
1990年代から2000年までの間、ランボルギーニの売り物はディアブロ一択だったといっても過言ではありません。なにしろ、親会社がクライスラーからメガテック、Vパワー、アウディと目まぐるしく変わるタイミングで、新型の開発などもってのほかだったのです。とはいえ、そのおかげで全リソースがディアブロに集中し、充実したマイナーチェンジや派生モデル、果てはランボルギーニ初のレーシングカーまで生まれることになりました。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
ワンメイクレース用に誕生した初のレーシングカー
ディアブロSV-Rは、その名が示すとおりSVをベースとしたレーシングカー。1995年に、スイスの実業家、フィリップ・シャリオールによってディアブロのワンメイクレースが企画されたのが誕生のきっかけ。
これは、当初ルマン24時間耐久レースのサポートレースとして開催され、1台に2人のドライバー、週末に2レース、プロアマフォーマットというレギュレーション。また、レースによってはFIA GT1と並行して走ることもあり、後のGT3ルールの基礎となったとされています。
コンストラクションは工場内でSVの半完成車を1台ずつ仕上げるスタイルで、当時のランボルギーニにとってデフォルトとなる作業。それゆえ、34台を仕上げるのに2年ほど要しているとのこと。
いささかスローペースと言わざるを得ませんが、仕上がりはその分丁寧であり、ファクトリー初のレーシングカーとしては上々の出来栄えです。たとえば、ストックのSVはドアやルーフにアルミを使うものの、SV-Rは独自に開発した複合素材「アウトクラーベ」で全身を覆っています。
その他、カーボン素材の多用もあって、車重はSVの1530kgから1385kgまで軽量化を達成。言うまでもなく軽量化のノウハウは、SV以降のストリートモデルにも反映されています。
ランボルギーニ初のレーシングカー、ディアブロSV-Rは1996年デビュー。前年に発売されたSVをベースにワンメイクレース仕様としたモデル。
3年の間に34台が製造され、ワンメイクレースのほかヨーロピアンGT選手権のGT3クラスなどに参戦しています。
フルチューンのV12サウンドはレーサーそのもの
5.7リッターのV12エンジンもまた、レースユースに的を絞ったチューンナップでストックの492ps/7000rpmから約540ps/7800rpmへと向上。ECUのリセッティング、可変バルブタイミングの調整、そしてストレートパイプの採用など、かなりの範囲に手が及んでいるのが特徴でしょう。
実際、エキゾストノートはレーシングカーそのものの咆哮とボリュームであり、リストリクターが装着されたGTマシンとは一線を画したといいます。
シャーシについては詳らかにされていませんが、ダンパーやブレーキシステムが強化されているのは想像にがたくありません。
また、タイヤについてはピレリとダンロップの2社が供給しており、微妙にサイズが異なっています。が、ホイールサイズはSVと等しくフロント8.5J x 17、リヤ13J x 18なのでメーカーごとのサイズ表記が違っているのでしょう。
また、当初OZの中空スポークホイールを装着していましたが、一説によると強度不足からスピードラインに変更されたとのこと。実際のところ、ご紹介しているマシン以外にもOZを装着したレースシーンも多々あるので、真偽のほどは不明としておきましょう。
V12エンジンは5.7リッターの排気量はそのままに、吸排気、ECU、そして可変バルブタイミング機構などをチューンナップし、540馬力以上を発揮。
日本では公道仕様に改造されていた⁉
34台中20番目となるこちらは、2000年代初頭までヨーロピアンGTに出場していたものの、その後に日本のコレクターが購入し、なんと公道仕様に改造されました。
ヘッドライトやウインカーなど保安部品はもちろん、ナビやレーダー探知機まで装備されていたとのこと。さぞや痛快なドライブだったかと思いますが、次はアメリカのコレクターの手にわたり、再びレーシングカーへと戻されています。
その際、アウディがプロデュースしたとされる6.0リッターV12への換装も考えられたとのことですが、5.7リッターのフルチューンエンジンのほうがサーキットには適しているとされ、そのまま活かされています。
なお、オークションでは70~90万ドル(約1億1000万~1億4000万円)の指値が付いており、新車当時(5000~6000万円?)に比べるとかなりのプレミア価格。ですが、ランボルギーニ初のファクトリー製レーサーならば、誰もが納得するはずです。
OZの中空スポークホイールが純正チョイスですが、強度の問題から後にスピードラインに変わったという説もあります。
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