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世の中には星の数ほどスーパーカーがありますが、これほど理性のネジがぶっ飛んだマシンは滅多にありません。アメリカのサリーン社が放ったハッタリなしの公道レーサー、サリーン S7 ツインターボは、掛け値なしにヤバいマシン。電子制御やサポートデバイスとは無縁の、生まれながらにして野性味あふれる1台です。それゆえ、熱狂的なファンが数多く存在し、オークションでも即売する人気っぷり。そんなサリーンのぶっ飛びポイントをチェックしてみましょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys
7.0リッターV8ツインターボ×軽量カーボンボディ
まずは、750馬力を絞り出すエンジンこそサリーンの真骨頂かと。フォード製の巨大な7.0リッターV8エンジンに、ギャレット製のターボをツイン装備。しかも、ブーストは0.4というロウプレッシャーですから、低回転からレスポンス良くパワーを発揮してくれます。
フォードのビッグブロックをベースに、ギャレット・エアリサーチ製ターボを2基がけで武装。ベンチで750馬力を発生させることに成功しています。
これで1247kgとコンパクトカー並みの車重を走らせるわけですから、速くならないほうがおかしいわけで、0-96km/h加速は2.8秒、最高速度は399km/hと公表しています。実際、自動車雑誌がテストした際は354km/h以上を記録し、「時速354kmまでは異次元の速さで到達し、そこから先もまだ伸びる余力は十分にあった」とレポートされています。が、テストコースのストレートの長さが足りない、あるいはこれ以上の超高速域ではタイヤのバースト危険性が高まるといった理由から、400km/hの証明に至る前に計測を断念したというのが生々しい現実です。
カタログによれば、アルミ削り出しの1ピースホイール。先代のNAモデル同様、センターロックを用いるのはスーパーカーの証でしょう。
ABSもトラコンもなし! 牙を剥く「電子制御ゼロ」の恐怖
現代のバイクもクルマも、電子制御(IMUやらトラコンやら)がライダーを守ってくれるのが当たり前。しかしながら、このS7ツインターボにはABSも、トラクションコントロールも、エアバッグすらありません。ベースが完全にレースカー(S7R)ですから、牙を剥いた750馬力を、ドライバーの「右手と右足(とクラッチを踏む左足)」だけでねじ伏せなければなりません。
パワステこそ装備しているものの、トラコンやABSといったサポートデバイスは省かれるという原始的スーパーカー。
一瞬の油断で即座にスピン、あるいはクラッシュ。乗る側にもそれ相応の覚悟と腕前を要求する、じつに男らしくも恐ろしいスパルタンな設計なのです。 もっとも、サリーンのチーフエンジニアに言わせると「絶対的なダウンフォースがあるので、トラクションコントロールなしでもコーナリング性能は誰もが享受できるレベルにある」とのこと。平たく表現すれば「度胸試し」みたいなクルマ、ということでしょう。
全長4774mmに対しホイールベース2700mmと、前後オーバーハングが長いのは高速域での安定性を狙ったディメンション。
時速250kmで車重を超える! 地面を這う怒涛のダウンフォース
ディテールを見ていくと、そのスタイリングはワイド&ローを極めています。全高はわずか1041mm。低学年の小学生よりも車高短というかなりの低さ。この地を這うようなボディと、車体底面のディフューザーが強烈なダウンフォースを生み出し、時速250kmを超えると、車重(1.2トン以上)と同等以上の力で車体を地面に押し付ける計算。これは、理屈の上では「天井を逆さまに走れる」ということに。超高速域の安定性は、二輪のウイングレットの比ではないでしょうが、あくまで直進時のことですからね。やっぱり、コーナリングは怖そうです(笑)。
新車価格9000万円、キムタクも惚れた超希少種⁉
気になるお値段は当時の日本での新車価格は約9000万円。木村拓哉さんがオーナーだったという噂もあります。そもそも、このツインターボ仕様は世界に20数台しか存在しません。
いまや海外の富豪たちが血眼で探すコレクターズアイテムと化しており、オークションに出れば数千万円はおろか、1億円を軽く超えるプレミアム価格で取引されています。今回、出品されたオークションでも約1億1000万〜1億5500万円の指し値となっており、それ以上の落札価格も十分に予想されます。扱いやすさや快適性をこれっぽっちも考慮することなく、純粋な速さと暴力的なパワーだけを追求したサリーンS7。こういう「割り切った狂気」を感じるマシン、嫌いじゃない方は大勢いらっしゃることでしょう。
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