トライアンフモーターサイクルズジャパンは、ボンネビルをベースとして走行性能を高めたカフェレーサー『スラクストン』の生産を2024年で終了することを発表した。これに伴い、最終モデルとなる『スラクストン・ファイナルエディション』を発売する。日本のトライアンフ正規販売店でもすでに予約注文を受け付けており、’24年春に国内入荷予定となっている。価格は215万円だ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:トライアンフモーターサイクルズジャパン
トライアンフのカフェレーサーの長い歴史の幕を下ろす最終モデル
このたびの特別仕様車について、トライアンフのチーフコマーシャルオフィサーを務めるポール・ストラウドは「スラクストンは多くのバイカーにとって特別なバイクであり、イギリスのカフェレーサーシーンのエッセンスを採り入れたファイナルエディションは、私たちにとっても誇り高きバイクです。スラクストンは、トライアンフの歴史に名を刻むであろうファイナルエディションをもって生産終了を迎えます」とコメントし、スラクストンの最終型を惜しむ。
スラクストン・ファイナルエディションは、現在ラインナップされている『スラクストンRS』をベースに、さまざまな特別装備がおごられた仕様で登場する。
- コンペティショングリーンメタリック塗装
- コントラストブラックのサイドパネルとマッドガード
- フューエルタンクとシートカウルにアーティストのイニシャル入り手描きゴールドライニング
- タンク上のゴールドのヘリテイジトライアンフロゴ
- ファイナルエディション エンジンバッジ
- 証明書
ボディカラーのコンペティショングリーンメタリックは、英国車らしさにあふれた深みある緑色で、燃料タンクとシングルシートカウルがこの色でペイントされる。どちらにも気品ある金色でラインがあるアーティストの手作業で描かれており、そのサインが燃料タンクのどこかに隠されている。また、燃料タンクのトライアンフロゴは、往年のスタイルが採用されている。
添付される証明書には、車体番号のほかにスラクストン1200デザインチームのメンバーと、トライアンフCEOであるニック・ブロアのサインが入る。
また、このほかにファイナルエディション専用オプションパーツとして、カフェレーサースタイルをさらに強調するコックピットフェアリングが用意される。
1964年にレーサーとして初登場、2005年にカフェレーサーとして復活
スラクストンのルーツは、トライアンフが1964年に台数限定で販売したレーサーだ。5年後の’69年には、イギリスで開催されていた『スラクストン500マイルレース』で表彰台を独占し、その速さを見せつけた。トライアンフをはじめとする英国車だけでなく、ホンダやスズキのマシンも参戦する人気レースだったが、イギリス国内のバイク産業の斜陽化と歩みをあわせるように消えていった。
それから40年以上が経った2005年、トライアンフはスラクストンをカフェレーサーとして復活させた。ベースマシンはボンネビルで、当時のエンジンは空冷、燃料供給はキャブレターだ。伝統の並列2気筒エンジンは、86mmから90mmへボアアップして大排気量か(790cc→865cc)するとともにハイリフトカムなどの採用のほか、吸排気系強化によって最高出力は62psから70psへ向上。また、低いポジションのセパレートハンドルとバックステップといったスポーティなライディングポジションだけでなく、フロントホイールを18インチから17インチへ小径化するとともに、キャスター角を29度から28度とすることで俊敏なハンドリング特性を与えられた高性能スポーツツインだった。
ボンネビルの進化とともにスラクストンもエンジンやシャシーの改良を重ね、スラクストンR、スラクストンRSという、スポーツ性能をさらに引き上げたモデルも登場させた。スラクストン ファイナルエディションのベースとなったのは、最新スラクストンRSである。
カフェレーサースタイルを作り出す、低いポジションのセパレートハンドルとバーエンドミラーがスラクストンのアイコンである。しかしルックスだけのスポーティモデルではない。
RSの冠はもちろん伊達ではなく、1200cc水冷並列2気筒SOHCエンジンは、ハイコンプピストン採用のほか、カムプロフィールやポートの改良などにより、ベースとなったボンネビルの最高出力80psを大きく上回る105psを発生する。
足まわりも大きく強化され、フロントサスペンションはショーワ製43mm倒立ビッグピストンフォーク、リヤサスペンションはオーリンズ製リザーバータンク付きフルアジャスタブルツインショックを装備。フロントブレーキには、310mm径ダブルディスクとブレンボ製M50 4ピストンラジアルマウントモノブロックキャリパーを採用する。
前後ホイールは17インチのワイヤースポークタイプ、タイヤにはメッツラー・レーステックPRを採用することで、スポーティなハンドリングと確実なグリップ力、そしてトラディショナルなスタイルを両立している。
電子制御デバイスも最新のものを備えており、ロード、レイン、スポーツの3種を備えるライディングモードは、スロットルレスポンスとトラクションコントロールの介入度を調整することが可能だ。また、ギヤポジションインジケーター、燃料計、距離計などを表示するツインロック型メーターのほか、USB充電ポートを装備するなどユーティリティも充実している。
最新カフェレーサーという、ブリティッシュモーターサイクルカルチャーの大きな存在が消えゆくのは実に惜しいことだが、スラクストンの名と歴史はファイナルエディションを有終の美として後世まで残るはずだ。
スラクストン ファイナルエディション のスタイリングと主要諸元
【TRIUMPH Thruxton Final Edition】主要諸元■全長─ 全幅745 全高1030 軸距1415 シート高810(各mm) 車重217kg■水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 1200cc 105ps/7500rpm 11.4kg-m/4250rpm 変速機6段 燃料タンク容量14L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ●価格:215万円 ●色:緑 ●発売時期:2024年春 ※スペックは欧州仕様
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
生産して数週間後に活動停止、終戦直後までお蔵入りになった原初のモーターサイクルをオマージュ MVアグスタは本国イタリアで「スーパーヴェローチェ98」を発表した。世界300台限定モデルで、MVアグスタが[…]
KTMのブラバス仕様第2弾がいよいよこの夏に販売開始! ブラバスはメルセデス・ベンツのチューナーで、スーパーカー級のカスタムコンプリート車を製造するメーカーだ。これまではメルセデス・ベンツを専門として[…]
イタリア海軍航空隊とV100 マンデッロ・アヴィアツィオーネ・ナヴァーレ(写真・全98点) イタリア海軍の戦闘機 F-35Bにちなむスペシャルカラーをまとった特別仕様車 『V100 マンデッロ・アヴィ[…]
100年の歴史を記念したエクスクルーシブなモデル 航空機の製造からスタートしたBMWが設立したのは1916年のこと。しかし1919年のベルサイユ条約によって航空機および航空機用エンジンの製造が禁止され[…]
10モデルが発表され、日本には7モデルが上陸! 日本で発売される7モデルを見てみよう Bonneville T100 Chrome Edition Bonneville T120 Chrome Edi[…]
最新の関連記事(トライアンフ)
トルクが凄ぇ! でも意外なほど普通に走る 2294ccの直列3気筒エンジンを搭載した初代ロケットIII(現在はロケット3)を初めて目の前にしたとき、こんな大きなバイクをまともに走らせられるんだろうかと[…]
マン島TTのプロダクション750クラスで1971~1975年を5連覇したレーシングマシンをトリビュート トライアンフモーターサイクルズジャパンは、白いボディに青と赤を配した特別仕様車「Trident […]
本気系の先代675から間口の広いマシンにキャラ変 トライアンフの3気筒ミドルフルカウルスポーツであるデイトナが久々に帰ってきた。このスタイルを待っていたファンも多かったのではないだろうか。’16年に生[…]
こんにちは!マットです! 先日、「デイトナ」のペットネームを与えられたトライアンフのスーパースポーツバイク、新型デイトナ660のメディア試乗会に行ってきました。 実は僕、過去に同社の「デイトナ675」[…]
パワー&トルクアップ、新型アルミホイール採用 量産車で世界最大となる2457cc直列3気筒エンジンを搭載するモンスターマシン・ロケット3シリーズがモデルチェンジ。車名には『STORM=嵐』の名が追加さ[…]
最新の関連記事(新型ヘリテイジ/ネオクラシック)
モーターサイクルショーで初公開されたINT 650 ロイヤルエンフィールド製品を輸入・販売するピーシーアイは、マイナーチェンジしたINT 650(アイエヌティー・ロクゴーマル)を2024年4月18日に[…]
XT500をベースにSR500/400が誕生、ロードスポーツとしての好バランスで400が生き残った ワイズギアが「SR400復刻カラー外装セット」を8月下旬以降に発売すると発表した。 SR400は、1[…]
水冷単気筒エンジン+倒立フロントフォークを採用! 英国マットモーターサイクルを取り扱うピーシーアイは、新型車「DRK-01」を2024年4月18日に発売した。じっさいに車両が販売店に届くのは6月下旬予[…]
MT-09ベースのネオレトロ! ブランニューモデルXSR900 GPの登場と同時に、ネイキッド仕様のXSR900にも最新カラーが登場した! こちらは白×赤に金の足まわりを備えたシルキーホワイトと、全身[…]
あの頃のレーシングマシン感! ヤマハは、XSR900をベースにカウルや超小型ヘッドライト、セパレートハンドルなど1980年代レーサーレプリカを思わせるディテールとしたブランニューマシン「XSR900 […]
人気記事ランキング(全体)
どうもアイキョウです。ワークマンにはさまざまなレインウェアがあります。 雨の日でも通勤でバイクに乗るならワークマンのバイカーズという製品がオススメです。ワークマンレインウェアの中では高額な5800円な[…]
330円の万能ソケット買ったので試してみたい いつ頃からだろうか?100円ショップが100円だけではなくなってしまったのは。工具のコーナーも例外ではなく、100円、200円、500円、ものによっては1[…]
――はじめに、津久井高校の県内の位置付けや特色を教えてください。 熊坂:県立高校に移管される前も含めると、明治35年に始まった学校なので120年を超える歴史があります。全日制と夜間定時制の2課程ありま[…]
※2024年3月にWEBヤングマシンで大きな反響を呼んだ記事をあらためて紹介します。こちらは第3位の記事です(初公開日:2024年3月11日)。 バイクはオービスに引っかかることはない!? ウワサの真[…]
リスクの高いスポーツは社会に受け入れられない……? 3月末、日本にいた僕は東京モーターサイクルショー(TMS)にお邪魔しました。会場を回りながら肌で感じたのは、「レース、やばいぞ……」ということでした[…]
最新の投稿記事(全体)
①バットサイクル【映画「バットマン」劇中車(1966年)】 バットマンシリーズ初の長編映画として1966年に公開された“バットマン”に登場。バットモービルのバイク版として今ではおなじみの存在だが、初登[…]
こんにちは、マットです!! 今回はアメリカ最古のモーターサイクルメーカーで有名なインディアンモーターサイクルのクルーザーモデルである新型スポーツチーフに試乗してきました!! 排気量1890cc!!ど迫[…]
トルクが凄ぇ! でも意外なほど普通に走る 2294ccの直列3気筒エンジンを搭載した初代ロケットIII(現在はロケット3)を初めて目の前にしたとき、こんな大きなバイクをまともに走らせられるんだろうかと[…]
精度向上と新たなシール開発で、今なお進化を続けるチェーン技術 芸術家であり科学者でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチが15世紀に考案し、19世紀に現在とほぼ同様の形態で実用化されたローラーチェーンは、バ[…]
車体や外装だけでなく…メーターまでワンオフだ!! カワサキ・ニンジャZX-10Rエンジンをオリジナルのアルミフレームに搭載した“最強”のカタナ。兵庫県でECUチューニングなどを手掛ける10ファクトリー[…]
- 1
- 2