「あのロールス・ロイスをもうならせた…」100年前のスーパーバイク。妥協なき美しさと比類なきパフォーマンスを実現した[ブラウ・スーペリア SS100 アルパイン・グランドスポーツ]を紹介

「あのロールス・ロイスをもうならせた…」100年前のスーパーバイク。妥協なき美しさと比類なきパフォーマンスを実現した[ブラウ・スーペリア SS100 アルパイン・グランドスポーツ]を紹介

今でこそ「スーパーバイク」という言葉は一般的ですが、100年前にその概念を世界で初めて具現化したのが、このブラウ・スーペリアでした。1926年式ブラウ・スーペリア(Brough Superior)SS100 アルパイン・グランドスポーツ(AGS)は、当時から家一軒が建てられるほど高額なモデルでした。が、その価値は現代でも変わらぬハイエンド。そんなブランドが貫いた圧倒的なハイパフォーマンスへのこだわりと、現代へと脈々と受け継がれる最高級路線について、紐解いていきましょう。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys

時速100マイル以上を証明するの署名入り認定書を添付

創業者ジョージ・ブラウが1919年にイングランドで立ち上げたブラウ・スーペリアは、当時としては異例の「高級注文生産」を貫いたブティック・ビルダーでした。大量生産の対極に位置し、熟練の職人が手作業で1台ずつ組み上げるそのクオリティは圧倒的。なかでもフラッグシップである「SS100」の名称は、「時速100マイル(約161km/h)を出せること」を意味しており、100年前の未舗装路が多かった時代、160km/hオーバーはまさに驚異的なスピードでした。

100年前の1926年モデルとなるブラウ・スーペリアSS100 アルパイン・グランドスポーツ。落札価格はなんと5800万円!

ジョージ・ブラウ本人がすべての車両に自ら試乗テストを行い、「本当に100マイル以上が出ることを証明する署名入りの認定書」を一台一台に添付していたという事実。性能に対する絶対的な自信と、顧客への誠実さが生んだ、伝説的なエピソードと言えるでしょう。

その妥協なき美しさと最高峰のエンジニアリングは、あのロールス・ロイスをも唸らせました。同社から正式に「二輪界のロールス・ロイス」と名乗る公認を得たという逸話は、彼らのモノづくりが四輪の至宝と同等、あるいはそれ以上の領域に達していたことの証明にほかなりません。

クラシックという言葉では表現しきれないスタイル。すべての造形、仕上げが最上級であり、二輪界のロールス・ロイスというのも納得です。

家が一軒買えるほど高額だった「アルパイン・グランドスポーツ(AGS)」

ご紹介している「アルパイン・グランドスポーツ(AGS)」は、1926年シーズンに向けて発表された、SS100のなかでもさらに特別なエリートモデル。誕生のきっかけは、1925年にヨーロッパの山岳レース「オーストリア・アルパイン・トライアル」にありました。

ジョージ・ブラウ自らがSS100を駆り、あっさりと優勝を収めるとこのタフな仕様(長距離ツアー用のギヤボックスなど)を、そのまま市販車へとフィードバック。それゆえ、コレクターの間でもAGSは特別扱いされているのです。

右側にあるハンドシフトで、スターメー・アーチャー製3速クロスミッションを操作。運転するのはコツだけでなく、蛮勇も求められそう。

エンジンは、J.A.プレストウィッチ社製の最高峰「JAP 980cc 空冷OHV 50度Vツインエンジン」を搭載し、最高出力は45馬力を発揮。約200kgの鉄の塊を、いわゆるスプリンガーフォーク(リアはサスペンションなしのリジッド)で支え、160km/h以上で突っ走る乗り味は、現代の200馬力級スーパースポーツをも凌ぐ、猛烈なスリルと快感に満ちていたに違いありません。

エンジンはイギリスの超名門JAP製で、980cc 空冷OHV 50度Vツインから45馬力を発揮。最高速160km/hオーバーとは驚きです。

じつに美しいキャブレターはAMALかと思いきや、それよりずっと古いBinks製の2ジェット・ツインフロートを採用。

当然、価格も天文学的でした。当時の販売価格は約170ポンド。これは一般労働者の数年分の年収に匹敵し、地方であれば「家が一軒買える」ほどの超高価格でした。まさに、一握りの富豪や貴族だけが許された、至高のステータスシンボルだったのです。

車体に対して極めて小さいドラムブレーキですが、当時はリヤブレーキをメインに使うのが主流。とはいえ、止まることは優先されていない様子です。

ラッパ式の警笛が時代を感じさせます。マニアにとっては、これもまたブラウ・スーペリアの醍醐味かもしれません。

ブランドは2008年に復活。今も一級の作品を製造し続ける

ブラウ・スーペリアの「ハイパフォーマンスへのこだわり」と「超高級路線」は、過去の遺産として消え去ったわけではありません。ブランドは2008年に復活を遂げ、現在はフランスのBoxer Design社とともに「新生ブラウ・スーペリア」として、今なお超一級の高級ラグジュアリーバイクを製造し続けているのです。

現代のラインナップに並ぶ「SS100」もまた、チタン、カーボン、アルミ削り出しパーツを贅沢に奢った独自のVツインマシンで、数百万円から1000万円を超えるハイエンドモデルとして世界のセレブリティを魅了し続けています。また、アストンマーチンとコラボレーションしたモデルも話題をかっさらいました。

1926年式のオリジナル「SS100 AGS」に目を向ければ、その稀少性から現代の世界的なオークションでは約30万ドル〜60万ドル(日本円で約4500万〜9000万円以上)という破格のプライスで取引されることも珍しくありません。

クラシカルな見た目のわりに、直管のマフラーから発する爆音は現代では味わい難いほどのボリュームだそう。

100年前の「時速100マイルへの執念」が生んだ美しきモンスター。その妥協なきクラフトマンシップと絶対的な高性能へのリスペクトは、今もなお、現代のモーターサイクルシーンの頂点に厳然と輝き続けているのです。

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