FCRユーザー必見! キースターの燃調キット&逆転蘇生キットでスペシャルキャブレターを再生【第1回】

ケーヒンFCRキャブレターは、鋭いレスポンスと高い吸気性能によって長年支持されてきた人気のスペシャルキャブレターです。しかしその性能を発揮するためには適切なセッティングと定期的なメンテナンスが欠かせません。また長年使用されたFCRには、オーバーホールだけでは解決できない経年劣化もあります。そこで注目したいのが、キースターのFCR用燃調キット&逆転蘇生キットです。今回は純正キャブレター用燃調キットとの違いを交えながら、FCRユーザーに向けて開発された両製品の特徴を紹介します。
●文&写真:栗田晃 ●BRAND POST提供:キースター
キースターの燃調キットは純正キャブ用だけじゃない
キースターの燃調キットといえば、旧車ユーザーやレストアラーにはおなじみの存在です。原付きからビッグバイクまで500車種以上の純正キャブレターに対応し、キャブセッティングに必要なジェットやジェットニードルに加えてオーバーホールに必要なガスケットやOリングなどをセット化した製品として高い支持を得ています。
車種によっては純正部品の供給が終了していることもある旧車や絶版車にとって、必要な補修部品をまとめて入手できるキースターの燃調キットは、多くのライダーにとって頼れる存在となっています。
その一方で、キースターは純正キャブだけでなく、ケーヒンFCRやCRスペシャル、またミクニTMRといったスペシャルキャブレター用の燃調キットも展開しています。
ここで取り上げるケーヒンFCRキャブは、純正キャブとは成り立ちそのものが異なります。そのため必要となる補修部品やセッティングパーツ、そしてユーザーが求める機能も大きく変わってきます。キースターのFCR用燃調キットは、そうしたFCRユーザー特有のニーズに応えるために開発された専用アイテムなのです。
新旧問わず純正キャブレターのセッティングとオーバーホールを可能にするキースター製燃調キット。ラインナップは500機種以上と膨大で、旧車や絶版車ユーザーやショップから信頼を集めている。画像はホンダCB250RS用燃調キット。
純正キャブレター用の燃調キットには。混合気を調整するパイロットジェットやメインジェット、ジェットニードルといったセッティングパーツに加えてフロートチャンバーガスケットやパイロットスクリューまで揃っており、オーバーホールや整備に重宝するのが燃調キットの大きな魅力。
FCRキャブレターが今なお支持され続けている理由
現在ではインジェクション車が主流となりましたが、それでもキャブレター車向けのスペシャルアイテムとしてFCRは多くのライダーから支持され続けています。その理由は圧倒的なレスポンス性能にあります。
一般的な負圧キャブレターは、ライダーがスロットルで操作するのはバタフライバルブです。そして実際に吸入空気量を増減するバキュームピストンはキャブのベンチュリーに発生する吸入負圧や混合気流入量に合わせて作動します。
これに対してFCRは、ライダースロットル操作によってスロットルバルブを直接開閉するピストンバルブ式であり、タイムラグがなくダイレクトに連動します。そのためスロットルを開けた瞬間にエンジンが反応します。またボディ内部に組み込まれたジェットブロック(中子)によって、スロットル全開時はベンチュリー内に障害物のないスムースボアを実現することで、高回転域での高い吸入効率とパワーの伸びを実現している点も魅力です。
さらにベンチュリー径の選択肢が豊富で、排気量やチューニング内容に応じて最適な仕様を選択できることも大きなメリットです。ライトチューンから本格的なエンジンチューニングまで幅広く対応できるため、長年にわたり多くのカスタムユーザーから支持されてきました。
しかし、FCRは、取り付けるだけで性能が引き出せるパーツではありません。
装着するエンジンや吸排気仕様に合わせて適切なセッティングを行ってこそ、本来の性能を発揮します。言い換えれば、セッティングそのものを楽しむこともFCRの魅力のひとつなのです。
ヤマハTRX850に装着されたダウンドラフトタイプのFCR41キャブレター。スロットルワイヤーがスロットルバルブに直結されたピストンバルブ式ゆえのダイレクトさと鋭いレスポンス、全開時のパワー感が特長で今なお多くのユーザーに愛用されている。
セッティングの考え方が根本的に違う純正キャブとFCR
純正キャブレターは、バイクメーカーがエンジンや吸排気系との組み合わせを徹底的に検証し、その機種にとって最適な状態で出荷したものです。
エアクリーナーボックス、マフラー、カムプロフィール、点火時期など、すべてが純正状態であることを前提としてジェットやニードルの仕様が決められています。そのためノーマル仕様であればセッティング変更は必要ありません。
それでも経年変化やカスタムによって吸排気系パーツなどを変更した際に対応できるよう、キースターの燃調キットには純正を中心としてサイズが異なるパイロットジェットやメインジェット、ジェットニードルがセットされており、これが最大の特長です。
一方のFCRはチューニングパーツです。
同一車種であっても、排気量、圧縮比、カムシャフト、エアクリーナーボックスの有無やチューニング内容、マフラーの種類によって最適なセッティングは変化します。
キャブレターを販売するコンストラクターは、インシュレーターへの適合やキャブピッチなどは設定していますが、最終的なジェット類の選択はユーザー自身が行うことを前提としています。つまり純正キャブレターが「完成品」であるのに対し、FCRはユーザーが育て上げるパーツなのです。
だからこそキースターのFCR用燃調キットには、セッティング変更に必要な複数サイズのジェットやニードルがセットされており、ユーザーが理想の燃調を追求できるようになっています。
エアークリーナーボックスからマフラーまで、ノーマルパーツでセッティングされた純正キャブレターに対して、スペシャルキャブを装着するバイクは吸排気やエンジン仕様がまちまちで、コンストラクターからTRX850用として購入したFCRのセッティングがそのまま通用するとは限らない。セッティングを変更する際はシャシーダイナモで空燃比を測定して混合気の濃い薄いを判断する方法以外に、プラグの焼け具合で判断する昔ながらの方法もある。いずれにしても、現状の混合気が濃いのか薄いのかを確認してからジェットやニードルを変更する。
キャブセッティングというとメインジェットのサイズに注目しがちだが、排気量が大きくなるほど常用域のスロットル開度は小さくなるため、街乗り中心であればパイロットジェットやパイロットスクリューのセッティングが重要だ。
メインジェットが吸い上げるガソリンが影響し始めるのはスロットル開度1/2以上になってからで、それ以下ではほぼ機能していない。シャシーダイナモではなく実走の場合、サーキットのようにスロットル全開をキープできる場所以外では正確なセッティングは難しいというのが実情だ。
FCRはオーバーホールとセッティングをセットで考えたい
FCRを使用していると、エンジン不調や吹け上がりの違和感を感じた際に、まずセッティング変更を考える人も少なくありません。しかし、長年使用したFCRでは、キャブレター本体を正常な状態へ戻すことが重要です。
Oリングの硬化、ガスケットの劣化、加速ポンプ系統の不具合、ジェット類の詰まりなどが残った状態では、本来のセッティングを正しく判断することができません。
まずはオーバーホールによって基準となる状態を取り戻し、そのうえでジェットやニードルを変更してセッティングを行う。この順序が重要です。
キースターのFCR用燃調キットは、オーバーホールに必要な補修部品とセッティング用パーツを同時に入手できるため、この作業を効率良く進めることができます。
FCR燃調キット
41φダウンドラフトキャブレター用キャブレター オーバーホール&セッティングパーツセット (TRX850) FCR-L41D4●販売価格1万6500円
純正キャブレター用の燃調キットはキャブレター1個ずつで販売しており、2気筒車は2セット、4気筒車は4セット必要となる。だがFCR用燃調キットは1セット1台分の販売となり、TRX850用は1セットで2キャブ用のキットが入っている。
セッティング要素として3サイズのパイロットジェットと6サイズのメインジェット、4サイズのジェットニードルが付属する。
アイドル開度付近で重要な役割を果たすパイロットスクリュー(右)は、緩みを防ぐスプリングと二次空気の吸い込みを防ぐワッシャーとOリングも付属。左はスロージェットに送る空気量を増減するエアースクリューで、アイドル開度から1/4付近の混合気量を調整する。
フロートチャンバーガスケットや燃料ジョイント部分のOリングなど、ゴムの経年劣化によるガソリン漏れの原因となりがちな部品もセットされている。さらにフロート油面を決めるニードルバルブとバルブシートも新品に交換しておけば、オーバーフローの不安も解消できる。
ロットルドラムと連動して作動する加速ポンプのダイヤフラムは、長年にわたりガソリンと接することでゴムが劣化して作動不良を起こすことがある。ポンプボディの小径Oリングやスプリングとともに交換すれば力強い加速が回復するはずだ。
ボディ内部に組み込まれた二種類の特殊形状ガスケットは、FCRキャブのアキレス腱のひとつ。このガスケットは非分解設定部分にあり、メーカーも補修用部品を用意していない。キャブ洗浄時に強力な溶剤などを使用してゴムが劣化すると本来の性能を発揮できなくなるが、このガスケットがあればボディ内部のガソリンとエアー通路をリフレッシュできる。
今回はここまでです。次回はFCRの抱える問題点と解決策を紹介いたします。その後、購入した中古車に装着されていたFCRを実際に燃調キットを使用しつつオーバーホールします。
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