今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は2ストローク車の歴史を変えたヤマハRZシリーズの最高峰・RZV500Rについて、メンテナンス上のウィークポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:モトプラン
周辺部品が正常なら焼きつきは起こらない?
’80年代中盤以前の2ストローク車のトラブルと言えば、誰もが最初に思い浮かべるのはピストン&シリンダーの焼きつきだろう。事実、モトプランに入庫するRZVも焼きつきは珍しくないのだが、その原因は周辺部品や乗り方…という事例が少なくないそうだ。
「オイルポンプの作動不良、オイルデリバリーパイプの破損、粗悪なオイルの使用、キャブレターの詰まり、無謀運転(高回転を長時間維持するだけではなく、渋滞路におけるダラダラ走行もNG)によるオーバーヒートなど、焼きつきの原因はいろいろありますからね。原因を特定しないかぎり、焼きつきは解消できないんです」
それ以外では、ガソリンタンク内の錆び/フューエルコックの不良を起因とするキャブレターのオーバーフロー/クランクサイドシールの抜け/ウォーターポンプシールの破損/レギュレターレクチファイヤのパンクなどが、RZVでよく聞くトラブルである。
「そういった問題はRZVに限った話ではないでしょう。レギュレターレクチファイヤに関しては、確かに当時のヤマハ車はトラブルが多かったのですが、他の問題の原因はいずれも経年劣化。逆に言うなら、劣化した部品を新品に交換、あるいは適正な状態に整備してやれば、RZVはメンテナンスフリーに近い感覚で楽しめるんです。もっとも現代のバイクとは違って、2ストオイルの量と小サイズのバッテリー状態はマメにチェックする必要がありますけどね」
シリンダー&ピストン:オーバーサイズピストンとボーリングで再生可能
クランクシャフト:サイドシールとベアリングは消耗部品
リードバルブ:他機種用の加工で純正の代替品を製作
キャブレター:RZ/RZ-Rに通じる丸ピストンのVM
フューエルコック:内部のダイヤフラムが劣化
スパークプラグ:ナットの緩みが不調につながる
オイルポンプ:本体の作動不良とホースの硬化に注意
ウォーターポンプ:ミッションオイルがコーヒー牛乳化?
ラジエーターキャップ:耐圧性の低下がオーバーヒートに発展
リカバリータンクキャップ:新品キャップで漏れを解消
フロントフォーク:他機種用への変更も考慮
フロントブレーキ:最善策は乗り手によりけり
リヤショック:ナイトロンとオーリンズが定番
リヤディスク:ウェーブディスクで補修兼カスタム
タイヤ:伝統のK300GPを推奨
電装パーツ:点火系の代替部品と発電系の対策品
メインハーネス:ハイサイドが手がける復刻版を使用
バッテリー:容量が少な目なのでマメに液量を点検
パーツ流通:絶望的ではないが楽観視はできない
エンジンの構造はRZ-R/TZRに通じる部分があったものの、RZVはほとんどのパーツが専用設計。しかも生産期間が短く、生産台数が少なかったため、部品の供給状況はかなり厳しい。
「ウチの場合は大量の新品/中古部品をストックしているし、他機種の流用という手法も確立しているので、修理で困ったり迷ったりすることはありません。でも一般的な中古車販売店やプライベーターがこのバイクをいじるとなったら、至るところで頭を抱えると思いますよ」(川原氏)
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