
3Dプリンターは樹脂フィラメントを溶かして積層して立体物を出力するアイテムですが、プラスチック製ながら設計次第では強度を出すことも可能。そして、それで特殊工具を作ることも可能です。めったに使わないレア工具や特殊すぎるワンオフなどでも自分好みでデザイン可能!エンジン組み立てに使った工具をレポートいたします。いや~便利な世の中になったもんだ!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
3Dプリンターで特殊工具が作れる
頼れる相棒。めちゃくちゃ使ってますが未だに壊れる気配ナシ!
「3Dプリンターで工具を作ることはできるのか?」
はい、作れます。ていうか実際に作って、ちゃんと使えました! 今回はそのレポートでゴザイマス。今回、3Dプリンターで作ってみたのは、古いヤマハエンジン用の「クラッチアウターホルダー」。結果から先に申し上げますと・・・余裕で本締めできました。しかも使っていて不安感ゼロ。「これ本当に樹脂製なんだよな?」と思うぐらい普通に使えたのですよ。
「3Dプリンターで工具作るつっても、すぐ壊れるでしょ?」というご意見をよく聞きます。分かります。分かりますとも。だって一般的な3Dプリンターはプラスチックですからね。強度が出せるイメージがない。
家庭用3Dプリンターの多くは、フィラメントを溶かしながら一層ずつ積み上げていく方式。こんな感じ(↓)で層になっています。
つまり材料としては一体成型に見えても、実際にはミルフィーユのような構造になっているのです。当然ながら強度には限界があります。押し付ける方向には強い。だけど、積層方向へ引っ張られる力には驚くほど弱い。
だから設計を間違えると、パキッと割れることもあります。では、3Dプリンターで特殊工具は作れないのか? ハッキリ言わせてください。その答えは「否」!
たしかに、積層面に対して垂直方向への引っ張りには弱いのですが、逆に90度の水平方向にはかなりの強度があります。ベニア板を思い浮かべてほしいのですが、それと同じですね。積層していくということは、つまりは繊維状になっているわけで、しかもクロスする方向に積層されていくので引っ張りに強いのが想像できるのではないでしょうか。
つまりは ≪必要とされる強度の方向≫ を考えて、≪それに見合った設計≫ と≪フィラメントの積層方向≫ を考えて、さらには ≪必要プラスアルファの肉厚と構造≫ にすれば、工具として十分機能を果たせるということ。
設計次第で強度は爆上げ可能!ということです。さらにはフィラメントにはいろいろな素材があるので、柔軟性のあるPETGや強度の出しやすいカーボンフィラメントなどをチョイスすれば、さらに信頼性をあげることも可能なのです。それでは、実際にやってみましょうか!
クラッチホルダーを設計してみる
今回のターゲットはヤマハポッケのエンジン。エンジン組み立てといえば特殊工具のオンパレードなのですが、難所となったのはココです。クラッチの組み立て!
このクラッチというシロモノは「インナー」と「アウター」が別々に回転する構造で、クラッチ板をスプリングで押し付けることによって動力を伝達するのですが、組み立てでセンターナットを締め付ける際にはどうしても空回りしてしまうのです。通常ならこんなカタチの「クラッチアウターホルダー」を使います。
でもね、これ、持ってないんだ。だって、メーカーによって形状違うので、全部揃えるのは高いし邪魔だし場所とるんですもん。ホンダのは持っているけどヤマハのはなし。共通だったらいいのだけど使えないのですよ。
とか言っても、工具がなきゃエンジン組み立てられないでしょ?ってんで、さっそく即席のクラッチアウターホルダーを設計することにしました。クラッチアウターの穴を利用するとして、その直径を測って、それをもとに円形のホルダーを設計します。
3D-CADソフトで、円を描いてくいっと引っ張って、円周上に等間隔に小さな円を描いて、こんどはぐいっと押し込んで穴をあけて、と(3DCADってそんな感じの直感操作です)
自作の工具が無双する
で、出来上がったのがコレ(↓)
カーボンのハイパーPLAで見るからに強くて軽そうなフォルム。そして、寸分違わずクラッチにジャストフィット!
「おお!測ったようだ!」(←測ったんだろ!ってツッコミお願いします)。
そして、手持ちのユニバーサルホルダーを差し込んで
ソケットレンチを使えばぐいっと締め込みができました! これ、プレート自体が5ミリ厚で、さらにチカラがかかるところはさらに5ミリ厚のリブを立てているので、円盤を捻れば割れてしまいますが、使用時の回転方向への強度は相当なものになります。インパクト使ってもビクともしません。
ちなみに、これ一個作るのにかかった材料代は、フィラメントの重量換算でおおよそ30円(!)ぐらい。そうです。とんでもなく安いのですよ。もし寸法合わなかったり強度不足だったとしても、また設計してすぐ作り直せますからね。自分で作れるってのが最大の武器です!
「ないなら作ればいい」と言える時代
・・・というわけで、無事にエンジンを組み立てることができました。
いかがでしたでしょうか? 3Dプリンターというとフィギュアだったり、もっと外装パーツを作るようなイメージが強いですが、設計や素材を気を付ければ、強度が必要な部分の部品を作ることも可能になってきています。
高度な3Dプリンターなら金属と遜色ない素材で出力することも可能になってきているので、これからどんどん面白くなっていくことでしょう! ちなみに、今回とりあげた「ヤマハポッケ系エンジン用クラッチアウターホルダー」は、ファイル共有サイトBOOTHにて無料公開してます。よかったらそっちもチェックしてみてくださいね。
また何か特殊工具を作ったらシェアしたいと思います。この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
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