
目覚ましい発展を見せる電子制御技術。自動クラッチ/電子制御スロットル/ACC/ABS/トラクションコントロール…しかし「いや俺のテクが上だろ」と思うライダーも少なくないのでは? 今回はベテランも初心者も気になっているであろう「手動か、自動か」という問いに、丸山浩が答える。
●まとめ:宮田健一
第一世代登場は20年も前!
まず最初に言っておこう。”喰わず嫌いしていると時代に取り残されてしまうぞ。いずれほとんど自動クラッチに置き換わっても不思議ではないのだ”と。なぜそこまで断言できるかというと、今の自動クラッチ&変速システムは予想以上の完成度を持つと感じるからだ。
実は最近出てきたばかりのように見えて、2輪の自動クラッチ&変速技術そのものは結構前から存在している。スーパーカブの遠心クラッチは別として、現代のような電子制御によるシステムの第一世代として代表的なのは、私も乗っていたヤマハFJR1300ASの”YCC-S”。’06年登場なので、なんと20年近くも前のことだ。YCC-Sのシフトチェンジはマニュアルのみだったが、機構的にはモーターアクチュエータでギヤを切り替えるという今のY-AMTと同じようなもの。しかもマニュアルオンリーとは言え、最終モデルあたりでは停止すると自動で1速に切り替わる機能まで備えていたから頑張ってたよね。
フルATを実現したホンダの”DCT”も最初のVFR1200Fが出たのは’10年。やはりそこそこ昔だ。これに’12年登場のNC700とそれに続くNC750シリーズの初期DCTあたりが第一世代に当たるだろうか。
ただ、これら第一世代は走り出してしまえばそれなりに快適巡航をこなせたものの、極低速でのクラッチの繋がり方、特に半クラ制御の面ではまだ人間の操作に及ばなかった。それにYCC-SにせよDCTにせよ構造が複雑で重量が10kgほど重くなる上にスペースが嵩張り、スポーツ性でも既存のマニュアル車には勝てなかったのだ。
ホンダ CBR650R E-Clutch
電子制御で進化した第二世代
これに対してEクラッチを鏑矢とする第二世代と言うべき一連の最新システムは、第一世代で磨いた技術を元にどれも電子技術と共に制御が格段にアップしてきた。加えて既存エンジンに追加するような設計としたため、重量増やスペース増、それにコスト面も大きく抑えられている。
特に自動クラッチについてはその進化ぶりがすさまじい。クイックシフター+αのような使い勝手でスポーティな走りが楽しめるのはもちろん、第一世代のUターンや極低速の取り回しではクラッチの繋がるタイミングが読めず、いきなりドンと繋がってしまうことを恐れてソロソロと大回りするしかなかったが、EクラッチやY-AMTではマシンの方で上手く半クラッチを使って粘り、困ることはまずなくなっていた。
ウン十年バイクに乗り続けてクラッチ操作では誰にも負けないと自負する私としては、マニュアルモードEクラッチによる2人乗りでプロの人間ワザを見せようとしたが、パッセンジャーからは「自動クラッチとそんなに違いが分からな~い♪」と期待を裏切る答え。これを聞いた時に、もうわざわざ気を遣って自分で半クラ操作する必要はないんだな……と、時代の変化を実感したのだ。
そんな第二世代に対する私の感想を個別に紹介すると、ホンダEクラッチはレバーがあることで高度な人間テクニックを活かした走りも可能な、初心者からベテランまでどんなレベルのライダーでも満足できるシステム。今、市販されたら絶対に欲しいバイクはCB1000Fコンセプトなんだけど(取材時。現在は車両を予約中)、Eクラッチ仕様を設定してくれたら迷わずそっちを選ぶと思う。
ATが欲しい人にホンダはDCTも用意しており、こちらも熟成を重ねて初期のものより格段に優秀になった。ヤマハは自分たちの考えるスポーツATの未来像に絶対の自信を隠さないという印象。YCC-Sでは手元でも足でもシフトを変えられたのにY-AMTでは手元のみとするこだわりはまさにそれ。カワサキのNinja7/Z7ハイブリッドはあくまでハイブリッドが一番の目玉なので、自動クラッチ分野で本気を出すのは今後のことか。BMW ASAはけっこうハードなオフロードをマニュアル車と乗り比べたところ絶対的な速さこそ手動クラッチの方が上だったが、それもスタミナが途切れるまでの話。普通のツーリングなら遥かに疲れの少ないASAの方がいいとの結論になった。これから試してみようと思っているKTM AMTは、他とは違う遠心クラッチがどういうフィーリングを見せるのかに興味を抱かせる。
ヤマハ MT-09 Y-AMT
で、乗るならどっち?
と言うような感じだが、第二世代は搭載車種が限られていてまだ始まったばかり。大排気量車が中心で、そのトルクに助けられている雰囲気もないわけではない。これからが本番なのだ。なので自動/手動のどちらのクラッチを選べばいいかと言うと、現在が一番悩む時期。でも将来的に見るとやっぱり自動クラッチを選ぶようになるんじゃないかな。
その中で今のところベテランならレバーがあって自動/手動を両立できるEクラッチが最も後悔する心配がない感じ。逆にこれからバイクに乗り始める若い人だったら、クラッチレバーがないモデルを選んでもいいと思う。これまでは半クラを自分で上手く操れるかどうかがライダーの腕前を見極める大きな部分だったけど、重要度で言えば4〜5番目以降。それより一番重要なのはスロットルワークなので、クラッチワークを磨くのに費やしていた神経や労力を自動クラッチに合わせたスロットルワーク習得に向けた方が、先々いいんじゃないかと思うんだ。
カワサキ Z7 Hybrid
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