩。53psの性能が750並みの走りを実現したかどうか定かではないが、当時の重量級750を峠で取り回すよりも、乗る人が乗るGR650のほうが案外速いという状況は十分想像できる。
気合を感じさせるバーチカル・ルネッサンスの表現
’83年登場のGR650のカタログに記されたキャッチフレーズは、「バーチカル・ルネッサンス(VERTICAL RENAISSANCE)」。意訳すれば、直立(エンジン)の復活、復興ということだが、そのカタログの冒頭に少し長めの文章が飾られている。
「400並みの軽さで、750クラスの走りができるマシンをつくる――。このコンセプトのもとに生まれたのが、GR650だ。細部にいたるまでほどこされた軽量化と、可変マスといった新メカニズムがもたらす胸のすく加速感。そして、並はずれた低燃費と、快適な取り回し。GR650こそ、世界のライダーたちが求めてやまなかったマシンのひとつだ。スズキの世界戦略車、GR650。いま、バーチカル・ルネッサンスという新しい時代に向けて、大いなる旅立ちが始まる」
気合の感じられる文章だが、英国のトライアンフ、BSA、ノートン、それらの影響を受けたカワサキのW1シリーズといった’50〜70年代の高性能なバーチカルツインの流れを、復活させようとの狙いか。
そして、排気量は上述のツインらに倣い650ccとしたが、やや気になるのは“バーチカル”と謳いつつ、GR650のそれが若干前傾したシリンダーであること。左右に広がって振り分けられたエキパイ、しっかり刻まれた冷却フィンも含め、空冷並列ツインはアピールされているのだが……。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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