今年の12月に発売10周年を迎えるヤマハのYZF-R25と、国内メーカーの軽二輪で唯一のクルーザーであるホンダのレブル250。激戦区である250ccクラスを牽引し、ほぼ同価格帯にあるこの2台。乗り比べることで見えてきた、それぞれの魅力や世界観の違いとは。
●文:大屋雄一 ●写真:富樫秀明 ●取材協力:ホンダモーターサイクルジャパン ●BRAND POST提供:YAMAHA [Y’S GEAR]
「乗りやすさ」のニュアンスが異なる2台
遡ること10年前の2014年12月。「毎日乗れるスーパーバイク」をコンセプトに、YZF-RシリーズのDNAを受け継ぐスタイリングで登場したヤマハYZF-R25。新設計の水冷並列2気筒エンジンは、180度位相クランクやアルミ鍛造ピストンなどを採用。36psという最高出力は、当時としてはクラス最強だった。なお、排ガス規制対応により、2018年モデルで最高出力は36psから35psへとわずかに減じられ、最新モデルもこのスペックを維持する。
ホンダのレブル250は、長らくクルーザーが不在だった軽二輪クラスに颯爽と現れ、その勢いのまま人気の的となった。クルーザーのエンジンは空冷、もしくはVツインでなければという既成概念にとらわれることなく、水冷シングルを搭載して登場した。「“ちょうどいい”モーターサイクル」という緩いコンセプトが昨今の世相と見事にマッチし、2017年の発売以来、6年連続で軽二輪クラスのトップセラーとなっている。
筆者はこれまでに両モデルを何度となくテストしているが、こうして2台を同日に乗り比べるのは今回が初めてのこと。どちらも乗りやすいバイクとして認識していたのだが、その「乗りやすさ」のニュアンスに違いがあったことを、これを機に気付くことができたのだ。
パラツインvs単気筒。パワーか、それともテイストか
まずは動力性能から。YZF-R25のエンジンは水冷の並列2気筒DOHC4バルブで、現行モデルの最高出力は35ps。レッドゾーンは1万4000rpmからとなっている。一方、レブル250(今回の試乗車はSエディションだが、エンジンスペックはSTDモデルと共通)は、水冷単気筒DOHC4バルブを搭載し、最高出力は26psを公称する。クルーザーとしてシンプルさを追求した結果、タコメーターが省略されているが、同系の水冷シングルを搭載するCB250RやCRF250Lのレッドゾーンが1万500rpmからなので、レブル250も同等レベルだと思われる。
同一の排気量ならツインよりも単気筒の方が出足が良い。筆者自身にそういう先入観念があったのは事実で、実際にもレブル250の発進加速に不満を感じていなかった。ところが、何度も2台を乗り換えつつ都心を移動していたら、明らかにYZF-R25の方がスタートが速いことに気付いた。それも、せいぜい3000〜4000rpmでクラッチミートしており、半クラをあてながらパワフルな高回転域でつなぐという小細工をしなくてもだ。
レブル250は、単気筒ならではの明瞭な蹴り出し感と、シート高が低い=視点が路面に近いことによる視覚的効果によって、分かりやすい「速さ感」が演出されている。相対的なスピードよりも、ライダー自身がその力強さを楽しめるかどうか。意図的に強調されているメカニカル音も含め、テイストに重きを置いているのだ。加えて、3速のまま40km/hから60km/hあたり(計算上では4000〜6000rpm)で流しているときのパルス感が心地良く、ここにレブル250の水冷シングルの魅力が集約されているといっても過言ではない。
YZF-R25は、都心の移動程度なら6000rpm以下で事足り、そこまでの領域ですらスロットルワークだけでキビキビと加減速できる。同じパラツインながらホンダのCBR250RRは42psを絞り出すが、あえてパワー競争に走らなかったのは、この低中回転域の扱いやすさを犠牲にしたくなかったのだろう。そして、スロットルを大きく開ければ、レーシングサウンドを伴いながら1万4000rpmまで勢いよく伸び上がる。250ccながらとても刺激的であり、まさに「毎日乗れるスーパーバイク」というコンセプトに偽りなしといったところだ。
オールマイティなYZF-R25。レブルは少々慣れが必要
続いてはハンドリングだ。両モデルとも評価としては「扱いやすい」のは間違いないが、乗り比べてみると、YZF-R25はファーストコンタクトからフレンドリーなのに対し、レブル250は操縦を理解するのに多少の時間を要するといった印象だ。
レブル250は、身長175cmの筆者でもハンドルがやや遠いだけでなく、ステップの左右幅も広いように感じる。こうした違和感が最初にあるので、まずはそれに慣れなければならない。ハンドリングは、軽いきっかけでスムーズに車体がバンクするYZF-R25と比べると、腰でしっかり倒し込む必要があり、しかも向きの変わり方はあくまでも大らかだ。
とはいえ、これらはファットな前後タイヤや長めのホイールベースなど、スタイリングを最優先したからにほかならない。本来なら盛大にハンドルが切れ込んだり、すぐにステップが接地してしまうなど、クセツヨなハンドリングになっていたはず。それを、技術的に難しいスランテッドアングル(=フレームのヘッドパイプよりもフォークの角度の方が寝ている)を採用するなどしてここまで仕上げたのだがら、さすがと言えるだろう。
これに対してYZF-R25は、ライディングポジションの取っ付きやすさに加えて、どの速度域でもハンドリングがナチュラルであることから、どんなシチュエーションでも自信を持って操れる。そして、ブレーキングで車体のピッチングを生かすなど、操縦次第では高い旋回力を引き出すこともでき、ここにもスーパーバイクらしさを感じることができる。
両モデルともルックスに見合う世界観を構築している
そもそも論になってしまうが、250ccのバイクを購入する際にYZF-R25とレブル250のどちらかで迷う人はほとんどいないだろう。選ぶ際に重要なのはスタイリングであり、この2台は方向性がまったく異なるからだ。
今回あらためて感心したのは、どちらのモデルもスタイリングと走りの世界観が完璧にリンクしていたことだ。YZF-R25はスーパースポーツを想起させるスポーティーなポテンシャルを秘めているし、レブル250はクルージング時の心地良さが光っている。付け加えると、YZF-R25はこんなスポーティーなスタイルでありながら、街乗りからロングツーリングまで気負わず使える懐の広さがあり、ヤマハ流の「毎日乗れるスーパーバイク」の解釈に思わずニヤリとする。
250ccクラスはエントリーユーザーだけでなく、ベテランのダウンサイジングやセカンドバイクとしてのニーズをも満たす必要があり、その点でもこの2台はとても高いレベルにある。機会があればぜひ両モデルとも試乗してみてほしい。
テスター大屋が見た「2台のここがイイ!!」
ヤマハYZF-R25
ホンダ レブル250
YZF-R25&レブル250・細部解説
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