
オッサン的に馴染めない言葉に「タイパ」というものがある。タイパ、つまりは時間対効果(タイムパフォーマンス)・・・とは真逆になってしまった「とても非効率で効果も微妙な錆落とし」をやってみたので、レポートしてみようかと思います。役に立つのかわからない。だけどいいんです。・・・楽しいからっ!!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
いま錆の電気分解がアツい!(個人的に)
「錆落とし」
バイクやクルマのレストアで切っても切れないのが、まさにコレ「錆」との戦いですよね。鉄と酸素が結びつくと錆になる。そのままだとどんどん進行して鉄を侵食、劣化させてしまうので錆を落とさねばならない。
そのためには、錆落としの液体、錆落としクリーム、錆落とし溶剤、変わり種ではトイレ洗剤のサンポールを使う方法や、最近じゃレーザーまでありますね。でも、ずっと気になってた方法が、YouTubeで出てくる「アメリカのファーザー流錆落とし方法」とかで見た、液体に電極を放り込んで錆を落とす!というもの。
「錆の電気分解」というものらしい。錆を! 電気で分解!? ナニソレ面白そう♪ てことで、さっそくやってみた結果がコチラです。この赤くサビてしまった部品(↓)を
こういうアイテムを使って、
こうして、
こうなりました!
たしかに錆が落ちました。これまでやってきたあらゆる方法ともナニカチガウ。ザラザラにならないし、表面が溶けたという印象もない。メッキはやたらにツルツル♪に仕上がってる一方で、錆が落ちてないトコロはとことん落ちてない! なんかいろいろと癖が多そうな方法なのですよ。
つまりは電気メッキの逆流ってことかい?
錆の電気分解の方法の前に、そもそも錆について考えてみますね。
鉄の表面に水分が付くと、その水分が電気を通す通り道になり、鉄の一部から電子が抜けて「鉄イオン」になります。一方、その電子は別の場所で酸素と水の反応に使われ、できた物質が鉄イオンと結びつく。そうして生まれた水酸化物や酸化物が、いわゆる赤錆へと変化していくワケです。
つまり、鉄が空気中の酸素と単純に合体するというより、実際には水分を介した小さな電池反応が鉄の表面で起きているらしい。塩分などがあると水が電気を通しやすくなるので、さらに錆びやすくなります。
そして、錆の電気分解のメカニズムがコチラ↓
錆を落としたい部品を電源のマイナス(-)側、犠牲になってもらう鉄板などをプラス(+)側につなぎ、電気を通しやすくするための電解液に沈めます。
電気を流すと、マイナス側の部品には電子が送り込まれ、錆の一部が還元されて性質が変わります。同時に部品の表面から水素の泡が発生し、その泡が錆を浮かせたり、剥がれやすくしたりする。反対にプラス側の鉄板は酸化して、少しずつ溶けたり、茶色や黒色の泥のような物質になったりします。
つまりは、錆を薬品で溶かして削り取るというより「錆びる時と反対方向に電子を流して、錆を剥がれやすい状態に戻す」というイメージでしょうか。もうお気づきかと思いますが、これって仕組みだけを見ると電気メッキと似ていますよね?
厳密には違うのですが、イメージとしては錆部品が犠牲電極に移るような、そんな感じ(実際に犠牲電極がめっちゃサビる!)
使う電解液は家にあるもの(セスキ炭酸ソーダ)だし、なんかほかの溶剤やケミカルに比べたら、すっごくお手軽で優しいイメージだったのですよ。
錆の電気分解をやってみる
ややこしい話はこれぐらいにして。実際に「錆の電気分解」をやってみたレポです。まず必要な道具は(↓)コレ!
一番ネックになるのが電源の確保です。今回は「直流安定化電源」を用意しました。これは意外にもリーズナブルで、安いものでは5,000円台から購入できます。バイクのバッテリー代わりに電装系の動作確認にも活用できるので、興味があれば買っておいて損はないです。
他に用意するものは、錆を落とす部品と、犠牲になる金属(犠牲電極)あとは、必要に応じて銅線があれば、電気を流しやすくなります。
電解液は、水にセスキ炭酸ソーダを入れました。重曹でもできるのですが、セスキ炭酸ソーダのほうが圧倒的に溶けやすいです。
錆を落としたい部品に銅線を繋いで電解液に浸けるのですが、ここで電気が通らないと、そもそも電気分解できないので、接続部は導通するように塗装や汚れ、錆を落としておきます(←この時点でもう面倒クサイという)。そして、これがイチバン大切! 電気の接続です。
マイナス(-)側に、錆を落としたい部品。プラス(+)側に、犠牲になる鉄板を接続します。※接続を間違えると逆効果になるのでご注意を!
これで準備オッケー。
ドキドキしながら・・・電源、オン!
通電した瞬間から、わっ!と泡が出てきます。すごい、すごい。予想以上の反応の強さ。なんかもう、メチャクチャ「科学実験してる感」がハンパないです。すっごい楽しい。
そして、20秒もしないうちに犠牲電極が緑っぽくなってきました。反応、早くない?しまった、電圧強すぎたか。でも、すっごい楽しい。
4分もすると、淀んだ沼みたいな緑になって。
15分で、なんかスゴいことになってしまった。そして1時間経過。液体が見事に茶色になって、これは、さぞ錆も落ちたのでは?と期待して上げてみると・・・。コレ(↓)よ。
黒くなっちった?
なんかゴメン!!
でも、犠牲電極はこの有様。さっきまであんなにキレイだったのに、まさに「犠牲」なんかゴメンな気分になる。
錆が電気分解できてカンゲキ
で、失敗かも?と思った部品なのですが、真っ黒になったとこをウエスで拭いてみると
「ほえっ!?」ガサガサしてたはずの錆がどっか行ってしまった(犠牲電極に行ったと思われる)
さらに、ボンスターと真鍮ブラシで軽く擦ってみると・・・。
錆が落ちてる!
ツルツルになってるぅ~~!!
あまりの展開に驚きました。真っ黒になって失敗したと思ってたのに。どうせなら、最初からツルツルになってほしかったのですが、黒い膜に覆われてしまうのもひとつの反応なのでしょうか。
うまくいった成功例
調子に乗って、次は小部品に挑んでみました。
スプリングやワイヤーの部品と、細いボルトなど。さっきの棒よりも錆が酷いので、どうなるかと思ったのですが、
個別ではラチがあかないので、お試しってことで銅線で強引にもひとまとめに。逆にこうでもしないと手間ばかりかかっちゃうよね。それとここで、犠牲電極を立てるカタチにして、できるだけ部品と広範囲に接するようにしてみました。
錆の電気分解はあくまで電気の往来なので、より広い面で、近くに置いた方が効果が高そうという予想です。
予想はあたって、通電と同時に盛大に泡が発生して、
こんなんなりましたっ! 辛そうだ! 味はないだろうに、口の中には激辛タン麺の味が広がって、汗が出そうな気分。
例によって上げた部品は真っ黒になってましたがこちらも同様に、磨くとツルッと輝いてくれました。
てか、この錆の落ちっぷり、すごくない!?
イマイチだった失敗例
お次は、上手くいかなかった失敗例です。
かなり大きなアクスルシャフトやシフトペダルですね。いろいろ試してみたかったので、銅線で吊るして、そのままどぼん!と電解液に浸けてみたのですが一時間通電した結果がコレ(↓)
電解液は例によって真っ赤になったものの、錆の分解はイマイチでした。
考えられる要因としては、部品が長すぎて電極との距離が不均一すぎた、部品がでかすぎて表と裏の差がでてしまう、表面の塗装や油汚れが電気の流れを妨げた。とくに大きかったのが、電極との距離でしょうか。
電気の特性として、より電気が流れやすくて、より近い所に集中してしまいます。当然といえば当然なのですが、電極から遠い所は、いつまでたっても錆が分解できない道理。ケバブの肉を焼く回転台(?)みたいに、電極に囲まれた空間でぐるぐる回せれば、そりゃもう美しい錆分解ができるのでしょうが、そんなんだったらハナからサビ落としのケミカルを使いたくなるというのが人間というもの。
なんかこう、明暗がハッキリでますなぁ。(ここで筆者の行った廃液の処理についてです)
廃液の有害性とリスク
セスキ炭酸ソーダを用いた電気分解後の廃液は、弱アルカリ性を示し、大量の鉄サビ(水酸化鉄の汚泥)や浮遊物が含まれます。そのまま流すと排水管のつまりや環境負荷の原因となるため、直接の放流は厳禁です。
高分子ポリマーによる固化処理
今回は高分子高吸水性ポリマー(塗料用固化剤など)を加えてゼリー状に固めました。水分を飛ばして固形化することで、自治体の分別ルールに沿ったごみ(可燃・不燃など)として安全に処分できるようになります。※処分方法は必ずお住まいの自治体のルールをご確認ください。
正直な感想を言っていい?
感想をハッキリ言わせてもらうと、「SNS情報みたいに簡単にはいかないもん」ですなぁ。・・・しかも。しかもですよ? ひとつの部品をサビ落としするのに、一時間とかザラにかかります。
まとめてやろうにもうまくできないから、けっきょく時間かかっちゃうし、大きな部品ともなると、電極か部品をぐるぐる回さないといけないので、そのぶん余計な時間がかかります。
・・・そう、一番溶けたのは「錆」ではなくて「時間」という!! わっはっは。めっちゃ面白いオチですねぇ。いや、笑えねぇか。と、言うわけで・・・。
今回やってみた「サビの電気分解」は、タイパで言えば最悪だったと思う。即効性がない上に、全体の錆落としができないんだもん。そりゃ、主流にならないわけですわな。
ぶっちゃけ、サビ落としクリームのほうが速攻性あるし。液体なら部品の裏の奥までも錆が落とせる。なんならボンスターで磨けば、アッという間に落とせちゃう。正直、「電気分解じゃなきゃ!」って要素があんましない。
・・・。でも、オモシロイ。とても、興味深い実験だったのですよ。
ひとつの犠牲電極に対して、錆部品をどさっと入れてもほとんど効果がないのであれば、逆にひとつの錆部品に対して、犠牲電極でぐるっと囲めば、かなり面白い結果になるということ。
逆に、内側がサビてしまった部品の真ん中に犠牲電極を入れることができれば、大きなものでもまるっとサビ落としできるってことですもんね。・・・・・あ、それが実現できるのがあったわ。ガソリンタンクですよ!
ガソリンタンクは内部に錆が発生するもので、それが一番の困りもの。それならば、ガソリンタンク内部に適切な形状(そして短絡しない工夫)の犠牲電極を配置することができれば・・・ちょっと面白い錆落としができるかもしれないですね。
よし、決めました。近いうちに、ガソリンタンクの錆落としを電気でやってみます!
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
有言実行のチャンス到来 さあ有言実行! 予告していた実験をするチャンスがやって参りました。以前、バイク部品のサビを電気の力で分解するという実験をやってみましたが、同じ方法でガソリンタンクのサビを落とし[…]
「キャブボディ摩耗」こそFCRが抱える問題 FCRにはセッティング以外にも、長年使用することで発生する特有の問題があります。それがキャブボディ内部の摩耗です。 FCRのスロットルバルブは、操作抵抗を軽[…]
今回はシートの張り替えのお話 古~いバイクのシート。表皮がすっかり劣化して、柔軟性が失われるのを通り越してバリバリのカチカチ。つまんでみると「パキッ」という音とともに割れる始末。 このシート表皮を張り[…]
キースターの燃調キットは純正キャブ用だけじゃない キースターの燃調キットといえば、旧車ユーザーやレストアラーにはおなじみの存在です。原付きからビッグバイクまで500車種以上の純正キャブレターに対応し、[…]
気が付けば18万キロ 車に使っているスパークプラグ「イリジウムプラグ」って、すっごい長寿命じゃないですか。期間が空いてしまうので、ついついチェックするのを忘れていて、車検のたびに思い出してはいたのです[…]
最新の関連記事(オイル/ケミカル)
カーシャンプーやワックスをはじめ、長年カーケア用品の分野で多大に支持を受けてきた老舗ブランド『シュアラスター』。そのシュアラスターが展開するガソリン添加剤『LOOP(ループ)』シリーズのフラッグシップ[…]
Screenshot バイクの洗車が面倒なら水無し洗車をしてみよう 愛車をきれいに保ちたいけれど「洗車やコーティングに時間をかけられない」「自宅が水洗いできる環境にない」という理由で敬遠しているライダ[…]
クロームメッキメンテの決定版 クロームメッキ部品のサビは、メッキ皮膜に存在する目に見えないほどの小さなクラックや穴から浸入した水分が原因で成長する。そして地中深くから吹き出すマグマのように、ニッケルメ[…]
高性能エンジンオイルや添加剤を利用するかしないかで、エンジン内部に雲泥の差が 「ガソリンを入れてエンジンオイル交換さえしていれば、気持ち良く走ってくれるのが4サイクルエンジンだよね」 といったお話しを[…]
高性能オイルの定義とは? エンジンとエンジンオイルには密接な関係性がある。昨今のガソリンエンジンやハイブリッドエンジン用オイルのトレンドは、低粘度一辺倒と言っても過言ではない。オイルの粘度が低ければエ[…]
人気記事ランキング(全体)
ツーリングの「冷え」を克服!ライダーを支えるワークマンの防寒性能 秋が深まり冬の気配が近づくにつれて、バイク走行時の冷風や道の駅での休憩、キャンプツーリング時の冷え込みは増していく。特に首元や手首・足[…]
時速100マイル以上を証明するの署名入り認定書を添付 創業者ジョージ・ブラウが1919年にイングランドで立ち上げたブラウ・スーペリアは、当時としては異例の「高級注文生産」を貫いたブティック・ビルダーで[…]
二輪安全運転診断アプリの実証実験が開始 ホンダは、ライダーの安全運転を診断するスマートフォン向けアプリを開発中であり、ウーバーイーツジャパンと共同で実証実験を開始した。期間は2026年9月1日から28[…]
一度は希少になった「400cc×4気筒」が、いま再びアツい! いま、400ccクラスの4気筒エンジンに再び注目が集まっている。 そもそも400ccと4気筒の組み合わせは、日本のバイク史において決して新[…]
重慶ショーで「CB250SSコンセプト」が世界初公開!2027年春に市販 中国・重慶市で開催された「2026中国摩博会(重慶モーターサイクルショー)」。そこでホンダはニューレトロスタイルのコンセプトモ[…]
最新の投稿記事(全体)
Ninja H2 SX SE 2027年型が価格据え置き カワサキは、最高峰スポーツツアラー「Ninja H2 SX SE」の2027年モデルを2026年10月1日より発売。最高出力200馬力(ラムエ[…]
ズバ抜けた速さとピーキーさにシビレタ ’70年代、国内における250㏄クラスの人気は低迷していた。車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400㏄と共通化されるのが普通で、多くのモデルに35[…]
欧州で2027年モデル登場!新色をまとったCB750ホーネット ホンダが欧州市場に向け、ストリートファイター「CB750 HORNET」の2027年モデルを公開した。CB750ホーネットは、2023年[…]
新型YZF-R1レースベース車が受注開始 ヤマハ発動機販売は、水冷直列4気筒997ccエンジンを搭載するサーキット走行専用モデル「YZF-R1 レースベース車」の2027年モデルを発表した。2026年[…]
時速100マイル以上を証明するの署名入り認定書を添付 創業者ジョージ・ブラウが1919年にイングランドで立ち上げたブラウ・スーペリアは、当時としては異例の「高級注文生産」を貫いたブティック・ビルダーで[…]
- 1
- 2


































































