
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。この記事では、GT380の技術面について解説する。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
4スト4気筒に匹敵する扱いやすさを目指して
’69年末から開発が始まった新世代のGTシリーズは、同年10月の発表と同時に世界を震撼させた、ホンダCB750フォアを仮想敵に設定していた。
もちろん、直接的な競合車は長兄のGT750だが、弟分のGT550/380も、4スト並列4気筒に匹敵する、扱いやすさとスムーズさを意識していたのだ。そしてそのためにスズキが選択したエンジンが、理論上のバランスが4スト並列6気筒に相当すると言われた、2スト並列3気筒だった。
このエンジン形式に関しては、マッハシリーズの第1弾として、’69年に500SSを発表したカワサキに追随…という見方をする人もいるようだが、それは完全な誤解だ。当時のスズキはすでにフロンテをはじめとした4輪で、2スト並列3気筒をモノにしていたのだから。逆に4輪の技術があったからこそ、スズキは新世代GTシリーズのパワーユニットに、2スト並列3気筒を選択したのである。
もっとも形式が共通でも、GTシリーズの長兄と弟分のエンジンは似て非なる構成だった。中でも大きな相違点は、750の水冷に対して、550/380が空冷+ラムエアシステムという冷却方式を採用したことだが、シリンダーの構成やボア×ストローク比なども、完全な別物だったのだ。
ただし、フェザーベッドタイプのダブルクレードルフレームや安定性重視のディメンション、フロント19インチなど(当時350〜400ccクラスの前輪は、ほとんどが18インチ)、車体に関しては3兄弟共通の要素が数多く存在した。
ENGINE:2スト特有の欠点を解消
2スト並列3気筒のGT3兄弟は、既存の2スト並列2気筒+1気筒という形で開発された。ボア×ストロークは、GT750がT500と同じ70×64mmで、GT380はT20と同じ54×54mm(T350は61×54mmで、GT550は61×62mm)。なおGT380がT20譲りの6速ミッションを採用していたのに対して、GT750と550は5速だった。
【ラムエアシステムで走行風を積極導入】GT550/380が採用したラムエアシステムは、シリンダーヘッド上部に、導入口を広く、排出口を狭くしたカバーを装着することで、内部の流速を高めて負圧を起こし、走行風を積極的に取り入れるのが狙い。この機構によって、熱的に厳しい中央気筒の温度は30〜50℃も低くできたという。
【組み立て式クランクは120度位相】120度位相の組み立て式クランクは、6個のボールベアリングで支持。各気筒の密閉にはラバー製シールを使用。1次減速ギヤは右端だが、GT750は2・3番気筒間に設置していた。
キャブはミクニVM24SC。GT750のシリンダーが2ストでは珍しい一体型だったのに対して、GT550/380は3気筒独立式を採用。
FRAME & CHASIS:3兄弟車に通じる軸間距離
車体の安定性を確保する手段として、当時のスズキがこだわったのが長めの軸間距離。’60年代末の旗艦を務めたT500で、量産直前に軸間距離を1328→1435mmに延長するという荒業を行った同社は、新世代の2スト3気筒GTシリーズには、750:1470mm、550:1460mm、380:1380mmという数値を採用。いずれも当時の各クラスの基準で考えれば、かなりの安定指向が感じられる長さだった。
【クレードル部をコンパクトに設計】ステアリングヘッドを5本のパイプで支持する構成は既存のT500やT20と同様だが、GT3兄弟のフレームは、パワーユニットを取り囲むクレードル部が格段にコンパクト。
振動対策としてエンジンは前後ラバーマウント。他社の2ストが同様の手法を採用するのは、’70年代中盤になってから。
【同時代の中型車と同様の構成】ドラムブレーキは前後ともφ180mm。フロントはT20やT500と同様の2リーディング式で、リヤはGT750と共通のリーディング・トレーリング式。フォークはφ33mm。
【B型はディスクブレーキ】型式の末尾にBが付いた’72年型以降のGTは、フロントブレーキを刷新。ディスクはφ224mmで、キャリパーは片押し式1ポット。
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