
●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:Giuseppe Morri archive
エンジンコンセプトより適性アライメント優先のイタリアン
ドゥカティに代表されるイタリア製スーパースポーツは、不慣れなビギナーには向かない個性的な乗り味のハンドリング…といったイメージがある。たしかに、キャリアが浅くても何とか扱えるよう敷居を低くする日本車に対し、タウンスピードでの扱いは慣れてもらえば解決するので、肝心のコーナリングでもっとも効率の良いリーン→旋回ができるよう、エンジンのレイアウトや搭載位置、そして補機類の配置や前輪とのアライメント関係を最優先するのが常套手段だ。
近年では電子制御がエンジンだけでなくサスペンションやABSにも及んでおり、このあたりを妥協してきた日本製スーパースポーツは、それらを最優先してきた海外メーカーに対し、残念ながら後れ気味になってきた。
そうした開発手順のイタリアと日本の違いを象徴する史実として、1985年のヤマハFZ750とそのエンジン供給を受けたビモータYB4での展開が興味深い。
当時のヤマハは、4ストエンジン搭載車についてはツーリングスポーツが主体で、パフォーマンスマシンの領域に斬り込んでいなかったため、渾身の4ストスーパースポーツ本命としてFZ750を開発していた。
開発当初は、日本初のV4レイアウトでレーシングマシンまで開発、満を持していた発表間近に、ホンダからV4のVF750が登場してしまった。
そこでヤマハは模倣イメージを嫌い、V4バンク間で真下へ吸気していたストレートポートのダウンドラフトを活かし、V4の片バンクを横に並べた「ジェネシスエンジン」と名づけた前傾45°の直4を発表。
当時、一般的にはダウンドラフトのストレート吸気が効率良いといわれても、ジェネシスエンジンと呼ぶほどの大改革には見えず、生粋のヤマハファンには喜ばれたが、狙ったパフォーマンスマシンとしてのフロントエンドには位置していなかった。
そこには、ハンドリングで先んじたイメージがないのも弱みとしてあったのは否めない。
同じFZ750エンジンの供給を受けたビモータ。エンジン搭載位置を変更し世界タイトル獲得
ビモータのエンジニア、フェデリコ・マルティーニがFZ750エンジンでまず取り組んだのが、搭載位置。すでにリヤにワイドラジアルを設定した現在とほぼ変わらない仕様にとって、前輪のプロファイルとの関係でリーンの途中でアライメント変化が起きないエンジン位置は、優れたハンドリングを得るのに必須だったからだ……
※本記事は2021年5月5日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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