
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。この記事では、GT380の概要について解説する。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
軽快さや速さを強調しない従順なグランドツアラー
’71年からスズキが発売を開始した、2スト並列3気筒のGTシリーズを語るうえで、好対照の機種としてよく話題に上るのが、同じ時代に販売され、同様のエンジン形式を採用したカワサキ・マッハシリーズである。2ストらしからぬ従順で穏やかな特性のGTに対して、2ストならではの爽快感やアグレッシブさを追求したマッハ。ではどうして、そういったキャラクターの差異が生まれたのかと言うと…。
おそらく、当時のスズキとカワサキでは、2ストに対する意識がまったく違ったのだろう。マッハシリーズを世に送り出した頃のカワサキは、すでに4スト並列2気筒のW1系を販売していたし、4スト並列4気筒のZ1の開発も進んでいた。言ってみれば、失敗してもフォローができそうな状況だったわけで、だからこそカワサキは、2ストの弱点を気にすることなく、2ストの美点を徹底追求できたのである。
一方のスズキにとって、2ストは大本命のエンジンで、絶対に失敗は許されなかった。なんと言っても当時の同社は2スト専業メーカーで、GPレーサーを含めた2輪の全モデルだけではなく、スズライトやフロンテといった4輪にも2ストを搭載していたのだから。
ただし、スズキは’68年から4ストの基礎研究を始めていたし、世界最大の市場であるアメリカの状況を考えれば、以後は4ストが有利になることは分かっていた。そんな中で当時の上層部は、スズキの技術力をもってすれば、2スト特有の弱点を解消したうえで、4ストに匹敵する扱いやすさが獲得できると判断。
こうした経緯で生まればGTシリーズは、2ストの新しい可能性を世に示すため、あえて軽快さや速さを強調せず、親しみやすいグランドツアラーとして仕上げられたのである。
もっとも現代の視点で考えると、GT550と基本設計を共有するGT380は、重さと大きさがネックになりそうな気がするけれど(装備重量183kg/軸間距離1380mm。なおカワサキ350SSは165kg/1320mm)、堅実で実直な資質が高く評価され、GTシリーズは世界各国で好セールスを記録。
なお550の販売が’77年で終了したのに対して、380は’79年まで続いたが、その背景には’75年に日本で施行された中型免許制度があった。ビッグバイク気分が味わえる、貴重な中型車としての支持を集めたことで、サンパチは約8年にわたって販売が続く、長寿車になったのである。
SUZUKI GT380[1971model] DETAILS
’90年代後半から人気が急上昇
現役時代は堅実な支持を集めていたものの、’80年代に入って中型クラスに高性能化の波が押し寄せると、GT380の人気は瞬く間に凋落。一時はヒトケタ〜20万円台の中古車がゴロゴロしていたが、’90年代後半からは唯一無二の資質に対する再評価が始まり、昨今では長兄のGT750と同じく、コンディションが良好な車両なら目を見張るプライスタグが珍しくなくなっている。
ボディと同色のヘッドライトボディ+ステーや、フォークのダストブーツは、この頃までの国産車の定番。とはいえ、カワサキ350SSは初代(’71年型)の時点で、ヘッドライトボディ+ステーはブラック、ダストブーツは装備せず、革新的なテールカウルを採用していた。
2連メーターは日本精機。スピードメーターのフルスケールは、北米仕様が150mphで、日本と欧州仕様は210km/h。日本仕様はSマークの位置に、速度警告灯が備わっていた。
’70年代初頭の日本車のガソリンタンクは、ツルンとしたティアドロップタイプが一般的だったけれど、GTシリーズは個性を演出する手法として、わずかに角ばったデザインを取り入れ、上面にプレスラインを設置。サイドカバーも個性的な形状だ。
亀甲パターンのシートレザーはGT750と同様だったものの、シート後端の跳ね上がりはGT380/550ならではの特徴だ。
SUZUKI GT380[1972model] SPECS
| 項目 | スペック |
| 全長 | 2090mm |
| 全幅 | 800mm |
| 全高 | 1110mm |
| 軸間距離 | 1380mm |
| 乾燥重量 | 171kg |
| 燃料タンク容量 | 15L |
| エンジン種類 | 空冷2サイクル並列3気筒 |
| 弁形式 | ピストンバルブ |
| 圧縮比 | 7.2 |
| 総排気量 | 371cc |
| ボア・ストローク | 54mm × 54mm |
| 最高出力 | 38ps / 7500rpm |
| 最大トルク | 3.8kg-m / 6500rpm |
| 変速機形式 | 6段リターン |
| キャスター/トレール | 28度/ 109mm |
| ブレーキ前/後 | ドラム/ドラム |
| タイヤサイズ前/後 | 3.00 × 19 / 3.50 × 18 |
| 新車当時価格 | 24万5000円 |
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