ヤングマシンの代名詞ともいえる新車スクープ記事は、1980年代初期からはじまっており、すでに40年以上の歴史を持っている。当たったり当たらなかったり……は今でも変わらない!?
●文:ヤングマシン編集部
なぜスクープに当たり外れがあるの?
ヤングマシン誌の花形記事といえば新車スクープだ。その歴史は1982年10月号までさかのぼり、CGもなかった当時は手書きの予想イラスト(しかも初期は白黒ページ!)を掲載していた。
スクープと銘打っているからには何かしらの根拠がある場合がほとんどだが、さまざまな事情から実際の市販化に至ったり至らなかったりする。それはコストの問題だったり、『今発売するのが正しいのか』というタイミングの問題、そして発展性があるのか……と、そういったハードルを乗り越えた企画が実際にプロジェクトとして進行することになり、最後に一般ユーザーまで届くことでストーリーが完結するわけだ。
しかし、たとえばホンダのV5エンジン搭載機や、ターボ仕様ハヤブサなど、メーカー自身が後になって開発していたことを明かすようなケースを除き、実際に世に出なかったスクープネタは当然ながらデマ扱いされることになる。バイクブームの頃は非常に多くの企画が同時進行する時代であり、取捨選択の中でデマとして葬り去られるケースも当然ながら少なくなかった。
ただ、読者を喜ばせたい一心で最初から当たることはないとわかって記事を制作することもあったといい、それは令和の世になっても皆無とは言えないとかなんとか。
すべてに白黒をつけようとせず、寛大な心でエンターテインメントと割り切って楽しんでいただければ幸いである。なにしろバイク界の東●ポと呼ばれることを名誉と感じているヤンマシなのだから。
並列4気筒「RZ500」、V型3気筒「NS250T」、カタナスタイルの「GSX250F」だとぉ!?
ヤングマシンの創刊から10周年にあたる1982年の10月号で、本誌として初めての本格的なスクープ記事をお届けした。
タイトルは「ニューモデル戦線異状あり」とされ、1982年秋から翌春までのニューモデルを大予想した。ホンダから2ストロークV型3気筒の「NS250T」が登場するとされているが、これは1983年2月発売のMVX250Fとして的中した。また、RG250Γの登場も予告している。
そして目玉はヤマハの「RZ500」! 1984年5月に2ストロークV型4気筒で発売されるRZV500Rの存在を匂わせるが、エンジンは「スクエア4でなく、インラインになりそう」とハズしている。また、DOHC4バルブ4気筒の「カタナスタイルのGSX250Fが登場」とあるが、これもハズレ。角眼ハーフカウルのGSX250FWが1983年に投入された。
以下、当時の記事を掲載する。細部の答え合わせはご自身で調べていただければと思う。なお、仮名遣いなどは当時のままとした。
【YM情報局噂の真相を探る】ニューモデル戦線異状あり
今、バイクショップや2輪関係者の間で公然と、あるいは密かに話題にのぼるのが、ニューモデル達である。もちろん各メーカーの公報部からはノーコメント。しかし、この秋から来春にかけて各メーカーともライバルに打ち勝つために、当然ながらニューモデルを続々と登場させるのは必至だ。ここではそんなニューマシンの情報を集めて予想してみたのだが……。(ヤングマシン1982年10月号より)
今秋から来春までを予想すると
今年の秋から来春にかけての新車情報は、かなり大きの機種について明らかになってきた。9月にディーラーミーティングを開いて“21種を発表する”と言われているホンダど、それを追うヤマハ、ラインナップを充実させようとするスズキ、そして好評のGPをシリーズ化するカワサキと、各メーカーは戦略的な動きをしていて、レースのレギュレーションやカウル認可などからんで複雑になっている。
まずホンダの動きは
今年の秋、ホンダからスーパースポーツのナナハン、VF750Fが発売されるだろう。すでに発売されているVF750をチェーン駆動に改め、アルミのブーメラン型コムスターやアウトボード(?)ディスクブレーキ、TRACプロリンクサスなどの充実した足まわりを使っている様子だ。一説によると出力は82psといわれ、最近の新車に必ず付くネーミングは”デイトナ”となるだろう。
さてCB750Fだが、現在のCB750Fは900ベースなのに対し、新設計のコンパクトな直列4気筒DOHC16バルブエンジンを搭載したニューマシンが登場することになりそうだ。なぜなら、2年後のフォーミュラー規制の改定によって排気量が750ccに引き下げられるため、耐久レーサ―のベースを新しく作る必要があるからだ。
またラインナップ上にあり、すでに完成されていると言われているのがVF400Fだ。エンジン型式はVF750とほぼ同じで、すでにCBX400Fと同時に完成して、発売時期を待っていたとのことだ。
250ccクラスには、発売したばかりのVT250があるが、その対象とするユーザーはCB250RSの層で、決してRZ250のそれとは異なる。それをホンダが見逃すはずがなく、人気の低下しつつあるRZに対して2サイクルの水冷V型3気筒の250のレイアウトをとるとの噂も。なぜならホンダには、水冷V型2サイクルのNSがあり、ホンダ関係者によると「VTとはシリンダー数がちがって、パワーももちろん上!」ということで、それこそホンモノのRZキラーが現れる。
輸出仕様のモデファイとしてはCBX550F-IIがインテグラとして国内発売されるだろう。フロントディスクがインボードのダブルで、メチャ速のナナハンキラーということだ。
FTシリーズは新たにCB250RS-Zのモデルチェンジ、FT250の可能性はなきにしもあらず。
RZ500が出るか? ヤマハ
ヤマハの目玉は何といってもRZ500。当然2サイクル水冷だが、そのレイアウトは以前言われていたスクエアのロータリーバルブではなくて、インラインになりそうだ。出力は認定のこともあって、あくまで公称60ps前後になるだろう。新採用のメカは、YZに使われているリンク付のモノサスで、レーサ―のイメージを残すためアルミの角型スイングアームを使うのではないかという。また、ほぼフルカウルに近いものが装着され、来年に初めにデビューとなりそうだ。
RZシリーズの中で最も古いRZ250、350はTZイメージにモデルチェンジし、新設計のコンパクトなエンジンとサイドフレームとなり、もしかするとY.P.V.S.が装着されるかも知れない。
400ccクラスで最も確実なのが、4バルブのXJ400で、48ps戦線に加わると思われる。最近ヤマハは市販車ベースのレースに力を入れており、XJにG.Y.T.キットを用意して、TT IIIのベースにと考えている可能性も。このスーパースポーツは、早ければ秋、遅くとも年内に発売なのではないか。
また、当分発売を見合わせるとヤマハが言ったXS400だが、サーキットではRZよりもタイムがいいとのことや、ディーラーからの要望で、輸出向けを国内に、は時間の問題。
オフローダーでは、DT250のスタイリングをYZ風にして空冷のまま再登場させる。そして、モデルチェンジ時期にあるのがXT250で、主に足まわりが強化されるだろう。
出るか250 4気筒スズキ
スズキの750ccクラスも水冷V4DOHCのエンジンを開発中らしいが、これはあくまで試作段階で、ニューモデルの発売に慎重なスズキとしては現行750モデルのリファインにとどまると思われる。
その中で最も現実味のあるのは、あまりにも古いデザインのGSX750Eに代わって、GSX400カタナのデザインを取り入れたナナハンだ。現に輸出モデルとして存在するGSX1100Eの750版で、ヤングアダルトに大いにウケそう。
そして、GSX400FSにさらに耐久レーサ―のイメージを強くしたモデルが加わりそうだ。特にリヤサスがフルフローターとなり、SS400風のハーフカウルが付く。
250ccクラスには、春に発売予定だったGSX250Fが相当煮詰められており、4バルブDOHCをカタナのボディーに載せて10月ごろ発売されるという。発表がおくれたのは生産ラインの関係と、思い通りの出力が得られなかったとのことだが、34~35ps程度に上ったらしい。
RGシリーズは“ガンマ”のネーミングが予想され、生産が中止されたRG250の後継には水冷ツインが当てられるはず。発売は今秋で、250Fと同時の近い時期だろうと思われ、スズキのマシンらしく足回りもかなりのものとなる。
そして、このRGもシリーズ化され、RG50やモトクロッサーエンジンベースのRG125やRG350~400クラス(もしかすると380か?)が発売されるだろう。
スズキは以前、GT750で水冷2ストを作っていたし、第一に軽自動車などからのノウハウは相当なものだ。従って、RG水冷がRZの本当のライバルとなる。、
また、オフロードモデルのハスラーも水冷化され、DRも400にフルフローターサスが採用されて来春発売されるのではないだろうか。
ARシリーズが発展? カワサキ
カワサキはナナハンクラスにスペクターを登場させたが、そのパワーユニットを使ったグランツーリスモを出すだろう。それはスペクターがアメリカンスタイルなのに対して、シャフトドライブのヨーロピアンスタイルで、発売される可能性は高いと思われる。スタイルは、カワサキで初めてのフルカウル付き(昨年のモーターショーで発表されたターボモデルのような)となる可能性大だ。
とにかく評判のいいGPはシリーズを広げ、中身も充実させる。
可能性としてはZ400・550GPは、d.f.i.付きとなり、スタイリングはカウル標準装備となり、アンチノーズダイブやオイルリザーバータンク付となることが想像される。またカワサキらしいのはベルトドライブの採用で今年の4時間耐久にベルトドライブのZ400が2台も出場していたし、そのうちの1台はアンチノーズダイブを付けていたことなどから、開発は進んでいると思われる。同時にZ250GPも考えられる、古くなった250FTが全面モデルチェンジ。DOHCツイン搭載となるのは確実だ。
海外で発売されていて、国内発売を待つものにAR125がある。もし、ARが秋に発売されると2スト125戦争に火が付くことが予想される。
そしてこのARも、RGやRZのようなラインナップ化をすると思われ、当然AR250が考えられる。これは、2ストローク水冷ツインだとすればKRのエンジンレプリカでタテ置き、シングルならKXの水冷エンジンだろう。
オフロードでは、KL250がモデルチェンジしてユニトラックサスとし、エキゾーストの取り回しを変えてくるだろう。
もう1台、AE125がARのパワーユニットを使って作られているらしく、変わったところでは、フロントにオフロード初のディスクブレーキが付きそうだ。KXモトクロッサーの公道バージョンと言っても過言ではない。
1982年10月号の実際の誌面
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
頑張ってね、オトーサン! ●我家はごく平凡な4人家族です。自分は、オートバイに跨って生まれ出たと思い込んでるような亭主1人と、良くも悪くもそんな父親の影響を受けて育ちつつある男児2人、そんな3人を持て[…]
NEW MODEL IMPRESSION[1985年9月号]トレールコース&一般道でテスト これがそう、これが本物のトレール・バイクなのだ。ヤマハから発売されたセロー225は、トレール・バイクの原点に[…]
以下、ヤングマシン1974年9月号の『NEW MODEL TEST(カラー&グラビア) KAWASAKI 400RS』より。 ※編註:以下の復刻記事は当時の雰囲気を再現するために、明らかな誤字やWeb[…]
復刻インプレ[丸山 浩]:走りは最新、その切れ味は本物だ 街乗り:この大柄なボディにして、この軽快な走り!! まず、実車を目の前にして驚いてしまった。1100刀を思わす貫縁があるのだ。またがってみると[…]
4本出しのサイレンサーが憧れだった〈ヤマハ RZV500R〉 400レプリカが隆盛を極める'84年、ヤマハから究極のレーサーレプリカが送り込まれた。当時最高峰のWGP500王者に輝いたYZR500のフ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
日本メーカーによる大排気量車ブーム、その先駆けが750フォア 「威風堂々!」 「世界を震撼させた脅威のスペック!」 「日本の技術力を名実ともに知らしめた記念すべき名車!」 1969年デビューのホンダC[…]
フレンドリーさそのままにタフな旅仕様へとカスタム!! フォーティエイトファイナルエディションが2022年の限定販売にて生産を終えて以来、中古車市場でますます人気の高い空冷スポーツスター。長きに渡り12[…]
ホイールでもステムベアリングでもない、シミーの原因はタイヤ!? そんなことある!? “タイヤの偏摩耗やホイールのアンバランス”は、シミーの原因として挙がる2大要因。だがタイヤは新品交換後数百kmで、明[…]
原点はノートンのフェザーベッド 2輪用フレームには、いろいろな形態が存在する。だから安易に一括りにはできないのだが、近年のオートバイの骨格の原点は、1950年にイギリスのノートンが単気筒レーサーのマン[…]
クールスの玉川さんにZ2カスタムを習う バイク雑誌でメカ解説とメンテナンス記事をうん十年と書いてきた私でしたが、その知識の入り口には初愛車だったZ2カスタムがありました。遊びながら構造と機能と効能を学[…]
最新の関連記事(スクープ/未来予想)
先代譲りの緻密さは最新電脳で究極化?! 旧CB400はハイパーVTECやABSこそあったものの、従来型(NC42)の登場は2007年だけに、近年の最新電脳デバイスは皆無だった。しかし新型CB400は電[…]
エンジンもシャーシも一気に時代が進む 第1回の記事では、新型CB400がトータルバランス路線を取り、77psを発揮するカワサキZX-4Rのような高性能路線には踏み込まない…という情報に対し、プロは「バ[…]
バランス重視キャラでコストと性能を両立か 「カワサキとの真っ向勝負は避けるとしても、出力的に70ps程度は出してくるだろう。フレームは軽量化のため、ダイヤモンド型を採用する可能性が高い」 ヤングマシン[…]
車検のある機種は熊本製作所で作る? 新開発の400cc4気筒エンジンを搭載し、CB400スーパーフォアの後継機として、開発中のホンダ新型CB400。WEBヤングマシンでの注目度もとても高く、2025年[…]
海外市場は“ゴヒャク”で攻める? ヤングマシンが絶賛スクープ中のホンダ新型CB400。搭載される400ccの4気筒エンジンは完全新開発になるとの情報で、電動化が注目されるこのご時勢に、内燃機関でも攻め[…]
人気記事ランキング(全体)
タイや欧州、北米で先行発表済みのW230とメグロS1 カワサキモータースジャパンは、新型モデル「W230」と「メグロS1」をタイ、欧州、北米に続き日本でも2024年11月下旬に発売すると発表。これと併[…]
エンジンもシャーシも一気に時代が進む 第1回の記事では、新型CB400がトータルバランス路線を取り、77psを発揮するカワサキZX-4Rのような高性能路線には踏み込まない…という情報に対し、プロは「バ[…]
メグロS1と共通イメージのタンクデザインへ 目黒製作所の創立100周年となる今年、最新モデルのメグロK3が初のデザインアップデートを受けた。昨秋のジャパンモビリティショー2023で参考出品されたメグロ[…]
先代譲りの緻密さは最新電脳で究極化?! 旧CB400はハイパーVTECやABSこそあったものの、従来型(NC42)の登場は2007年だけに、近年の最新電脳デバイスは皆無だった。しかし新型CB400は電[…]
ナチュラルカラーの「パールシュガーケーンベージュ」と「パールスモーキーグレー」を追加 ホンダは原付二種に人気モデル「CT125ハンターカブ」にニューカラーを追加、一部仕様を変更して2024年12月12[…]
最新の投稿記事(全体)
ローライダーSTカスタム:最新トレンドを反映し、パフォーマンスUPの持ち主だ!! スピードクルーザーとしての戦闘力を全面的にアップしているが、キモとなるのはやはり足まわりだ。見た目にも鮮やかなレッドで[…]
ヘルメット着脱の煩わしさ みなさんはバイクに乗る際、どんな種類のヘルメットを着用していますか。ヘルメットと一言で言ってもいろんなタイプのヘルメットがあり、着脱の手間や煩わしさも大きく変わってきます。わ[…]
125ccクラスは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり[…]
汚れならミガキング、点サビならサビトリキング。状態に合った下処理の後に仕上げのメッキングを 金属素材の上に金属クロムを生成するクロームメッキには、マフラーやフェンダーなどのパーツに施される装飾メッキと[…]
接地感とグリップ力は別のハナシ バイク乗りの皆さんなら、「接地感」という言葉を耳にしたり、口にしたりすることも多いと思う。この「接地感」、言葉通りに受け止めれば「タイヤが路面に接している様子を感じるこ[…]
- 1
- 2