
ひところ、逆輸入車がもてはやされた時期があったこと、ベテランならばご記憶かと。国内で見慣れたモデルだとしても、海を渡ってきたと思うとどこか「アカ抜けた」気がしたものでした。となると、海外向けモデルを国内で乗るというのもどこか似たようなニュアンスで、ホンダはHONDAになり、カワサキだってKAWASAKIと呼びたくなりがち。そんなイメージが先行するビンテージモデルをご紹介しましょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
和のテイストを煮詰めた神社仏閣デザイン
ホンダ・ドリームといえば、今でこそディーラー名として知られてはいるものの、元をただせば1949年に発売されたホンダの大ヒットモデルです。「ドリーム=夢」と名付けたのは本田宗一郎ご本人と言われ、ホンダの名を世界に知らしめる記念碑的モデルといっていいでしょう。
初代のDモデルからスタートし、プレスバックボーンフレームを採用したSA(1955)、足まわりをブラッシュアップしたME/MF(1957)など進化を遂げ、ある種の完成形に至ったのがCシリーズでした。
1957年9月、量産第一号車のC70がロールアウト。構想を含めて2年ほどで生産にこぎつけているのですが、それだけの期間で世界に通じるどころか、大人気を博すバイクを作ってしまったのですから、当時のホンダ恐るべし!でしょう。
また、本田宗一郎自らが考案したとされる「神社仏閣デザイン」も独創的で、他社が決して真似できないものでした。これは、世界へ向けて日本独自のデザインを追求したもので、角型ヘッドライトやフロントフェンダーなどの角基調や、プレス鋼板で作られたハンドルなどそこかしこにこだわりの形状が見られるはず。
1966年モデルのホンダCA78ドリーム。Aが表す通りアメリカ仕様車で、基本的には1961年に発売されたCA77の後期モデルにあたります。
本田宗一郎が考案したとされる日本独特の美学を用いた「神社仏閣デザイン」に定評があり、日本はもとよりアメリカでも多くのコレクターがいる模様。
CB伝説の礎を築いた空冷2気筒エンジン
また、それまでホンダのバイク用エンジンは単気筒(ドリーム E型など)でしたが、C70で初めて2気筒エンジンが採用されました。当時、ヤマハやスズキの2ストローク勢が性能を高めていたこともあり、ホンダは意地でも4ストロークエンジンの性能向上を実現したかったのです。
C70では排気量247ccボア×ストローク:54.0×54.0(mm)・圧縮比8.2・最高出力18ps/7400rpm、最大トルク1.8kg-m/6000rpmというパフォーマンス。言うまでもなく、その後のホンダCB72スポーツなどに積まれたエンジンの礎となったのでした。
前述の通りCシリーズは世界を見据えた戦略モデルでしたので、輸出もさかんに行われました。ご紹介しているCA78ドリームは1966年モデル、1963年に北米でデビューしてから1969年まで販売されたとされています。
なお、車名に追加されているAは北米仕様を表したもの。初代C70と比べると、特徴的だったプレス鋼板ハンドルが一般的なパイプハンドルに変わっているぐらいで、ほぼ同じルックス。
一方で、エンジンは排気量305cc、ボア×ストローク:60.0×54.0(mm)、圧縮比8.2、最高出力21ps/7200rpm、最大トルク2.2kg-m/6000rpmへと変更されています。
305ccの空冷2気筒4ストロークエンジンは21ps/2.2kgm。後のCBスポーツが搭載するのは発展型エンジン。
サバイバーの値段は天井知らずの値上がり中⁉
さて今回紹介しているモデル、外装はオリジナルが保たれており、とても60年前のモデルとは思えないほどのコンディション。純正アクセサリーかどうかは不明ながら、同色のサイドパニアはじつに魅力的。右側ケースには車載工具をセットしているとのことですから、北米専用パーツとしてラインナップしていた可能性もあります。
また、クロームの艶も生きているリヤラゲッジもビンテージテイストを醸すだけでなく実用性も満点かと。その他、2アップシートには小さな背もたれが追加されるなど、タンデムツーリングも絵になる仕上がりです。
オークションに出品されたアメリカ、西海岸ではCシリーズの人気が高いようで、コンディションが良好、すなわちオリジナルペイント、パーツがきれいに維持されていると2000~4000ドル(約30〜60万円)、加えて走行距離が短い「サバイバー(生き残り)」などと呼ばれる売り物は軽く6000ドル(約90万円)を超える値段で取引されているとか。
いずれにしろ、海を渡っただけなのに、どこかアメリカンムードの漂うホンダ・ドリームはじつに魅力的なモデルに違いありません。
未確認ながら、純正アクセサリーかのようにフィットしているパニアケース。保存状態もきわめて良好です。
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