「街なかで乗るのはひたすら苦行…」しかし峠では性格が豹変! 42年前のホンダの名車。滑からな形状のカウルが印象的だった[NS250R]

「街なかで乗るのはひたすら苦行…」しかし峠では性格が豹変! 42年前のホンダの名車。滑からな形状のカウルが印象的だった[NS250R]

1980年代前半、急速に過激さを増していた250cc・2ストロークスポーツの世界に、Hondaが送り込んだ本気の一台がNS250Rである。レーサー譲りの技術を惜しみなく投入し、峠では鋭い走りを披露。一方、街なかでは手を焼くほどピーキーな性格も持ち合わせていた。
※2025年6月刊行の『ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選』より抜粋。加筆修正して掲載しています


●まとめ:ヤングマシン編集部

レーサーの設計思想を公道へ! Hondaが本気で作った2スト250

1983年、Hondaは同社初となる2ストローク250ccスポーツモデル「MVX250F」を発売した。90度V型3気筒という独創的なエンジンを採用した意欲作だったが、ライバルがしのぎを削る市場で期待されたほどの成功には結びつかなかった。そして、その翌年となる1984年、Hondaが新たな回答として送り出したのがNS250Rである。MVX250Fとは設計思想を大きく改め、市販レーサーとのつながりを一段と強く打ち出したモデルだった。

1986年1月には、フレディ・スペンサーが1985年WGPの500cc/250cc両クラスを制したことを記念する特別仕様車が登場。ホワイトを主体としたロスマンズカラーをまとい、4000台限定で販売された。価格は54万9000円。

心臓部には新設計の249cc水冷2ストローク90度V型2気筒を搭載。最高出力は当時の国内250ccクラスで上限とされた45PS/9500rpm、最大トルクは3.6kg-m/8500rpmを発生した。さらにNS250Rには、Hondaの市販モデルとして初となるオールアルミ製ダブルクレードルフレームを採用。滑らかな曲面で構成されたフルカウルとともに、当時の市販車としては非常にレーシーな姿を作り上げていた。l

独立した3連メーターを並べた、いかにもレーサーレプリカらしいコクピット。MVX250Fからイメージを一新し、セパレートハンドルも採用。メーターマウントには肉抜き加工が施され、機能を優先した雰囲気を強く漂わせる。

新設計の249cc水冷2ストローク90度Vツイン。アルミ一体成型のNSシリンダーを採用し、クランクケースは市販レーサーRS250Rと共用。トランスミッションはギヤレシオを変更して公道用に仕立てられている。ATACは片側のシリンダーに装備された。

「NS」の名が示す通り、その中身も単なるレーサー風ではない。HRCの市販レーサーRS250Rの基本設計を踏襲し、ボア×ストロークやシリンダーレイアウト、吸排気系の取り回しを共通化。クランクケースやクランクシャフトも共用し、トランスミッションはギヤレシオを公道向けに変更している。フレームも骨格をRS250Rと共通とし、フロントサスペンションやブレーキなど、多くの部分にレーサーの設計思想が盛り込まれていた。

シリンダーにも当時の最新技術が投入された。NS500で培ったノウハウを生かした「NSシリンダー」は、アルミ製シリンダー内壁にニッケルを母材としてシリコン・カーバイド粒子を分散させた皮膜を形成するもの。鋳鉄スリーブを不要とすることで軽量化と放熱性を高めるとともに、耐焼き付き性や耐摩耗性にも配慮されていた。

もうひとつ、NS500由来の技術として注目されたのが排気デバイス「ATAC」である。エンジン回転数を電気的に検知し、サブチャンバーへつながるバルブを制御することで排気系の実質的な容積を変化させる機構だ。高回転域のパワーを確保しながら、2ストロークが苦手とする低・中回転域のトルクを補うことを狙っていた。

サイレンサーは2本出しで右側がアップ、左側がダウンタイプとなる。

GPマシン譲りのNSコムスターホイール。前方からの風を整流するFフォークスポイラーに、ノーズダイブを抑えるTRACも採用する。

ただし、それでNS250Rが従順なバイクになったわけではない。当時、日本でNS250Rを試乗した米国誌『Cycle World』は、4000rpmまでは穏やかなものの、4000〜6000rpmではエンジンの反応がぎくしゃくし、8000rpm付近から一気に力強くなる特性を報告している。その一方で、ワインディングでは深いブレーキングから素早く旋回し、コーナーを強烈に立ち上がれると高く評価した。まさに街なかでは扱いにくくても、峠に持ち込むと本領を発揮するというレーサーレプリカらしい性格だったのである。

なお、同時に兄弟モデルのNS250Fも発売された。エンジンの基本仕様は共通だが、フルカウルとアルミフレームを備えるRに対し、Fはスチール製ダブルクレードルフレームとネイキッドスタイルを採用。価格もNS250Rの53万9000円に対して42万9000円と、11万円安く設定されていた。

1985年、フレディ・スペンサーはロードレース世界選手権の500ccクラスと250ccクラスを同一シーズンに制覇。その歴史的なダブルタイトルを象徴するカラーリングが、HRCのメインスポンサーだったロスマンズのブルー、ホワイト、レッド、ゴールドである。

NS250Rの歴代モデル

ホンダの250cc2ストロークのNS250Rの歴代モデルを紹介していこう。

1984 HONDA NS250R/シャスタホワイト

1984年5月25日に発売されたNS250Rの基本モデル。ホワイトのフルカウルにレッドのシートやラインを組み合わせたレーシングイメージの強いカラーリングで、前年のMVX250Fとは明らかに異なる方向性を打ち出した。249cc水冷2ストローク90度Vツインは45PSを発揮し、Honda市販車初のアルミフレーム、NSコムスターホイール、前後ディスクブレーキなどを採用。価格は53万9000円で、レーサー直系を強く意識させる存在だった。

【1984 HONDA NSR250R】

1984 HONDA NS250R/スターライトシルバーメタリック

ホワイトとともに設定されたもうひとつの標準カラーが、スターライトシルバーメタリックである。当時のレーサーレプリカとしては珍しい落ち着いた銀色を主体とし、ホワイト仕様とは異なってストライプやフロントフォークカバーなどにブラックを使用。赤いシートは共通ながら、同じNS250Rでもかなり異なる印象に仕上げられていた。エンジンやアルミフレーム、足まわりなどの基本スペックはホワイト仕様と共通で、性能差はない。

【1984 HONDA NSR250R】

1986 HONDA NS250R/’85チャンピオン・カラー仕様

フレディ・スペンサーが1985年WGPの500cc/250cc両クラスを制覇したことを記念し、1986年1月22日に発売された特別仕様車。HRCをサポートしていたロスマンズ・インターナショナルのカラーリングを採用し、ホワイトを主体にブルー、レッド、ゴールドを組み合わせた華やかな外観となった。販売台数は4000台限定で、価格は54万9000円。エンジンや車体の主要諸元は標準仕様から変更されておらず、NS250Rの最終期を飾る特別な一台となった。

【1986 HONDA NSR250R】

1984 HONDA NS250F/兄弟モデル

NS250Rと同日の1984年5月25日に発売された兄弟車。フルカウルを備えたRとは対照的に、丸型ヘッドライトを露出させたネイキッドスタイルを採用し、フレームもアルミ製ではなく角型断面スチールパイプ製のダブルクレードルとされた。ただし、249cc水冷2ストローク90度VツインはRと同じ45PS/9500rpmを発揮し、ATACやTRAC、プロリンク式リアサスペンションなど先進装備も投入されている。価格は42万9000円で、Rより11万円安い設定だった。

【1984 HONDA NS250F】兄弟モデル

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