
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。この記事ではホンダCB1100Rの主要部品や技術について解説する。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
通常の量産車とは異なる限定車ならではの手法
近年の日本製スーパースポーツの上級仕様は、基本設計をスタンダードモデルと共有しながら、足まわりや電装系などに豪華な装備と機構を採用するのが通例になっている。
一方のCB1100Rの場合、開発ベースのCB900Fとは、エンジンもフレームも別物。もっとも、後に登場するVFR750FとVFR750R(RC30)のように、何から何まで別物ではなかったのだが、このモデルでは、よくぞここまで…と言いたくなるほど、徹底的なメーカーチューニングが行われていたのだ。
中でも驚くべきは、理想の車体剛性を獲得するため、フレームの右側ダウンチューブを脱着式→一体式に変更したこと(オイルパンを外さないとエンジンが降ろせなくなった)、シリンダーの冷却通路が塞がるのを承知で、CB900Fより5.5mmも大きいピストンを採用したことだろう(大容量オイルポンプ/クーラーで対処)。
それに加えて、当時のロードバイクの必需品だったセンタースタンドを装備せず、代替品として専用設計のレーシングスタンドを準備したこと、オイルキャッチタンクの追加で置き場所を失った車載工具を、オフ車のようにシート左下(※RC/RDのみ)に設置したことも、当時の大排気量としては異例だった。
もちろんこういった構成は、通常のホンダ車ならNGだ。 限定車にして市販レーサーだったCB1100Rは、’80年代初頭のホンダの決まり事をいろいろな意味で破った、治外法権と言うべきモデルだったのである。
ENGINE:徹底的なメーカーチューン
エンジンの基本構成はCB900/750Fと共通だが、カムシャフト、吸排気バルブ、バルブスプリング/リフター、ピストン(当時としては珍しいセミ鍛造)、コンロッド、クランク、クランクメタル、プライマリーシャフト、カム/プライマリーチェーン、テンショナーなど、内部パーツはほとんどすべてが専用設計。 10.1:1という圧縮比は、当時の大排気量車では異例の高さだった。
CB900Fの95psに対して、CB1100Rの最高出力は、RB:115ps、RC/RD:120ps。同時代のライバル勢は、XS1100:95ps、GSX1100Sカタナ:111ps、Z1100GP:108ps。
2系統のメインジェットを備える負圧式キャブレターは、ホンダ専用のケーヒンVB。口径は、750F:30mm、900F:32mm、1100R/F:33mm。
ヘッドカバー上部に備わる銀色のプラグは、機械式タコメーターの名残り。CB900/750Fではこの部分にギヤ+ケーブルが備わっていた。
ブラックアウトされたマフラーは、仕向け地に応じて穴径を変更。軽量化を念頭に置いて、ステッププレートには大胆な肉抜きが施されている。
発熱量の増大に伴い、オイルクーラーは大容量化。なお900/1100Fはオイルクーラーが標準装備だったのに対して、750Fは一部の特別仕様のみ。
FRAME & CHASSIS:レースのノウハウで大改革
世間では耐久/TT-F1レーサーRCB・RS1000のレプリカと呼ばれているCB1100R。もちろんその説は間違いではないのだが、実際にCB1100Rの車体を設計するにあたって、開発陣が直接的な参考にしたのは、’79年の鈴鹿8耐に参戦した社内チーム・ブルーヘルメットMSCのCB900F改だった。
CB900Fと比較すると、約1インチ後方に移動すると同時に全長を伸ばしたステアリングヘッドパイプや、ボルト留めから一体構造となった右側ダウンチューブなどは、ブルーヘルメットMSCの手法を転用していたのだ。
【既存の構成を継承しながら、要所を改善】細部に違いはあるものの、フレームの基本構成はCB900/750Fと共通。なお’81年以降のCB900/1100Fが、エンジン前部マウントにラバーを使用いたのに対して、1100Rは一貫してリジッドマウントだった。
前後18インチのホイール(RBの前輪は19インチ)はゴールドコムスター。 なおRC/RDのフロントディスクはベンチレーテッドタイプで、角型スイングアームはRDのみが採用。
RBでは下、RC/RDでは上にリザーバータンクを配置するリヤショック。 黒いケースは車載工具用。
ゴールドのクランクケース左右カバーは、Rならではの専用設計品。CB-F用と比較すると、バンク角向上を意識した形状になっている。
当時の大排気量車の軸間距離は1510〜1540mmが定番。CB1100Rの1490mmは、かなり短かったのである。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
名車の姿を変えた国内事情。“耕運機ハンドル”誕生の背景 1980年のケルンモーターサイクルショーで公開され、翌1981年に発売されたスズキ「GSX1100S KATANA」。日本刀をイメージしたシャー[…]
勝利のために常識を超えた装備を投入した特別なCB 1980年代初頭、世界のスポーツバイク市場で存在感を高めていたホンダが、持てる技術を惜しみなく注ぎ込んで生み出したのが「CB1100R」だ。その開発思[…]
ベスパとは異なるアプローチを見せた「もう一つの至宝」 現在のクラシックスクーター市場ではベスパが有名ですが、かつてその絶対王者に真っ向から勝負を挑み、世界中のファンを熱狂させたブランドがありました。そ[…]
ナンバー付きからレース専用車まで本格的スポーツ走行と模擬レースが体験できる 各地のサーキットには、ライダーの技量に応じてファミリー走行枠やスポーツ走行枠といったクラスが設けられていることが多い。また主[…]
軽量化への徹底したこだわりが生んだ、革新的なスーパースポーツ 1980年代、国内のバイク市場ではレーサーさながらの外観と高性能を備えた、レーサーレプリカの人気が急速に高まっていた。その流れを牽引する存[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
4気筒CBR500R FOURにレーシングコンセプト ホンダは中国の重慶モーターサイクルショーにて、カスタムコンセプト「CBR500R FOUR レーシングカラー」を世界初公開した。ベース車両は「CB[…]
シャープさを増したフロントフェイスと新マフラーカバーでスタイル刷新 2014年の登場以来、欧州市場で累計15万2000台以上を送り出してきたSHモード125は、扱いやすい車体サイズと優れた経済性で根強[…]
大盛り上がりだったサーキット試乗会 9月19日に鈴鹿サーキットで開催されたHondaGO BIKE MEETING 2026。 数あるコンテンツの中でも、ひときわ注目を集めていたのがサーキット試乗会で[…]
1084ccツインのトルク感強化と極低速制御を極めたDCTの熟成 欧州で発表された2027年モデルの「CMX1100 Rebel」シリーズ。国内版であるレブル1100同様にアフリカツイン譲りの1084[…]
勝利のために常識を超えた装備を投入した特別なCB 1980年代初頭、世界のスポーツバイク市場で存在感を高めていたホンダが、持てる技術を惜しみなく注ぎ込んで生み出したのが「CB1100R」だ。その開発思[…]
人気記事ランキング(全体)
【第1位】普通免許で乗れて車検不要! 全天候型電動トライク専門店が名古屋にオープン 普通免許で乗れて車検や車庫証明も不要な全天候型電動トライクの専門店「ビークルファン名古屋BASE」が開設された。ドア[…]
ボタンひとつで車体が自立!力作業を完全に不要にする電動油圧の技術 重い大型バイクやスクーターを停車・駐車する際、車体を支えながらスタンドを立てる作業は、時にライダーにとって大きな身体的負担や精神的スト[…]
名車の姿を変えた国内事情。“耕運機ハンドル”誕生の背景 1980年のケルンモーターサイクルショーで公開され、翌1981年に発売されたスズキ「GSX1100S KATANA」。日本刀をイメージしたシャー[…]
85%共通プラットフォームがもたらす多彩な展開力 ドイツ・ベルリンで産声を上げ、デザインと開発の拠点をイタリア・ミラノに置く新鋭電動モビリティブランド「GR1T(グリット)」。世界最大級のバイク見本市[…]
T40より手頃な価格設定を実現したボンネビルファミリーの新たな入門機 トライアンフがインド市場向けに投入した「ボンネビル T4」は、世界的な成功を収める400ccプラットフォームの技術基盤を活用しつつ[…]
最新の投稿記事(全体)
4気筒CBR500R FOURにレーシングコンセプト ホンダは中国の重慶モーターサイクルショーにて、カスタムコンセプト「CBR500R FOUR レーシングカラー」を世界初公開した。ベース車両は「CB[…]
専用設計だからこそのジャストフィットと安心感 汎用の保護シートをハサミで切って貼る手間とは無縁。MK50の画面形状に合わせて寸分の狂いもなくカットされた車種・モデル専用設計となっており、ディスプレイの[…]
2650名の熱気!モデルの垣根を越えて共有するバイクライフの歓び バイクを走らせる醍醐味は、単に目的地へ移動することだけではない。同じ志を持つ仲間と出会い、バイクへの情熱やツーリングの思い出を語り合う[…]
「普段は箱、仕事や買い出し時はデカバッグ」がカギひとつで成立する! 仕組みは至ってシンプルにして極めて実用的。 普段愛用しているモノロックケース用ベースプレート「MP60N」の上に、ボックス[…]
母国グランプリとなったもてぎでは多くのファンから熱い声援を受け、ウィークを通じて圧倒的な存在感とスター性を発揮した小椋選手。アライが企画した抽選販売は即座に完売するなど、ファンにとって彼の身につけるア[…]
- 1
- 2
















































