
1980年代初期にはじまったヤングマシンのスクープ記事だが、新車のみならずレーシングマシンへと触手を伸ばすのにそう長い時間はかからなかった。なかでも『トンデモ』系と呼ばれるスクープといえばこれだろう。しかし、当時の担当者によれば真っ赤な嘘というわけでもなかったとか……。
●文:ヤングマシン編集部
すでにエンジンを完成させた……!
2ストローク+4ストロークを融合したV型3気筒の存在は、2003年1月号で初披露。リヤ1気筒の2スト側はクランク1回転毎に燃焼するので、実質的に4ストV型4気筒と同じ効果を発揮するとされ、高効率&コンパクトな超ハイメカを採用すると見られた。しかも、ホンダは「すでにエンジンを完成させた」とある!
ヤングマシン2003年1月号
※以下、ヤングマシン2003年1月号の誌面より
【爆雷スクープ】2&4ストハイブリッドV3は実質4ストV4と同効率!
この20年来、数々の伝説を残してきたNSR500が今シーズンで最後の年を迎えた。これで2スト全盛に完全な終止符が打たれたわけだ。対する4ストのRC211Vは、デビューイヤーにチャンピオンを獲得。来シーズンからはサテライトチームに大量7台もの供給をスタートさせる。まさに4スト時代の幕開けとなった。
しかし、まだまだ2ストは終わっていなかった。本誌は、RCV大活躍の舞台裏でホンダが特殊なV3エンジンを完成させたとの極秘情報をキャッチ! なんとそれは、2ストと4ストを合体させたV3エンジンで、前2気筒が4スト、後1気筒が2ストという超変則的な設計になっているというのだ。この構成だと後1気筒はクランク1回転毎に1回爆発するので、実質的には4スト4気筒と同じ効果を発揮。高効率・省スペース型3気筒エンジンとなる。
前2気筒が4スト、後1気筒が2ストというV型3気筒エンジンの予想CG。
今までありそうでなかったこのエンジン、バイクに採用した場合のメリットは大きそうだ。幅を狭くできる上に4スト4気筒より軽量でコンパクト、フロント荷重をより高く設定できることやリヤのスペースを確保しやすいことなどいいことずくめ。だが、このCGのように既存の2ストをベースに考えるとまずありえない構成だ。では、一体どんなエンジンだというのか?
ただの2ストではない超ハイメカニズム採用
V3のヒントは’89東京モーターショーにあった。2ストといえば混合ガソリンによるオイルミストや燃費という環境的な問題を抱えているが、’89年の東京モーターショーでトヨタとスバルが、そのネガを解消させるプロトエンジンを出展していた。どうやらハイブリッドV3のヒントはここに隠されている気配だ。これらはクランクなど下回りは4ストのままでシリンダーより上を2ストとした新発想のエンジン。もし、このアイディアを応用するのであれば、ハイブリッドエンジンも不可能ではない!
2号連続スクープで、ホンダモトGPマシン・RC211Vの後釜を驚愕のハイブリッドと予測
今も語り草になっているのがコレ(笑)。モトGP初年度は4ストV型5気筒のホンダRC211Vが他を圧倒。しかし次を見据え、’04シーズン用にV型3気筒を開発中との極秘情報をキャッチした。ナント前バンクが4スト、後バンクが2ストの前代未聞なレイアウトという。業界は騒然となったが、全く音沙汰ナシ! 最近、担当者に聞いたら「出るって言ってたんだけどなァ」とのこと。
ヤングマシン2003年2月号
※以下、ヤングマシン2003年2月号の誌面より
【続報スクープ!!】ホンダV3 どうなる新型モトGPマシン
築き上げた栄光にしがみつくことなく、常に挑戦を続けるホンダ。デビュー初年度に圧倒的な強さで王座に輝いたRC211Vとて例外ではない。すでに次期エンジンを搭載した新モトGPマシンの開発プロジェクトはスタート。その第1弾として、本誌では先月号でV3エンジン、しかも2スト&4ストハイブリッドとスクープした。では、無敵のV5を捨ててまで採用する新エンジンを搭載したマシンは、いったいどのようなものになるのか? あるいは、もっと違った新たなる挑戦が? 今月も大胆に迫るぞ!
ヤングマシン2003年2月号
2003年はV5ラストイヤーだ
モトGPへの参戦には2つの側面がある。まず市販車のプロモーション効果。これは、RCVスタイルとなったCBR600RRが脚光を浴びていることでも明らかだろう。もうひとつは、技術開発のための実験場としての役割だ。V4、直4、直3、そしてL4と、’03年は初年度以上に様々な形態のライバルがV5包囲網を形成する。確実に勝ちを狙うだけなら、今のV5の戦闘力を高めていくのが近道だが、今やRCVに’02年ほどのアドバンテージは見込めない。今後も不動の優位を保つには、HRC首脳が言うように「V5にはこだわらない」新技術開発が必要なのだ。
本誌がつかんだ情報では、ホンダはすでに’04年用の新エンジンとしてV3を完成。名称は「RVW」とも囁かれている。球体に近いV型ならではの利点である「マスの集中」と同時に、軽量化での戦闘力強化を狙うという。
RCVのサテライト供給が本格化し、V5全盛のように見える’03年。だが、すでに終わりは始まっている。ワークルが新型を投入する’04年には、RCVは過去のマシンになるだろう。かつて最強を誇ったNSR500が、RCVの手で瞬時に無力化されたように。
ヤングマシン2003年2月号
2+4ストV3のRVW vs 4ストV5のRC211Vを比較すると?
【左】前2気筒を4スト、後1気筒を2ストとした新規エンジン(本誌CG)。4ストとハイブリッド化が可能な2ストの構造は、トヨタやスバルにも研究実績がある。名称はRVWという耳慣れないものだが、これはRCVの内部開発コードである可能性も。
【右】前3気筒+後2気筒の4ストロークV5。最高出力は220ps以上。Vバンク角75.5度により、バランサーなしで一次新藤/一次カップル振動を消去。2輪ではかつてない構造で、一躍モトGPの中心的存在となった。目下2輪最強を誇るエンジンだ。
RC211VにニューハイブリッドV3エンジンを搭載した本誌CG。マスを集中させつつ、4スト4気筒よりコンパクトに設計できる上に、フロント荷重も稼げる。ただ、上のエンジン写真の構造も含めて、その実際の姿がこのままの状態になることは、まずありえないだろう。
テスト中の’03RCV。外観は’02仕様だが、エンジンは’03スペックだ。’02シーズン後半戦でも、’03をにらんだ発展型エンジンを実戦で試していた。
なお、2004年8月号ではV5エンジンの市販車が出ると報じているので、また機会を改めて復刻記事をお送りしたい。結果としては出なかったが、のちに市販車開発があったとホンダが認めている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
前代未聞の機構が満載だった4ストロークV4エンジン 1970年代中盤以降の世界GP500では、長きに渡って王座に君臨してきた4スト3/4気筒のMVアグスタを退け、ヤマハとスズキの2スト4気筒が主役にな[…]
驚異の6連覇と全戦全勝 デビューイヤーの1984年こそ王座を逃したものの、以後は10回のチャンピオンを獲得し、1994~1999年にはシリーズ6連覇、1997年には全15戦全勝という偉業を成し遂げたN[…]
前後片持ち式を採用したフランス製レーサー 1985~1988年の世界GP500で大きな注目を集めたelf2~5は、フランスの巨大石油企業であるelfの支援を受け、と言うよりelfの意向に従う形で、フラ[…]
最後のV4エンジン搭載車が生産終了 さる4月28日、ホンダが「法規対応に伴う、Honda二輪車の一部機種の生産終了について」というリリースを出した。厳しさを増す排出ガス規制に対し、一部機種を生産終了す[…]
なぜスクープに当たり外れがあるの? ヤングマシン誌の花形記事といえば新車スクープだ。その歴史は1982年10月号までさかのぼり、CGもなかった当時は手書きの予想イラスト(しかも初期は白黒ページ!)を掲[…]
最新の関連記事(スクープ/未来予想)
グローバル展開では『500cc』のほうが有利になる地域も ホンダ「GB350」シリーズといえば、直近ではクラシカル要素を強化したGB350Cも新登場し、走りのフィーリングまで変えてくるこだわりっぷりが[…]
完全に消える? それとも復活する? ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「Ninja ZX-4R」が登場し、唯一無二[…]
2025年こそ直4のヘリテイジネイキッドに期待! カワサキの躍進が著しい。2023年にはEVやハイブリッド、そして2024年には待望のW230&メグロS1が市販化。ひと通り大きな峠を超えた。となれば、[…]
その名も「V3R」と「V3R E-COMPRESSOR」だ! ホンダが全く新しい4ストロークV型3気筒エンジンのコンセプトモデルを公開したのは、2024年秋のEICMA(ミラノショー)でのこと。かつて[…]
2ストローク90ccの「CO-29」は、キーレスにポップアップスクリーン採用 1988年に劇場版「AKIRA」が公開された翌年、1989年8月にウェルカムプラザ青山で「MOVE HONDA MOTOR[…]
最新の関連記事(レース)
日本車と欧州車がおおよそ半々 マン島をバイクで訪れるには、リバプールやヘイシャムなどの港まで自走し、「スチームパケット社」が運行しているフェリーを利用するのが一般的だが、小型ボートをチャーターしてバイ[…]
ウエットレースで痛恨の転倒 2025年5月24日・25日に宮城県スポーツランドSUGOで開催された全日本ロードレース第2戦、SUPERBIKE in SUGO。JSB1000以外のクラスにとってはこれ[…]
難しい路面状況を利用して前に出る 悔しい開幕戦の途中リタイアから約1か月、全日本ロードレースの第2戦が5月下旬、宮城県のスポーツランドSUGOで行われた。 第1戦のモビリティリゾートもてぎでは序盤5周[…]
スーパーストックTTではCBR1000RR-Rが勝利 シニアTTの中止によって、2025年のマン島TTは6月6日に行われた、スーパーストックTTレース2、サイドカーTTレース2、スーパーツインTTレー[…]
7回目のTTで平均速度175km/h超え 2017年からマン島TTに参戦し、今年で7回目のTTを迎えた山中選手はスーパーツインTT(650~700cc2気筒)に出場。6月3日に行われたレース1(3周を[…]
人気記事ランキング(全体)
オートマ・AMT&ベルトドライブ採用の250ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収めることでも知られる、中国・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが[…]
懐かしのスタイルに最新技術をフル投入! 2025年3月の東京モーターサイクルショーで詳細が発表されたヨシムラヘリテージパーツプロジェクト。対象機種は油冷GSX-R750とカワサキZ1となっており、GS[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
K-2439 フルメッシュロングジャケット:スタイルと機能を両立するツーリングジャケット 腰までしっかりと覆う安心感のあるロング丈でありながら、後襟から袖口へ流れるように入ったラインデザインと、ウエス[…]
涼しさの心臓部。それは「素材」と「構造」の魔法的組み合わせ うだるような暑さと、じっとりと肌にまとわりつく湿気。毎年繰り返されるこの季節に、多くの人が少しでも快適に過ごせる服を探し求めている。そんな中[…]
最新の投稿記事(全体)
マツダGT-Rを名乗るは「マツダ323」、つまりは… いうまでもなくマツダ323とは日本名ファミリアのこと。こちらは1989年デビューの7代目(BG)のGT-Xをベースに数々のカスタムを加えたモデル。[…]
2020年モデル概要:快適装備と電子制御を新採用 発売は、2020年1月15日。マイナーチェンジが実施され、「エキサイティング&イージー」のコンセプトを堅持しつつ、装備がイッキに充実した。2019年モ[…]
日本車と欧州車がおおよそ半々 マン島をバイクで訪れるには、リバプールやヘイシャムなどの港まで自走し、「スチームパケット社」が運行しているフェリーを利用するのが一般的だが、小型ボートをチャーターしてバイ[…]
先進の冷却機構を備えたフルフェイス カブトの展開するフルフェイスヘルメット「SHUMA」最大の特長は、「ウルトラクールシステム」と称される独自の冷却機構だ。その秘密は風洞実験によって作り上げられた、フ[…]
18時間耐久の優勝で「ヨシムラ」は全国区に 加えて、ホンダから市販車ベースのレース車両の開発依頼もあったものですから、ヨシムラは1965年に東京の福生に移転しました。私は高校1年生でしたので、卒業まで[…]
- 1
- 2