
昭和の男でロータス・ヨーロッパに憧れなかった方は少数派かもしれません。なにしろ、サーキットの狼で主人公を務める風吹裕矢が颯爽と多角形コーナリングをきめただけでなく、小排気量ながらスーパーカーショーではカウンタックやBBに勝るとも劣らない大人気を博していたのです。聞けば、ロータス・ヨーロッパこそクルマ好きになったきっかけだったという方も珍しくありません。ともあれ、ロータス・ヨーロッパは昭和男の原点と呼んでも差し支えなさそうです。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
実は9000台程度しか生産されなかったレアモデル
実のところヨーロッパは、1966年から1975年の間に9000台程度が製造されたにすぎません(諸説あります)。ロータスの会社規模を顧みれば、それでも多いほうといえますが、現存する個体は少ないこと間違いありません。
時代ごとに4タイプがリリースされており、それぞれの生産台数はシリーズ1:644、シリーズ2(タイプ54/65):2750~3615、ツインカム:1580、スペシャル:3130~4950台となっています。が、当時の社内資料、とくに紙の資料は散逸しているとのことで、正確なところは不明とすべきでしょう。
いずれのモデルも特徴があり深堀りすると面白いのですが、今回はド定番のJPSカラーをまとったスペシャルを選びました。これは1972年にロータスF1がタイトルを獲得した記念モデルという位置づけです。
言うまでもないでしょうが、JPSはジョン・プレイヤー・スペシャル(John Player Special)というタバコメーカーであり、チーム・ロータスの大スポンサーでありました。黒地にゴールドのストライプが目印で、JPSのロゴを使わずともそれとわかるのも大きな特徴でしょう。
ロータス・ヨーロッパの最終シリーズとなるスペシャルは1972~1975年の間に5000台弱がロールアウトして、シリーズ中最多生産数となります。
先代のツインカムから北米仕様としてリヤのバーチカルフィン(サイドウィンドウの後ろ)が低く直され、後方視界が拡大しています。
わずかなカスタムで豹変するツインカムエンジン
1972年デビューのスペシャルは、先代のツインカムをさらにチューンナップしたエンジンが特徴で、ヘッドカバーに鋳込まれたビッグバルブと呼ばれることもあります。
名前の通り、インテークバルブの拡大、高められた圧縮比などによって1558ccから126ps/6500rpm、15.6kgm/5500rpmを絞り出すことに成功。たったそれだけ、と思われるかもしれませんが、車重700kgそこそこですからパフォーマンスは十分で、0-60mphにしても6.6秒と当時としては俊足の部類だったに違いありません。
もっとも、イギリス仕様のデロルト製キャブをウェーバーに換装し、コスワースのハイカムを組んだりすると豹変するのだとか。昔のネイティブなエンジンはこれだから楽しいのです。
フォード製ブロックにロータスのツインカムヘッドが載せられ、インテークバルブやピストン&コンロッドのチューンにより1558ccから126psを発揮する「ビッグバルブ・ユニット」。
憧れのヨーロッパを手に入れるならお早めに!
シリーズを通してY字バックボーンフレーム、F:ダブルウィッシュボーン、R:ラジアスアームとロアトランスバースリンクというパッケージに変わりはありませんが、どうやらフレームにしろラジアスアームにしろ、細かなランニングチェンジがなされており、スペシャルに至っては軽量&路面追従性といったメリットに加え、弱点だったドライブシャフトへの負担もかなり軽減されている模様。
このアップグレードはグループ4レーシングカーだったタイプ47からのフィードバックも無視できません。なにしろ、あちらはほとんど設計変更と呼べるほどのカスタムであり、ユーザーは「どうしてあれを採用しなかった」と歯噛みしたとか。このあたり、チャップマンらしいビジネスを優先した狡猾さといえるのではないでしょうか。
さて、アメリカ中西部に長く保存されていたという個体ですが、コンディションは素晴らしいもの。オリジナルペイントが維持されているのはもちろん、FRPボディにも補修の跡は見当たらず、高温多湿の日本では望むべくもない美しさです。
エンジンをはじめ、機関部も妙なカスタムは加えられず、出荷当時のままだそうです。アメリカでのロータス人気はMGやトライアンフに比べるといささか劣るとされてきましたが、落札価格は4万7600ドル(約740万円)となかなかの数字。
これからも、ヨーロッパはコレクターズアイテムとしてプレミア化していくのは疑いようもありません。あこがれのヨーロッパを手に入れるなら、今が好機といえるでしょう。
パナスポーツのホイールもスペシャルの定番パーツ。これで人気が出たか、国内でもロードスターなどに装着するユーザーが増えました。
外観イメージ
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